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- 2012/08/31 掲載
かつてウォークマンにあった“独自価値”とは : 二代目社長の“値上げ”マーケティング(4)
『値上げコンサルティング』の手法
かつてウォークマンにあった“独自価値”とは
コンサルタントの幸田はケーキ店の二代目社長・修平に熱く語りかける。コーヒーがとっくに空っぽになっていたことに二人とも気づいていなかった。
「…さて、それでは次の、“独自価値”です。」
そうだ、価値を高める方法は全部で6つあって、相対価値はまだその1つ目だった。
1. 相対価値
2. 独自価値
3. 付属価値
■ズレで値上げする
1. 人
2. 時間
3. 場所
「先ほどの相対価値は“一点集中して、他よりも優れる”ことが目標でした。今度は“独自”、すなわち、他とは比べようがない、ということです。」
他とは比べようがない?さっきの相対価値では他を一部でも上回ることが大事だと言っていたのに、正反対のような気がする。修平は混乱してきた。
「あの、さっきは一点集中してライバルを上回ることが大事だ、という話だったのに、今度は比べない、というのは意味がわからないのですが。」
「独自価値というのは、比べないのではなく、比べようにも比べる対象がない、ということです。たとえばこんなエピソードがあるそうです。」
「昔、ソニーがトップの命令でウォークマンを開発させました。それを売りだそうとしたとき、ソニーの社員を含めてほとんどの人がそんなものが売れるわけがない、と言ったそうです。修平さん、なぜだかわかりますか?」
「えっ、ウォークマンをみんな売れないだろうと予想したんですか?今でもiPodなんかは大ヒットしているのに。そうですねえ、値段が高すぎたとか?」
「いえ、値段ではありません。理由は、ウォークマンが初めて世に出てきたものなので、誰もそれがどんなものでどう楽しいかがわかりませんでした。具体的に言うと、録音の機能がないとか、イヤホンをつなげないと曲が聞けないとか、そういった音楽再生機はこれまでなかったんです。まして、屋外で歩きながら音楽を聞くなんて概念自体がありませんでした。そのため皆が“そんなものを欲しがる人はいない”と思ったんだそうです。」
「へぇ、昔の人は見る目がないですねえ。」
コンサルティングというと、びっちり勉強させられるようなイメージがあったが、幸田さんの話は例え話が多くてわかりやすい。修平もつい軽口を叩く。
【次ページ】比較対象がなければ安売りされない
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