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EC業界はコロナ禍による非接触を追い風に、市場規模が大きく拡大しました。そのEC拡大を陰で支えている事業者がいます。それが物流事業者です。中でも宅配は、EC事業者と利用者を商品の配達を通してつないでいるという重要な役割を担っています。EC拡大によって物流ニーズも増加した一方で、労働者負担の増加や不効率な輸送などネガティブな影響も受けています。なぜ物流環境は悪化するのでしょうか、それによって何が起きるのでしょうか。今回はECを支える物流事業者の光と影に迫ります。
意外と知らない宅配便の定義
ECで注文を受けた商品を届ける手段に「宅配便」があります。身近に使用できる宅配便ですが、そもそもどのような輸送手段なのでしょうか。「EC利用時に荷物を届けてくれる便のこと」「ヤマト運輸が届けてくれる荷物のこと」などの回答が想像できますが、どれも間違っていません。物流事業者によって条件が異なる場合もありますが、一般的な宅配便の定義は以下の通りです。
(1)重量が30キロ以下
たとえば2リットルのミネラルウォーターが6本入った商品を注文すると、単純計算で1箱あたりの重さは約12キロです。このことから、1箱あたり30キロというのがいかに重たい荷物かというのが想像できるのではないでしょうか。
(2)縦・横・高さの合計サイズが160センチ以内
160センチと聞いてもピンとこない方も多いかと思いますが、荷物サイズのイメージとしては図1のようになります。上限である160センチがいかに大きいかがお分かりになることでしょう。
宅配荷物は、荷物のサイズもしくは重量の「大きい・重い」どちらかを採用し運賃が決定されます。ECを利用して商品を注文する際、同じサイズの荷物でも、飲料や米など重いものであれば140センチ以内の荷物として届きますが、そのほかの場合は120センチ以内の荷物として届くことが大半ではないでしょうか。
(3)荷物1個あたりに運賃が加算される
ECで商品を注文すると、1箱で届けられることが大半でしょう。宅配便は1箱あたりのサイズに応じた運賃が適用されます。たとえば、実家のご両親が一人暮らしの家族の元へ荷物を送る際、段ボール箱が2個になると、運賃は2箱それぞれに発生します。
売上増加を超越する「負の影響」とは
宅配便の定義を踏まえると、宅配便は人の手で持ち運びできる小口輸送です。ECの拡大によって宅配便貨物の数が増加していますが、日本国内における貨物輸送量と比較すると興味深い結果を見ることができます(図2)。
まず過去10年間、宅配便の取り扱い個数は右肩上がりで増えていますが、これにより宅配事業者の売上も増加傾向にあります。
しかし、貨物輸送量(重量)としては、ゆるやかな減少傾向になっています。このことから、荷物が小口化されていることが読み取れます。小口化の傾向は宅配荷物の増加も要因ですが、それだけではありません。BtoBの貨物においても、小口化が進んでいます。
発注側の企業は昨今、大量に仕入れて在庫するのではなく、必要な分だけを必要な時に発注する傾向にあります。理由としては、保管スペースの確保や、商品の在庫管理の手間軽減、商品ロスの削減などが挙げられます。
現状のように小口化が進み宅配個数が増えることは、同じ貨物量でも配送の回数が増えることになります。これが非効率な配送の原因となり、物流事業者のコストや労働者負担の増加につながっているのです。私たちの生活においてECはなくてはならない存在となりましたが、便利さを求めるが故の弊害が物流事業者への負担につながっています。
【次ページ】ECと物流に迫る「最悪の事態」、防止する方法は?
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