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- 2013/04/19 掲載
ズレで値上げする: 二代目社長の“値上げ”マーケティング(6)
『値上げコンサルティング』の手法
“同じものなのに、高く買った”のはなぜか
「やぁ、今日が最後ですね。よろしくお願いしますよ。…おっ、早速アルザスを復活させたんですね!」「そうなんですよ。昔からのお客様は、懐かしいとおっしゃってくださって…。私が知らなかった昔のKARIYAのエピソードを教えてもらったこともあります。アルザスそのものの売上は大したことはないのですが、年配のお客様がセットで他のケーキを買ってくださったり、親子三代で来店くださったりと、確実に売上は上がっています。」
修平がうれしそうに報告する。
「それに、先生のアドバイスで始めたサンドイッチのランチボックスも好調ですし、オーダーメイドのケーキもこの前テレビで取り上げられました。生意気ですが、先生に教えていただいた『価値で値上げする』を従業員に教えたところ、次はこんなことをしてはどうかと、どんどんアイデアを出してくるんです。いきなり売上2倍は無理ですが、成果は出ていますよ。」
たしかに今までとは雰囲気が違う。決して商品構成や値段を大きく変えたわけではないが、POPを書いたり、店内を装飾したりと「お客様に喜んでいただき、価値を感じてもらうにはどうすればよいか」という意気込みが感じられる。幸田と修平はいつもの奥の席に座った。
「この調子で行けば、本日教える3つをマスターすればかなりの成果が見込めそうですね。早速ですが…その3つとはこれです。」
1. 人
2. 時間
3. 場所
「ところで修平さん、前回の最後に“同じものなのに、高く買ったこと”を思い出しておいてくださいとお願いしました。まずはそれを教えてください。」
「はい。“同じものなのに、高く買ったこと”ですね。ええと…ある国に遊びに行ったとき、その国では一部に外国人料金があって、博物館や遺跡の入場料が外国人である私は現地の人より高かったんです。これって入場料という同じものでも、現地の人よりも高く買った、って言えますよね。」
「そうですね。他には何かありますか。」
「先日、取引先の葬儀があったんです。ところが喪服が昔に買ったものしかなく、サイズが合わなかったんです。それで急遽、喪服を量販店に買いに行きました。喪服の裾上げをお願いしたら、通常1週間かかるのは無料で、翌日仕上げだと3千円かかるって言われたんです。葬儀の日取りは決まっていたから、泣く泣く3千円払いましたよ。」
「なるほど、同じ裾上げでも、一週間待てるのならば無料だったのに、急ぎだったからやむなく3千円払ったんですね。たしかに同じものでも高く買った、といえますね。」
「まだあります。私は地元のプロ野球チームのカーブスを応援していますが、その球場のビールって800円するんです。これって同じビールでも、居酒屋で飲むよりも高いですよね。でも、高くても飲んじゃうんですよねぇ。球場で飲むビールはおいしいですから。それにしても今年のカーブスは投手陣がいいですよね。特にドラフト一位の穂村投手が…。」
「わ、わかりました。どうもありがとうございます。」
修平の野球談義が長くなりそうなので、幸田は慌てて話をさえぎった。
【次ページ】ズレがないと価格のみで競争することになる
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