『就活の神さま』常見陽平氏×『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』沢田健太氏
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就活ナビサイトには注意も必要!?
――かつてに比べて採用活動にも変化が出ているんですか?
常見氏■人事部の採用担当者のスキル低下問題もありますよね。ひと昔前の人事が超売り手市場から現在のような厳しい環境に変わってから、かなり異動してしまった。そこで採用担当者のスキル継承が行われなかった企業も多数。採用担当者のスキル低下については、企業からも愚痴を聞きますよ。欲しい人材に対して口説ける人事担当がいなくなってきているんです。逆にWeb系の業界は人事が泥臭くなっている。Webアプリ職人が欲しいと思っても供給できる大学はほとんどないから、ビジネスコンテストに協賛したり、インターンをやって優秀な学生たちを一本釣りで採用してしまう。
沢田氏■その一方で人事と大学との関係は、何というか、やたらとスマートになっているような気がします。常見さんがおっしゃるとおり、企業の人事の中核は残っていても現場サイドが変わってしまった。
大学側もガバナンスを重視し始めるようになって、かっちりとジョブローテーションを回すようになりました。昔はもっと階層的に繋がっていて、上役は上役で、現場は現場で繋がっていた。下で難しいことは上を通してとか、またはその逆とかがあった。今はスマートに担当者同士の線のやり取りしかなくなってしまったんです。そうなると、ある優秀なキャリアセンターの職員が個人戦でネットワークを増やしても、その人が飛ばされるだけで大学の営業力ががくんと落ちてしまう。
常見氏■企業側の人事もコストカットされて、出張費が出ないから地方の大学にはいけないなんてことが起きています。企業側もそこまでやらなくていいという姿勢になっているんです。つながりが薄くなっちゃっているから、企業側からキャリアセンターに「2、3人程度の採用をしたいのですけど、何人かキャリアセンターから紹介をお願いできませんか!?」って頼めない企業も。
沢田氏■そうした状況に戦略を見出している企業や大学には価値がありますよね。私がインターンシップの開拓をやったときも、仲のいい人事に相談したら「まず上司の〇〇さんを口説かなきゃダメだよ」と内部事情をリークしてくれた。そういう人と人が多面的に繋がることの可能性は再認識しないといけないですよ。
常見氏■就職情報会社が発展してきたことの弊害だと思うんです。以前は太いパイプがあったのに、大学のキャリア支援なんかを業者にアウトソーシングするようになって、大学と企業の直接のつながりが薄くなった。特に就活ナビサイトの功罪ですよね。学生がキャリアセンターに行かなくても就活ナビサイトを使えば、一応の就職活動ができてしまう。でも、最近の企業は就活ナビサイトの優先順位が下がっているようなんです。ナビサイトによって目立つ大企業にやたら応募が集まるようになったけど、そういった企業の人事に聞くと就活ナビサイトからはほとんど欲しい人材がこないって言うんですよ。
沢田氏■就活ナビサイトの普及以降、首都圏の就職活動の中心がナビになっていて、他のやり方を知らない子が増えていますね。キャリアセンターへ行ったり、ハローワークに行ったり、違う求職の仕方はいくらでもあるのに、就活ナビサイトの範囲だけで完結してしまう。それで、就活ナビサイトに新しい募集がアップされなくなると、もう就活の期間は終わったんだと思ってしまう。最近は中小企業にいきたがる子が増えていますが、就活ナビで中小企業を探そうとしていたりする。採用活動にお金をかけられない中小企業は、多くの場合、ナビを使わないことに気づけないんです。
常見氏■そもそも就活ナビサイトに登録されている企業の中にだって、お金だけは潤沢にあるブラック企業も多いのに、そこは気づかないんですよね。
沢田氏■就活ナビサイトは便利なんです。楽に使える分だけ、学生だけでなく企業側もみんな依存してしまったのでしょうね。
常見氏■そもそも要領のいい層は、就活ナビサイトだけに頼るようなことはしない。その層の学生はどの時代も強いから就職には困らないんですよね。でもそういう現実を知らない人、つまり普通の人が一番損する世の中になっている。結局、今の就職活動の在り方って、普通の大学と普通の学生と普通の企業が困るだけの構造になってしまっている。これはなんとかしないといけないですよね。
(構成・執筆:
大熊信)
●常見陽平(つねみ・ようへい)
人材コンサルタント、大学講師、著述業。『就活の神さま』(WAVE出版)『くたばれ!就職氷河期』(角川SSC新書)、『「キャリアアップ」のバカヤロー』(講談社+α新書)といった就活・キャリア関連の著書多数。現在も多様なメディアにて旺盛な発言を行っている。
●沢田健太(さわだ・けんた)
民間企業で営業職や人事職に従事。その後は、教育分野に転身。複数の大学(キャリアセンター)にて、キャリア支援に携わる。著書に『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)がある。現在の主な関心事は、「就活と若者の不安」「正解を求めようとする就職活動生の意識」「大学におけるキャリア教育の今後」など。
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