「エキサイトレビュー」プロデューサー 藤井麻男氏/編集者 アライユキコ氏インタビュー
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時事ネタは必須!?
――記事のテーマに関してはSkypeチャットで相談しながら、アライさんがメンバーであるライターのアイディアの中から採用/不採用というかたちでチョイスしているのでしょうか。
アライ氏■基本的にはそうですね。やはりニュースの中の1コーナーなので、何かしらニュース性のあるものを、ってことは考えています。とはいえ、夏→甲子園→「甲子園のこの時期に入れたいアプリ」とか、そのくらいですけど(笑)。あるいは、夏休み→長い休み→「大長編小説を読もう」とか。そういう「引っ掛け」があればやってもよい、(藤井氏に向かって)って感じですよね?
藤井氏■内容は書き手のみなさんに委ねていますので、入り口に関しては、できるだけ時事ネタを絡めてくださいってお願いをしてました。PVのランキングを見ても、やはり時事ネタが絡んでいるものが上位に来ますからね。先日たくさんのアクセスがあった
ガリガリくんの記事とかは典型です。
アライ氏■まだ始めたばかりですから、これからライターの特性みたいなのがよりわかるようになってきたら、逆に私から「こういうの書いてみたら」って振るようにもなってくるんじゃないかなと。
――「エキサイトニュース」の中には、「レビュー」以外にも「エンタメ」「コネタ」「コラム」などのコーナーがありますが、このへんとの差別化は考えてらっしゃいますか?
アライ氏■「コネタ」とはテーマやトピックが被らないように気をつけてます(笑)。
藤井氏■「この話題は以前に『コネタ』で扱っていた記憶があるぞ」ってことは稀に起こります(笑)。でも、今のところはアライさんが調べて指摘してくれてます。
アライ氏■差別化などは今後の課題かもしれませんね。まあ、コネタさんには独自の雰囲気もありますし、そもそもライターさんが違いますから。レビューはレビューで、今後独自のカラーが出てくるんじゃないかと思っています。とはいえ、「レビューにはこういう記事が載る場所」って思われちゃうのもつまんないので、そのへんは予測のつかない感じも残しつつ、が理想ですね。
――そうやってのびのび自由にやっていても、きちんとアウトプットができていて、アクセスの結果が出せていければいいわけですもんね。
藤井氏■勝負はこれから、ですね。Webメディアって、なかなか開始1か月程度で結果はわからない。例えば雑誌だったりすれば、創刊号何部売れましたみたいに、数字がすぐ出るんでジャッジしやすいかもしれませんが、Webメディアの場合はある程度アーカイブなんかが溜まってこないとアクセスも出にくいですしね。ある程度ロングスパンで考えて、結果を出していければなと。
アライ氏■すでにいくつかアップしているゾンビの記事なんかがそうですけど、ある程度特定分野の記事が溜まってくると、そこに行けばまとまった情報があるっていうふうに認知もされる。だから、デタラメに書いてもらっているわけではないんです、と声高に言っておきます(笑)。
藤井氏■で、例えば、このゾンビの記事は面白かったから他のゾンビの記事も、って感じで回遊してもらえたら理想です。
コミュニケーションとしての雑誌
――「レビュー」って、従来「雑誌」というメディアにおける読み物の看板の1つだったように思うんです。「エキサイトレビュー」は、その「レビュー」を名に掲げ、多様なトピックを扱い、しかも先日アップされた『LIKTEN』関係の記事を拝見したところ、レビュー枠でありながらインタビュー形式すらも導入しています。そのようなことから、「エキサイトレビュー」は、雑誌的なものの現在形というか、今雑誌的なことをやるにはどのような場を作るべきか?みたいなことをけっこう意識されているのかなと感じました。「雑誌に元気がない」と言われる今、雑誌メディアに対して、あるいは雑誌的なもののあり方について、「エキサイトレビュー」としての考えや意識されているところがあれば教えてください。
アライ氏■インタビューの形式にしたのも、「インタビューが一番ふさわしいだろう」という以上のことではないんです。「これはインタビューだよね」「これは取材した方がよくない?」「これはレポート形式にしたら」って。つまり、トピック1つひとつにとってふさわしい形式を、っていうだけなんです。あと雑誌っていうのは、ある1つの塊としてあるわけですよね? 1冊の雑誌として。一方「エキサイトレビュー」は、我々は編集している側なのでトップページから見ますけど、一般の読者はバラバラなところから入ってくると思うんです。で、「あ、これって『エキサイトレビュー』っていうもの中にあるんだ」って気付く。だから、1つひとつの記事が独立するように、っていうことは意識してますね。……あ、でもバラバラではありつつ、ちょっと内輪感を出そうとはしていて、そこが雑誌的といえば雑誌的かもしれません。ちょうどガリガリくんの記事がそうだったと思うんですけど、「ライター同士で話していたらこういう話が出た」みたいくだりをわざと文章に入れてもらったりとか。つまり、バラ売りもできるけど、何となく後ろに雑誌的な「束」もあるんだよっていうのをイメージしてもらえるような空気感を作りたい。
藤井氏■今、検索から来て、見て、帰るっていうようなパターンが本当に多くて、やはりそういう直行直帰の方ばかりだと、広告的にもあまり押してもらえなかったりするんで……だから、そういう意味では、メディアのファンになってもらうっていうのは大事なことだと思います。
アライ氏■あと今、「エキサイトレビュー」のライターは、20代、30代、40代といるので、その差もうまく出せるといいなって思っています。40代が20代に振ってみたり、20代が30代に質問したりとか、そういう「コミュニケーションとしての雑誌」みたいなところは見せていきたいです。また、この世界、出版不況ですんで、ライターすることとか取材して文章書くこととか、つまり発信することが「面白い」って思ってもらえたらいいですね。そういう意味での「雑誌」なのかもしれません。
――雑誌って、誰かお目当ての書き手の文章があって読み始めることが多いですけど、「あ、こういう人も書いてるんだ」って知ることで広がっていく面白さがある。それはWebでも同じですものね。まだ7月に始まったばかりですから、これから時間を経て、書き手や文章が増えていくことで、「エキサイトレビュー」はさらに厚みや奥行きのある場になっていくことと思います。
アライ氏■ありがとうございます。楽しそうだから参加したいな、って思ってもらえたら嬉しいですね。あ、只今ライター募集中ですので。いや、必ずしもライターじゃなくても、やりたいことのある人であれば、私が基本的なところはフォローしますので(笑)。ぜひ!
――では最後に、今後「エキサイトレビュー」としてやっていきたいことであったり、今後の展開として考えていることなどありましたら、教えてください。
アライ氏■まだ始まったばかりで必死な状態ですからね(笑)。とりあえず、ストックが欲しいみたいな話になっちゃいます。今は、取って出し状態ですから。
藤井氏■まだ離陸した直後ですからね、墜落の危険もありますから(笑)。
アライ氏■……夢を語るのは、もうちょっと安定飛行に入ってから(笑)。
藤井氏■ でも、ゆくゆくはiPhoneアプリであったり、電子書籍なんかに発展していけたら面白いかなと思っています。エキサイトにもアプリを作っている部署もあるので、いろいろなメディアに展開していけるんじゃないかなと。
アライ氏■あとは、イベントなんかもいずれはやっていきたいですね。
――Webにとどまらず、ということですね。今後の展開を楽しみにしております。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
(取材・構成:
辻本力、撮影:市村岬)
●藤井麻男(ふじい・あさお)
1979年生まれ。編集プロダクションを経て2003年にポータルサイトを運営するエキサイトに入社、「世界びっくりニュース」などのコンテンツ企画、運営を担当、現在はエキサイトニュースなどのプロデューサーを務める。Twitterは@sawada。
●アライユキコ
フリー編集者。編集を担当する主な書籍に『文学賞メッタ斬り!』シリーズ(パルコ出版)『ふいんき語り』シリーズ(ポプラ社など)、Webに日経ビジネスカレッジ「ゆとり世代、業界の大先輩に教えを請う」Webマガジン幻冬舎「お前の目玉は節穴か」など。「エキサイトレビュー」の編集担当。雑誌『本の雑誌』で「新刊めったくたガイド」連載中。Twitterは@kaerubungei。
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