- 会員限定
- 2024/01/17 更新
イールドカーブ・コントロールをわかりやすく解説、日銀はなぜ長短金利を操作するのか
藤森みすず
大手Slerにてシステムエンジニアを経験後、フリーランスのライターに。IT・IoT、FX・保険・不動産・フィンテックなど、多様な記事の執筆を手掛ける。
しらいはるか
エディター・ディレクター。医療系大学院修了。公務を経てライターとしてキャリアをスタート。「医療」「金融」「ビジネス」の3分野をメインに執筆。ブックラィティングやコピーライティングも手掛ける。2018年よりエディター・ディレクターにシフト。現在は主にサイト運営やメディア管理を行う。
▼この記事を4分の動画・音声でご覧いただけます▼
イールドカーブ・コントロールとは
イールドカーブ・コントロールとは長短金利操作とも呼ばれ、長期金利と短期金利の誘導目標を操作し、イールドカーブを適切な水準に維持することを指す。イールドカーブとは、債券の利回り(金利)と償還期間との相関性を示したグラフで、横軸に償還までの期間、縦軸に利回りを用いた曲線グラフのこと。長期金利および短期金利は以下のような方法で誘導する。- 長期金利:国債買い入れオペレーション(公開市場操作)など
- 短期金利:当座預金への付利調整など
具体的には、短期金利は日銀当座預金のうち、政策金利の残高にマイナス金利を適用して、長期金利は10年物国債の金利が0%程度で推移するように長期国債の買い入れを行うといったことを指す。イールドカーブ・コントロールの代表例は、日本銀行(以降日銀)が2016年に実施した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が挙げられる。
通常、満期までの期間が長ければ長いほど債券の金利は上昇し、右上がりの「順イールド」となる。順イールドは通常時または金融緩和時に出現する形状だ。一方、右下がりの「逆イールド」は、金融引き締め時に現れる形状で、満期までの期間が長くなればなるほど金利は下がる。
また、イールドカーブの形状変化パターンとして、グラフの傾きが大きくなるパターンを「スティープ化」、傾きが少なくなるパターンを「フラット化」と言う。
スティープ化は、先行き金利の上昇が見込まれ、長期債券が売り込まれる場合に出現しやすい。一方で、フラット化は金利水準が今後どう変化するか不透明な場合に出現しやすい。
日本におけるイールドカーブ・コントロール
日本におけるイールドカーブ・コントロールは、どのような経緯・目的で実施されたのだろうか。- 短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス金利を適用
- 長期金利は10年物国債金利が0%程度で推移するように長期国債の買い入れ
日銀が実施したイールドカーブ・コントロールの目的は、フラット化したイールドカーブのスティープ化を進めることにある。この政策に至るまでの間、日銀は極端な金融緩和を行っていたため、イールドカーブのフラット化が進んでいた。
フラット化の影響で長期債券の利回りが下がり、国内の銀行や生損保、年金基金資金運用に悪影響を及ぼし、経営悪化の要因となっていたのだ。しかし、物価上昇率が安定的に目標水準を超えるまで金融緩和を続けたかった日銀は、金融緩和とセットでイールドカーブ・コントロールを実施、イールドカーブのスティープ化を同時に目指したのである。
- 量的・質的金融緩和の目的:2%の物価上昇によるデフレ脱却
- 長短金利操作の目的:日銀のマイナス金利導入後、大手銀行や地方銀行が軒並み収益圧迫に陥った問題を解決
これまでに何度か実施していた金融緩和は、2%の物価上昇によるデフレ脱却だったが、なかなかその成果が出なかった。デフレ脱却は、長い間掲げてきた目的であり、今回の金融緩和でも同じ目標を掲げている。
イールドカーブ・コントロールでは、日銀が長期金利を0%、短期金利をマイナス金利にすることで、国内金融機関の収益改善を目指す。
【次ページ】日銀のイールドカーブ・コントロール政策のメリット・デメリット
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR