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- 2022/07/18 掲載
金利上昇が「経済を破壊する」は本当? 日銀の金融政策が“ナンセンス”と言えるワケ
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
長期金利上昇で「不況になる」は本当か?
日本の長期金利に、強い上昇圧力が加わっている。世界のヘッジファンドは「日銀の金利抑制策は維持不可能」と読んで、国債先物の売り攻撃を仕掛けている。これに対して、日銀は必死に防戦しており、その結果、日銀の国債購入額が異常なレベルにまで膨張している。日銀が長期金利上昇を認めないのは「仮に認めると、経済に悪影響が及ぶからだ」との見方がある。以下では、こうした見方が正しいかどうかを検討しよう。
「日銀が金利を上げると不況になる」という見方がある。これが妥当なものか否かを判断する重要な手がかりが、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(財政収支試算)にある。
2022年1月版の財政収支試算では、2031年度までの見通しを示している。財政だけでなく、経済全体についての指標(GDP、物価上昇率、金利など)を示している。
ここで示されている将来像が実現するかどうかは別問題として、整合のとれた経済諸変数を示していることは間違いないので、上記の問題を考えるための重要な参考になる。
しかも、この推計は政府のさまざまな長期推計の基礎になっている。たとえば、公的年金の財政検証や、「2040年を見据えた社会保障の長期見通し」などだ。これらでは、財政収支試算の2つの見通し(「成長実現ケース」と「ベースラインケース」)を基として、それを将来に延長するという手法が用いられている。
このように、長期見通しの出発点になっているという意味でも、重要なものだ。
金利と経済の関係で超重要な「2つのポイント」
財政収支試算の2つの見通しに共通するのは、消費者物価上昇率が2020年度(-0.2%)、2021年度(-0.1%)の値よりは上昇し、それに対応して、名目長期金利も上昇することだ(図)。「成長実現ケース」では、消費者物価上昇率が2026年度から2.0%になり、名目長期金利が2029年度に2.2%、2031年度に3.0%になる。「ベースラインケース」では、消費者物価上昇率が2025年度から0.7%になり、名目長期金利が2028年度に1.0%、2031年度に1.4%になる。
消費者物価の上昇率が本当にこのようになるかどうかは、わからない。ただし、仮にそれが実現したとすれば、その時に金利がどうなるかを示しているという意味で、この推計は重要だ。
特に重要なのは、次の2点だ。
- 物価上昇率が上昇すれば、それに応じて名目金利も上昇すること。そうならなければ、実質金利が低下してしまって、経済に望ましくない影響を与える。
- 「名目金利が上昇すれば、必ず経済成長率が落ち込むわけではない」ということ。
2025年度の成長率が、成長実現ケースの場合には3.2%、ベースラインケースでも1.7%だから、これまでの日本経済と比較すれば、むしろ成長率が高まった状況ということができる。
つまり、金利が上昇しても経済に悪影響があるとは言えない。むしろ、実質金利を一定に保つように名目金利が上昇するのが、自然な姿だ。
【次ページ】日銀はナンセンス? 金利上昇が「経済を破壊しない」根拠とは
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