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  • 2024/12/25 掲載

まだ生成AI「否定派」が多い教育現場のリアル、教員の「忙しすぎ問題」解決できるか?

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教育現場において、生成AIは「レポート作成などの不正に使われるツール」「そもそも使い物にならない」など批判されるケースが散見される。一方、学生が生成AIの不完全な回答を自ら修正するというユニークな課題に取り組む(前編参照)お茶の水女子大学の伊藤 貴之教授は「学生、教員の両観点で見ても、生成AIは大学教育を変革させる未来は近いと感じます」と期待を込める。中でも、「忙しすぎる問題」を抱える教員の救世主になれる可能性を秘めるという。そこで今回、伊藤氏に、教育現場における生成AI活用の実態や課題、もたらす変革などについて話を聞いた。
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教員の忙しすぎる問題は生成AIで解決できるのか
(Photo/Shutterstock.com)

生成AI利用率「学生30.3%」「教員19.3%」

 生成AI利用について、教員と学生では異なる実態が見受けられる。仙台大学が行った生成AI利用に関する調査では、大学生・大学院生の生成AI利用率が34.9%であるのに対し、教員の利用率は36.8%と上回っていた。

 しかし専門学校や高校などを含めた全体の結果では、学生(生徒)が30.3%、教員は19.3%と大きな差が見られた。一般的に若い世代の方が生成AIの利用率が高い傾向にあるが、大学教員の場合、教育だけでなく、研究活動にもAIを取り入れ始めていることで利用率が高まったと考えられるという。

学生と教員の生成AI利用率を比較
(出典:仙台大学 調査資料

 生成AIに関する課題を学生に課すなどAI教育を実施している伊藤氏も、大学教育における生成AI活用の可能性の高さに注目。授業期間中の小テストや軽い復習課題において、生成AIの積極的な利用を推奨している。

「生成AIは強力なツールであり、学生にその活用機会を与えることが重要だと考えています。自分が担当しているいくつかの科目では、講義資料参照や生成AI使用を許可したオンライン小テストを実施し、その後に資料参照不可の定期試験を行っていますが、小テストの答案には生成AIを使ったと思われる答案が増えたように感じています。そのほか、授業を欠席した学生が、欠席した週の学習を生成AIの活用によって補強することも可能です」

生成AI普及の起爆剤は「就職活動」のワケ

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お茶の水女子大学 教授 伊藤 貴之氏
1968年東京都生まれ、1990年早稲田大学卒業。1992年日本アイ・ビー・エム入社、1997年早稲田大学課程外で博士号(工学)を取得。2005年お茶の水女子大学理学部情報科学科助教授、2011年同教授(現職)、2024年より共創工学部文化情報工学科教授を兼務。そのほか、お茶の水女子大学の文理融合AI・データサイエンスセンター長、ジェンダード・イノベーション研究所を兼任している。
 学生による活用について、伊藤氏はさらなる普及が進むとみている。特に、学生の就職活動(就活)を契機として急速に広がっていくと予測する。

「スマホの普及も、実は学生の就活がきっかけの1つでした。ガラケーでは閲覧できない就活サイトを外出先でも見られるようにするため、学生たちはスマホを手にし始めましたが、それがスマホ普及の起爆剤の1つとなりました。生成AIも同じように、就活対策をきっかけに大学生に一気に普及が進んでいる段階とみています」(伊藤氏)

 現在の就活で学生が生成AIを使うとしたら、エントリーシートや小論文などの作成が考えられるが、個性の乏しい現状の生成AIの文章をそのまま使って就活で成功を収められるとは限らない。しかし今後は、生成AIのパーソナライズ機能が進化し、個人の性格や経歴に応じたアドバイスや文章を生成するようになる可能性がある。

「今の生成AIによる文章は無個性で、どの学生が使っても似たり寄ったりの表現になりがちです。そのため、生成AIを使って就活に臨んでも、どこか物足りなさを感じることも多いかと思います。しかし、将来的に個々の学生に合わせてパーソナライズされた生成AIが進化すれば、大きく事情が変わってくるはずです」(伊藤氏)

 また伊藤氏は、今後は学生がスマホなどのモバイルデバイスを通じて生成AIに対して音声でプロンプトを入力する機会が増えると考えている。

「今の若者はマイク付きイヤホンを用いて電話をするなど、恥ずかしがらずに気軽に公衆の場で話す人が多くなりました。生成AIへの音声入力も特別な抵抗なく行うようになるでしょう」(伊藤氏)

 一方、教員側ではどうだろうか。生成AIを教育に活用することについては、いまだ賛否が分かれるところだが…。 【次ページ】教員は「使いものにならない」など否定派も多い
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