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- 2023/04/28 掲載
どうなるアリババ「6分割」改革はうまくいく? 決算書に隠された深刻課題、生き残る事業は
アリババ創業以来の大改革、新体制「1+6+N」とは
3月28日、アリババの張勇(ジャン・ヨン、ダニエル・チャン)CEOは、アリババの組織改革を行い、1+6+N体制にすると発表した。1はホールディングにあたる本部であり、6つの事業部を独立させ適切な時期に分社化し、株式上場を目指す。Nはその他もともと独立事業体になっていた事業体を指す。つまり、主要6事業を一気に独り立ちさせるという内容だ。これはアリババ創業以来最大の組織改革となる。市場は好感し、香港市場での株価は10%以上上昇した。しかし、独り立ちをすることになった6人の子どもたちは、全員が健康優良児とは言えず、株式上場までの道は険しい。「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」改革であると見る人もいて、谷から這い上がれない子どもも出てくる可能性もある。そのようなリスクまで覚悟した思い切った改革であると言える。
このような分社化に至ったのには、アリババが過去、分離をして成長してきた強烈な成功体験があるからだ。
分社化のメリットは? 過去にあった「分離」の成功体験
アリババの核心となる事業は、2003年5月にスタートしたEC「淘宝網」(タオバオ)だ。SARS(サーズ)の感染拡大により外出自粛が続く状況の中で、創業者の馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)氏はEC事業に参入する絶好の機会と考え、わずか1カ月半でシステム開発を行い、タオバオをスタートさせた。
前年、米EC大手のeBayが中国市場に本格参入していたため、タオバオは「出店料無料、販売手数料無料」を打ち出して、eBayの出品業者を奪った。しかし、無料ポリシーのままではアリババは収益を出しようがない。困り果てたジャック・マー氏は2010年に、タオバオを「タオバオ」と「タオバオ商城」に分離し、独立運営体制に変えた。
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また、2013年には、もともとタオバオ内だけで通用するポイント制度であった支付宝(アリペイ)が対面決済事業を始める際、アリペイを分社化し、のちのアントグループが生まれた。アリペイは、対面決済を強力に進め、ポイント投資サービス「余額宝」(ユアバオ)などのキラーサービスを生み出し、アリペイは一気に普及し、中国社会をも変えるほどの影響力を持つようになっている。
分社化することで、自律的な決断ができるようになり、業務スピードが上がる。他社との提携もしやすくなる。さらに、社員持株制度が充実しているアリババでは、従業員が株式を保有し、当事者意識を持って業務にあたるようになる。全員で上場を目指して一丸になれる。
アリババは1+6+N体制で、このような刺激を全社員に与えようとしている。 【次ページ】財務報告書からわかる、「EC依存ぶり」と「改革のヤバさ」
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