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  • 2007/07/12 掲載

中小企業の戦略的会計システム構築 第5回:戦略的会計システムの構築

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中小企業の成長に避けて通れないのが会計システムの構築である。日常的に必須とされる業務を経営戦略に生かすことができれば、その企業は一段と飛躍できる。会社の仕組みが見えてくる会計システムについて、インストラクション 代表取締役社長 神田祐治氏が解説する。
長いタイトル

 1970年代のフォークソングに、『悲しみは駈け足でやってくる』という唄がある。ヒットの期間は短かったが、「明日という字は明るい日とかくのね」という唄い出しにインパクトがあったのを覚えている。長いタイトルはメランコリーな気分をうまく表現するのに効果的だった。
(『悲しみは駆け足でやってくる,アン 真理子,作詞:アン 真理子作曲:中川 克彦,1969,ビクターレコード』)


 表題の「戦略的会計システムの構築」も長いタイトルである。こちらはなんとも欲張った難しいタイトルだ。戦略的というからには経営に役立つ精緻なロジックがなければならない。また、会計にシステムという言葉がつくとなると、それはどのような会計制度を選択し、データベースはどうするのかというアイデアも必要となろう。さらに、中小企業がこれを構築するにはどのようなステップを踏んだら良いのかも知らなければならない。これだけの要件を語るには長いタイトルになるのはいたしかたないのかもしれない。

 表題のような複雑な問題を考える時、中小企業にとって一番重要なことは、安易に結果を求めようとしないことである。大企業が日夜苦労して確立できないでいる命題をそうやすやすと解決はできない。「戦略的会計システムの構築」が目標であっても、その目的は「企業を継続させるためのあくなき活動」にあるはずだ。急いでゴールを目指さず、ゴールにいたるまでの道筋をしっかりと通るほうが中小企業にとっては実益になる。明日を明るくするのは得られた結果ではなく、何を行ったのかというプロセスにあり、プロセスが動くことで目的に少しでも近づけばよいというスタンスが中小企業の望ましい戦略ではないだろうか。

経営の意思決定

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図1 会計システムが
戦略的であるための要件
 では、会計システムが戦略的であるための要件とはなんであろうか。要点を3つに絞って検討してみたい。第1に、経営に役立つロジック、すなわち「経営の意思決定」をどう考えるかということだ。第2は「会計システムの選択」の検討であり、第3には「ゴールまでの工程表」の作成ということになる(図1)。これらが明確になれば、経営改善のための「戦略的会計システムの構築」のモチベーションは自然と整ってくるはずだ。大まかな構造を定義できれば、後は部分最適と全体最適をどうバランスをとるかということだけが残る。

 企業のトップは常に利益を増加させる意思決定をせまられている。第1の要件、「経営の意思決定」は、「価値の判断」と「事実の判断」があってはじめてモノゴトが決められる。単に、「利益を増やしたい」という意欲だけではロジカルな意思決定はできない。「過去から現在までの動線がこうだったから将来はこうなるだろう」と推測するのが事実の判断である。例えば、経常利益額を年度ごとにつなげれば折れ線グラフになる。この時、基準点からの増減を反対の位置にプロットしてみると折れ線は楕円になる(図2)。更に、現在から将来の予想経常利益額を同じように描けば、メビウスの輪のような絵が見えてくる。事実はこの輪の中で起きてくると考えるのが自然であろう。

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図2 経常利益額を年度ごとにつなげて折れ線グラフにし、
基準点からの増減を反対の位置にプロットしたもの。


 問題は、「ではどうするか」だ。しかし、この解答は意外に簡単に見つかる。経営者がこの図を見て考え、「このようににしたい」と思うことをこれからの指針にすれば良いのである。指針にはより具体的な行動計画が求められるが、この計画を経営者の意思の決定の形とすることができる。

 「経営の意思決定」には、バランス・スコアカードという手法がよく使われる。これは、「過去の視点」「外部の視点」「内部プロセスの視点」「将来の視点」の“4つの視点”から意思決定を行おうとするものだ。これらの「事実の判断」から個別の実施項目(CSF:critical success factors)・数値目標(KGI:key goal indicator)・評価指標(KPI:key performance indicator)が導かれ、PDCAサイクルが実行されるところとなる。中小企業の経営者には理解を得られやすいメソッドであるために参考にされたらよいだろう。

 経営戦略上、このようなアプローチが最善というわけではない。しかし、「なぜ・なんのために・なにを・どうするか」という「価値の判断」をしやすくすることは、「経営の意思決定」には欠かせない作業といえよう。
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