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  • 2012/01/27 掲載

バーゼル3 キホンの「キ」

金融がわかりたい人のための「腑に落ちる」シリーズ

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今回より、今後の国内外のビジネスにインパクトのある金融関連トピックの基本を解説。まずは、国際展開する銀行の健全性を高めるための新たな規制であるバーゼル3(スリー)を、2回に分けて取り上げる。銀行の経営に根本的な影響を及ぼす可能性が指摘されるバーゼル3。今回は、その全体像と、中でもよく話題に上る所要自己資本規制の枠組みについて述べる。

いわゆるバーゼル規制とは

 バーゼル3そのものの説明に入る前に、バーゼル銀行監督委員会が策定してきたいわゆるバーゼル規制を簡単にみてみよう。同委員会はスイスのバーゼルに本部を置き、主要国の銀行監督当局などから構成され、監督やリスク管理に関する慣行を世界的に促進することを目指している。

 同委員会はこれまで、国際展開する銀行に最低8%の自己資本比率を課す内容の規制を策定してきた。特徴的なのは、自己資本比率の算出(自己資本÷総資産)において財務諸表の数値ではなく、所定のルールで算出された分子や分母が用いられている点。すなわち分子には、財務諸表の自己資本に対し、自己資本に近い性質を持つ他人資本を加えたり事業継続のために必要とされる資産などの項目を引いたりして求められる規制上の自己資本を使用する。また分母には、資産の種類に応じたリスクの大きさを加味して算出された「リスクアセット」(リスクベースの資産)を使用する。リスクアセットの考え方を単純な例で説明すると、銀行がA社とB社へ同額だけ無担保融資をしていた場合(どちらも銀行にとっては資産)、A社の信用リスク(≒債務不履行を起こす確率)がB社の2倍だとすると、銀行のリスクアセットの計算上両資産は同額ではなく、B社融資はA社融資の半分になるということだ。

 この考え方に沿った規制が1988年にはじめて公表され、その後1999年に大きな改変がなされた。1988年の規制はバーゼル合意またはバーゼル1、1999年の改変はバーゼル2と呼ばれている。バーゼル2では規制自己資本比率の算出ルールが銀行の抱えるリスクをより広範にカバーしたものとなった他、算出ルールを第1の柱とした上であと2本の柱(第2の柱:リスク管理と監督、第3の柱:市場規律であるが、内容については次回)を加えることで3本柱の規制となり、現在まで適用されている。これらを経たバーゼル3は、バーゼル2以来の大きな改変なのである。

 ただし、バーゼル規制には法的強制力はない。代わりに、その趣旨を踏まえた各国・地域における制度化および実施が期待されている。実施状況については国・地域相互でレビューしあう他、IMFや世銀による査定プロセスも存在し、いずれも結果は公表される。よって、バーゼル3を含む合意や規制は実質的に国際規範として機能しているといえる。現在わが国では、バーゼル3制度化作業の真っ最中である。なお、所要自己資本比率8%は国際展開する銀行(国際基準行)のみに適用される形となっており、それ以外の銀行(国内基準行)への適用は規制の趣旨を踏まえた上で各国・地域の裁量が認められている。わが国では国内基準行には4%が適用されるほか、比率の算出ルールも細部で国際基準行とは異なる扱いがされている。本連載ではわが国の国際基準行に適用される規制を念頭に述べる。
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