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- 2023/06/14 掲載
ホントに消費者は“安さ”で選ぶ? なか卯・サイゼリヤ「値上げしない路線」の驚きの結末
【連載】流通戦国時代を読み解く
業界に衝撃? なか卯「値下げ」の狙い
今年度も値上げのニュースが相次ぐ中、2023年4月に「なか卯」が親子丼(並盛)の価格を490円から450円に値下げを行い、大きな話題となった。原材料、人件費ともに高騰が続く中で、鳥インフルエンザの影響により鶏卵不足が深刻化し、卵の価格は歴史的な高値を記録している時期であり、親子丼の原価も当然上昇している。また、牛丼チェーン大手「吉野家」が鶏卵不足から親子丼の販売を見送ったというニュースと対比されたこともあり、なか卯のこの「異例の値下げ」はおおいに注目を集めた。
なか卯にとっても親子丼を値下げできるような環境ではなかったが、あえて値下げに踏み切ったのは、こうした注目を集めるための広告宣伝効果を狙ったものであり、まさにその目的は達せられたと言って良いのだろう。
店舗数、知名度いずれをとっても、吉野家などをはじめとした丼ものを扱うチェーン店に比べて大きな差をつけられているなか卯は、業界ではチャレンジャー的立ち位置にある。卵を使った商品を展開する競合が値上げやメニュー改定に踏み切らざるを得ない今こそ、値下げという話題性で来店客数を増やそう、という作戦だという報道もあったが、まさにそのとおりだろう。
また、なか卯にとって親子丼は看板商品の1つであり、卵の調達力においても十分に余裕があることを強みとして、品薄の今こそ、その味を消費者のお試しいただくチャンスと考えたのであろう
なか卯に限らず、競合他社が値上げに踏み切る中、価格を据え置く企業がある。ここからは、同じ価格据置の戦略をとるサイゼリヤ、セリア、イオンの異なる結末を解説したい。
すかいらーくに真向勝負、サイゼリヤ「価格据置」の結末
外食では、ファミレス最強と言われるサイゼリヤも価格据置を堅持し続けている。値上げラッシュで消費者が困っている中、値上げする訳にはいかないとするサイゼリヤの業績は、2023年度8月期2Qの国内売上、客数、客単価は、順調な回復を見せており、コロナ前の2019年同期比売上97.1%、客数89.5%、客単価108.4%となっている。価格据置としているのだが、客単価の引上げに成功しており、2023年通期では既存店売上でコロナ前の98.2%までの回復を見込んでいる。ファミレス最大手すかいらーくの売上がコロナ前比81%水準の回復にとどまっていることを考えれば、十分好調だと言って良いだろう。
サイゼリヤは、全体の1/3を占めるようになった海外売上の円安効果などもあり、通期全体業績では売上1,772億円(前期比122%)、営業利益61億円(前期比1442%)で着地する見込みである。さらに言えば、正社員プラス5.18%、アルバイトはプラス5.35%の賃金総額引上げも実現させた上での見込であり、賃上げを伴った価格据置の戦略は成功している、と言って良いのだろう(図表1)。 【次ページ】値上げ路線ダイソーに勝てる?セリア「価格据置」の結末
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