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  • 2013/02/22 掲載

3種類の価値で「値上げ」する: 二代目社長の“値上げ”マーケティング(5)

『値上げコンサルティング』の手法

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値上げコンサルティングには「価値を高める」という3つの方法があり、そのうち2つは「相対価値」「独自価値」であるという。初代社長である父親から紹介された“値上げコンサルタント”の幸田陽一は、父親から経営を引き継いだ後、赤字に転落してしまったケーキ店「KARIYA」の二代目社長・刈谷修平へのコンサルティングを続けた。
執筆:幸本 陽平

日本で最も売れる香水は何か

■価値で値上げする
 1. 相対価値
 2. 独自価値
 3. 付属価値

■ズレで値上げする
 1. 人
 2. 時間
 3. 場所


photo
「さて最後は“付属価値”です。これは端的に言うと“直接に品質やスペックに現れるわけではないが、実際の品質以上に消費者が感じる価値”のことです。といってもこれだけではわからないでしょう。修平さん、突然ですが日本で一番売れている香水ってどんなものだと思いますか?」

「えっ、香水ですか?私は仕事柄、香水は使わないので全然わからないんですが…。有名ブランドのものですかね?あるいは、テレビで紹介されたとか。」

「おっ、惜しいですね。実は、一番売れた香水とは、有名タレントのKさんが使用している、と言われているものなんですよ。」

「へぇ、そうなんですか。」


 幸田は話を続ける。

「化粧品会社の人に聞いたのですが、その香水は世界的に見たら特に有名で人気がある商品というわけではないのだそうです。欧米では香水が一般的でいろいろな人が使っていますが、日本ではマーケットが小さく、香水を使うのはごくわずかな人です。だから市場としても成熟していなくて、自分が好きかどうかよりも有名タレントが使っているというだけみなさん選ぶんだそうですよ。」

「わかります、その香水がどうだとかそんなのに関係なく、有名人が使っているっていうだけで売れるもんなんですよねえ。あっ、うちも以前ローカル誌にエクレアが取り上げられたとき、突然爆発的に売れましたよ。すぐ売上は元に戻っちゃいましたけどね。」

「そう!大事なのはそこなんです。別にその男性タレントが使っていようがいまいが、その香水の香りや機能は何も変わらない訳です。エクレアだって同じですよね。大事なのは、その商品に機能とは別の情報がくっつくことで、より消費者が高い価値を感じる、ということなんです。」


 これまで明るい表情だった修平の表情が曇った。

「幸田さん、おっしゃることはわかるのですが…。でもそういう、商品以外のところであれこれやるのって何か嫌なんですよね。ほら、よく飲食店なんかで、芸能人のサインとか、取材された雑誌なんかをこれ見よがしに展示しているお店ってあるじゃないですか。ちょっとああいうのはいやらしいというか、金儲けに走っているみたいな感じで、好きじゃないんですよね。私はそういうミーハー的なことではなく、ちゃんとケーキそのもので勝負したいと思って…あっ、別に幸田さんを否定するわけじゃないんですが…。」

 幸田はむしろうれしそうに聞いている。幸田の経験から、こうして信念がしっかりしている方がむしろやりやすい。何でも言うとおりにしますと鵜呑みにする顧問先よりも、修平のように自分の意見をはっきりという方がその後の商売がうまく行く確率は高い。

「修平さん、おっしゃることはもっともです。例として香水と芸能人を出しましたが、必ずしも芸能人やマスコミを利用しようという意味ではありません。大事なことは、お客さんは“気分”を買っている、ということです。気分というと語弊があるかもしれませんが、“同じ千円を払うのでも、意味を見出して支払いたい”ということですね。」

「はぁ、意味を見出す…」

「たとえば、高級ブランドのバッグを売るお店は、内装も、販売員の服装も、包装紙も、すべてが高級である必要があります。もし高級ブランドなのに、お店の場所が雑居ビルの中だったら、何だかがっかりしてしまいますよね」

「そうですね、高級ブランドなのにそれは変ですよね。」

「でもそれで“高級ブランドはバッグの質が良ければいいんだから、どこでどう売ろうがいいじゃないか、バッグさえちゃんとしたものならいいじゃないか”なんてことを言う人はいません。すべてが揃っているから高級ブランドで、そこに意味を見出すわけです。」

「なるほど。わかる気がします。」

「これは売っているものが高級でなくても同じことです。だから同じものでも、人によっては感じる価値が異なるし、売っている商品の本体以外に価値を見出すこともあるわけです。ケーキだって同じです。味、見た目、値段…人によって、何に価値を見出すかは違うのです。たとえケーキそのものが同じでも、です。」

「わかりました。ではKARIYAのケーキも、味や見た目だけでなく、そういった価値を見出してもらうことが大切なんですね。」

「そうです。その通りです。これは決して、中身が大したものがないものを、ごまかして売りつけるのとは違います。お客様が求める、正しい価値で伝えるということです。」


 今日幸田が店を訪れてから、すでに数時間が経っている。しかし、二人の話は止まる気配がない。幸田は話を続ける。

【次ページ】「歴史」も付属価値になり得る
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