- 2006/09/08 掲載
【神田敏晶氏インタビュー後編】Web2.0によるTVとネットの新しい融合/Web2.0に死角はないのか?(2/2)
Web2.0に死角はないのか?
――Web2.0では、ビジネスの変化に合わせてサービスを進化させる開発スタイルが主流になっています。"永遠のβ版"とも言われていますが、サービスの問題点はありますか?そうですね。Web2.0では提供されるサービスがβ版だからということで、それをちゃんとやらない理由にしてほしくはないですよね。私はgoogleのGmailサービスを利用しているのですが、もうGmailがないとやっていけない体になってしまっていて(笑)。一度だけサービス止まってすごく困った経験がありました。ネット上のサービスはいろいろと修正しながら進化しているので、ユーザーもある程度はリスクをもって使わないといけないかもしれません。ただし、googleの場合について言えば、企業の視点やマインドが単に目先のことに向いているのではなくて、将来を見据えながら動いている点はすごいと思います。google labには最高峰のエンジニアが世界から集まってきていますから、もっと面白いサービスが出てくるでしょう。
――技術面から見ると、APIを利用して様々な情報を収集できるWeb2.0のサービスが増えています。フォークソノミー[*4]のような人的な分類による情報収集と、自動的な収集のどちらがよいと思いますか?
将来的には、自動化される方向に進んでいくと思います。現状を見ると、人的な分類については、ユーザー自身がメタデータの使い方をあまり理解していないのではないかと思います。SEO対策のように何でもタギングしてしまう。本来の情報を表すタグをしっかり付けていない。本人の主観的なタグ付けだけでなくて、第3者もタグに触れられたほうがよいですね。それでその外部タグが増えれば登録されるようになる。さらに、どのような人たちが評価しているのかも知りたいところでしょう。インフルエンサーの考えも重要ですが、趣味や思考が自分に似ている人の情報も取っていきたいですから、梅田望夫さん(ウェブ進化論の著者)が言うように、すべてがオートマティックになるためには、まだ少し時間が掛かるでしょう。いまはまだ人的な要素にも頼らざるを得ない状況だと思います。
人間の能力が拡大していく"人間3.0"の時代へ
――-Web2.0時代の新しいビジネスは果たして成功するのでしょうか?いま、インターネットビジネスを起すには、すごくよい時期だと感じています。日本では"ものづくり"というと、どうしても工場でベルトコンベアに乗せてというイメージで、"有形のもの"をつくることだと思われている傾向がありますが、それは違うのではないかと。ネットの世界では、知的な生産物を電気代だけでつくっているのですから、地球にも優しい"ロハス的"な仕事ですよね。いまエンジニアたちが考えていることは、面白くてワクワクするような立派なものづくりです。人を感動させられるサービスもあるだろうし、交通機関以上に人の心をつないでコミュニティをつくれるサービスもあります。まだいろいろなアイディアがたくさんあるわけですから、若い人たちは、勇気と元気をもってチャレンジしてもらいたいですね」
――-Web2.0云々の前に、神田さんは傍観者ではなく、ご自身で実践していらっしゃいます。たとえば会員制のソーシャルネットワーキング「dotBAR(http://www.knn.com/dotbar/)」もそうですね。
実践というよりも単に好きだからやっているんですけれども(笑)。"dotBAR"についていえば、もともと東京にオフィスを構えるにあたって、オフィス兼バーのようなものがあればと考えていました。いろいろな物件を探していて、丁度よい物件が見つかったので、mixiでオーナーを募集して始めてみたのがきっかけです。20人ぐらいオーナーがいれば資金はなんとかなりそうだと思いました。SNSはネット上での世界ですが、こういうバーならリアルな世界でオフ会ができるわけです。もちろん、お酒を飲みながらプレゼンをしたり、ちょっとしたイベントなどもできます。
これからは、コンシューマーが変わり、企業が変わり、さらに社会が変わっていくことで、新しいビジネスのネタも無限大に可能性が広がっていくと思います。志向の似ている人たちとの知識や経験、業務の共有など、後々になっても1つの資産として使えるような共有文化が出てきています。Webの世界だけにとどまらず、"人間3.0"のような形で、人間の能力が拡大していく方向に向かっている気がしています。ですから、これからWeb2.0の先に、どのような未来が見えてくるのか? そして自分たちの生活やビジネスがどのように変わっていくか? そういう視点に立って、今回の"Web2.0でビジネスが変わる"という本を執筆しました。いま現在進行形で起きているWeb2.0による大きな変化と可能性を肌で感じてもらって、さらに実体験する"きっかけ"にしていただければ、とても嬉しいです。
[*4]民衆や大衆を表す"フォーク"と、分類学を表す"タクソノミー"を組み合わせた造語。ユーザーの主観でタグ付けして分類することで、同じタグが付いた他のコンテンツとの関連付けができる。フォークソノミーを応用した代表的なサービスとしては、タグ検索サービス、ソーシャルブックマーク、SNS、写真共有サービス、地図情報サービスなどがある
Web2.0でビジネスが変わる Web2.0という大きなトレンドの中で、現在スタンダードとされているビジネスモデルがいかにして変貌してゆくのか? Webメディアを中心に活躍する気鋭のビデオジャーナリストが、「マスから個」の流れを軸に、現在そして未来を展望する。 |
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