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海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支について、日本はこれまで黒字を続けていた。しかし最近になって急速に悪化し、黒字額は縮小している。これは、日本経済に新たな構造変化が起きた結果ではないかと見られている。ではその変化とはいったい何なのか。また赤字になることは絶対に阻止されるべきものなのか。国際収支・経常収支の仕組みと日本経済の現状について詳しく解説していく。
日本経済が不調である“構造的な原因”とは
世界各国は、国内で経済活動を行うとともに、他国との間で国際的な経済取引を行っている。輸出・輸入や金融取引などだ。日本の場合も、国際的な経済活動は重要な意味を持っている。
国際的な経済活動のパターンは、その国に存在する天然資源の状況や経済発展の段階などによって異なる形を取る。日本の国際的な経済活動の特徴は次の通りだ。
貿易は、原油や液化天然ガスなどの天然資源を輸入し、工業製品を輸出する形になっている。
「日本は天然資源に恵まれていないので、工業製品を輸出する貿易立国を目指す必要がある」とは、高度成長期の頃からの基本的なメッセージだった。日本は、その方向に従って経済発展を進めてきた。
しかしその後、世界経済には大きな変化が生じた。そして、貿易立国をめぐってはさまざまな条件の変化が生じている。そうした変化に応じて国内の産業構造を変えていくことが必要だ。
日本の場合、1980年代頃からの世界経済の変化に対応して、経済構造を適切に調整できていない面がある。現在の日本経済不調の原因も、ここに見いだすことができる。
輸出大国だった電気製品でさえ輸入が激増
日本の輸入品の中で最大の比率を占めるのは、原油やLNG(液化天然ガス)などの鉱物性燃料だ。そして鉄鉱石などの原材料だ。日本貿易振興機構(JETRO)の
ドル建て貿易概況より、2021年における総輸入額中のシェアを見ると、鉱物性燃料が20.0%だ(うち原油および粗油が8.2%、液化天然ガスが5.0%)。
それに対して、輸出の内訳は一般機械が19.7%、輸送用機器が19.5%(うち乗用車が11.3%)、電気機器が18.4%となっている。
ただし、工業製品についても輸入が増えていることに注意が必要だ。電気機器については特にそうだ。
2021年の計数を見ると、電気機器の輸出が1,397億ドル(約18兆9,051億円)、輸入が1,246億ドル(約16兆8,616億円)で、大差がない。日本はもはや、電気機器の輸出大国とはいえない。
これは基本的には、中国をはじめとする新興国が工業化に成功し、世界市場でのシェアを高めてきたからだ。日本の輸出はそれに浸食されて、世界シェアを低下させていったのである。
日本の「国際収支」「経常収支」の仕組み
日本は、巨額の対外資産を保有している。外国政府の国債のような金融資産もあるし、海外に建設した工場のような実物資産もある。これらから利子収入や配当金が生じる。また、海外から借り入れをしている場合には、利子の支払いが必要になる。
この収支が、「第1次所得収支」と呼ばれる。このほかに、「第2次所得収支」(官民の無償資金協力、寄付、贈与の受け払いなど)がある。
国際収支の全体像は、次のようになっている(2021年の計数)。
まず、第1次・第2次所得収支とは別に貿易収支がある。輸出(x)が82.3兆円、輸入(m)が80.6兆円。その差(x-m)である貿易収支(t)は、1.7兆円の黒字だ。
このほかに、サービスの取引がある。これは、国際的な貨物や旅客運賃などだ。日本のサービス収支(s)は、恒常的に赤字になっている。2021年では4.2兆円の赤字だ。
以上を合わせた「貿易・サービス収支」(t+s)は、2.6兆円の赤字だ。
所得収支(f)は、2021年では、第1次所得収支が20.5兆円という巨額の黒字、第2次所得収支が2.4兆円の赤字だ。
貿易・サービス収支と所得収支の和(t+s+f)である経常収支(c)は、15.5兆円の黒字になっている。
以上は実物的な取引だが、この裏側に金融収支(F)がある。経常収支が黒字であれば海外への投資がなされて対外資産が増え、赤字であれば借り入れがなされて対外負債が増えたり、対外資産が取り崩されたりする。
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