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- 2023/12/04 掲載
検索市場の「グーグル独占」は何が問題か? 日本も米国も“負けても戦う”真の狙い
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
規制当局は「なめられている」
さらに、9月に審理が始まったグーグルの検索市場における反トラスト法違反裁判と併せ、一連の当局の行動は米メディアによって「歴史的な意義を持つもの」(米ABCニュース)として高く評価されている。
ところが、米有力投資家の見方は正反対だ。投資顧問企業、米バーンスタインリサーチのアナリストであるマーク・シュリスキー氏は顧客向けの分析で、「(司法省のグーグル提訴には)あくびが出る。この件についての顧客からの問い合わせはゼロだ。(投資家は逆に)独占的地位で訴えられた企業に投資すべきだ」と助言している。
さらに、コンサルタント企業の米キャピタル・アルファ・パートナーズでアナリストを務めるロバート・カミンスキー氏も、FTCによるアマゾンの提訴について、「FTCがマイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザード買収を阻止しようとしたものの、7月に敗訴した。この事例をはじめ、規制当局は法廷で負け続けており、怖い存在ではなくなっている」と解説した。
このように、米司法省やFTCは、ある意味において「なめられて」おり、対アマゾンと対グーグルで敗訴が既定路線として捉えられている。そうした論調は日本の公正取引委員会の審査にも影響を与えるものであり、理由の分析が必要だ。
反トラスト法は「消費者」利益を守るもの
まず、司法省やFTCの訴えについて、歴史的な背景を踏まえて押さえておこう。最初に、米国の反トラスト法は、(1)不当な取引制限や独占を禁止するシャーマン法(1890年成立)、および(2)価格差別や抱き合わせ取引、排他取引等を禁止し、企業結合に制約をかけたクレイトン法(1914年成立)で構成されている。1970年代ごろまでは、競争条件に負の影響を与える行為が広く違法として解釈されていた。
しかし、1970年代後半あたりから、「反トラスト法の立法意図は、独占によって被害を受ける競合企業を守るためではなく、消費者の利益を保護することにある」との説が勢いを得て、現在に至るまで、支配的な法解釈となっている。自由市場において非効率な企業は自然に淘汰されるため、規制当局が競争力のない事業者を保護するのは間違っているというわけだ。
それを念頭に、司法省のグーグルに対する訴えを考察してみよう。
まずグーグルは現在、冒頭の図のように、米検索市場においておよそ89%という、圧倒的なシェアを持っており、競合は5%未満のシェアで並ぶ。注目すべきは、マイクロソフトがAIアシスタントのCopilotで攻めたものの、グーグルは検索シェアをほとんど失っていないことだ。これだけを見れば、グーグルは紛うことなき「独占的企業」である。
では司法省は、グーグルの市場独占でどのような弊害が生まれると主張しているのか。 【次ページ】司法省の主張と「3つの狙い」
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