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- 2022/10/13 掲載
なぜアドビは「超破格」でFigmaを買収したのか? その背景とデザイン市場への波紋
アドビ、200億ドルでFigma買収へ
マイクロソフトのリンクトイン買収(買収額262億ドル)、フェイスブックのWhatsApp買収(220億ドル)、セールスフォースのSlack買収(277億ドル)など、テック大手による大型買収で200億ドル(約2.9兆円)を超えた案件は少ないながら、いくつか存在している。ここにアドビによるFigma買収が加わることになりそうだ。買収額は、200億ドル。
アドビは、動画編集ソフトウェアやデザインソフトウェアなど、クリエイティブプラットフォームやデジタルマーケティングソフトウェアを提供するテック企業。現時点の時価総額は1,339億ドル(約19兆円)。
一方Figmaは、Webサイトやアプリなどのプロトタイプのインターフェースを共同でデザインできるプラットフォームを提供するスタートアップ。デザイナーだけでなく、エンジニア、エンドユーザーが同じ画面上でデザインや機能の改善を議論できる。Dropbox、Slack、Twitterなど大手企業を含め400万人のユーザーを抱える。日本でも楽天やヤフー、リクルートなどの大手企業が活用しており、3月には日本法人を設立したばかり。最新の評価額は100億ドルだ。
アドビが提示している買収額は、Figmaの評価額の2倍、また収益の50倍と一般的な評価を大幅に超える額となっており、米国ではこの買収額に対してさまざまな意見が噴出している。
また、今回の買収を機にテック大手によるデザイン系スタートアップ買収が増える可能性も指摘されており、多方面に波紋を呼ぶことになりそうだ。
買収に関するファクト
アドビのFigma買収報道ではさまざまな情報が入り乱れている。ここでアドビが2022年9月15日に発表した公式情報で買収のファクトを確認しておきたい。アドビの公式情報によると、買収額は200億ドルで、支払いは現金と株式がおおむね50%ずつ。当局による承認を待ち、2023年に買収が完了する見込みだ。
このアドビの資料には、Figmaの最新情報もまとめられている。
Figmaは2012年にディラン・フィールドCEOとエバン・ウォレス氏が立ち上げたサンフランシスコを本拠地とするスタートアップ。社員数は約850人。
Figmaの年間経常収益(ARR)は、2022年に前年比で2億ドル増加し4億ドルに達すると予想されている。また同社が事業展開するデザインコラボレーション分野の「獲得可能な最大市場規模(TAM)」は165億ドル(約24兆円)に上るという。
【次ページ】破格の買収額が提示された背景
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