2. 中堅・中小企業向け内部統制評価基準（簡易版）の構造

　この評価基準は、次の5つのカテゴリ（業務そのものの流れに合わせて）からなっている。
【1】顧客や社会との良好な関係維持
【2】経営資源の確保・維持
【3】経営者、経営幹部、管理職および社員各個人の能力向上と、組織能力向上を目指す学習の仕組み
【4】経営管理の実践、改善
【5】知の経営の実現

　この5つのカテゴリは、それぞれ（1）から（10）までの10項目の評価項目と、アからオまでの5つの質問から構成されている。評価を行うときは、まず、各評価項目を個別に評価してa（最高レベル）からe（最低レベル）までの評価結果を決める。その際、当該カテゴリにおけるアからオまでの5つの追加質問結果をも考慮して、評価項目毎に評価を行う。各評価項目をポイントに換算（a=5, b=4, c=3, d=2, e=1）して、50評価項目全体の合計値を算出し、総合評価を行う。したがって、企業の内部統制評価ポイントの合計は最低が50ポイント、最高が250ポイントとなる。この200のポイント差の間のどこに位置しているかにより、組織全体としての内部統制レベルを判断する。

　本簡易基準では、上位3分の1（184ポイント-250ポイント）をAランク、中位3分の1（117ポイント-183ポイント）をBランク、下位3分の1（50ポイント-116ポイント）をCランクとしている。

3. 中堅・中小企業向け内部統制評価基準（簡易版）の詳細

　以下に、5つのカテゴリの最初の評価基準（1）と最後の評価基準（10）を参考に示す。

（会社の目標【1】）
1. 顧客や社会との良好な関係維持（1）　企業の社会的責任（法令等の順守、環境保護、社会貢献、利害関係者への利益配分等）の重要性についての理解は、経営者から社員にいたるまで十分に浸透していますか。
（2）-（9）は割愛。
（10） 　経営者は、クレーム、リコール等の問題が発生した場合、顧客に対し、その発生原因と会社側の処置について、誠実かつ十分な説明責任を果たしていますか。

（会社の目標【2】）
2. 経営資源の確保・維持（1）　会社にとって必要な人財（ヒト）の確保のため、求人広報活動（会社の業務案内、業務内容、労働環境、給与水準等の開示等）が、有効かつ適切に市場向けに行われていますか。
（2）-（9）は割愛。
(10) 　会社が保有する特許権、実用新案権、意匠権、技術ノウハウ等の知的財産権の取得、維持管理、消滅について観察チェックし、経営者に必要な情報を提供する専門の担当者が存在していますか。

（会社の目標【3】）
3. 経営者、経営幹部、管理職および社員各個人の能力向上と、組織能力向上を目指す学習の仕組み
（1）　経営者および経営幹部は、統括責任者としての自覚を持ち、指導・統率力強化、経営センスを磨くため、自己研鑽に努めていますか。
（2）-（9）は割愛。
（10）　 会社の各部署は、業務の違いはあっても、有機的な協調、協働、相互補完体制を維持、確立し、全社的な経営価値、効率の向上を目指していますか。

（会社の目標【4】）
4. 経営管理の実践、改善
（1）　経営者は、経営環境（経済動向、業界動向、自社の業界での位置と競争関係等）に関し、情報収集とその分析を行い、これを基に経営方針、経営戦略を策定していますか。
（2）-（9）は割愛。
（10）　会社において想定されるリスクの種類は特定され、リスクの発生を予防するための方策は講じられていますか。

（会社の目標【5】）
5. 知の経営の実現
（1）　会社のもつ企業文化は、経営者の経営理念を深く反映していますか。
（2）-（9）は割愛。
（10）　ITデータの流失と悪用に関するセキュリティ対策がルール化され、厳格に守られていますか。

　以上の50項目について、上述の評価方法により、内部統制制度の整備状況と運用状況のレベルを評価する。NPO法人内部統制評価機構が開発した「中堅・中小企業向け内部統制評価基準 簡易版」の全容については、http://www.icao.or.jp/を参考にしてほしい。