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- 2022/07/20 掲載
IBMやリンクトインが相次ぎ導入、「徒弟制度」による人材育成とは何か
年々上がるテック人材獲得の難易度
英語圏、欧米のメディアでは「talent shortage(人材不足)」という言葉がこの数年ビジネス上の大きな課題として取り上げられているが、いまだ改善の兆候はみられない。国際的な人材会社マンパワーグループがこのほど発表した最新調査(2022年版)では、人材不足はむしろ悪化していることが明らかになっている。この調査は、40カ国・地域の企業4万社以上から聞き取りを行ったもので、グローバル市場の現状が反映されたものだ。
調査対象となった企業のうち、人材を見つけることが難しいと回答した企業の割合が75%に上り、この16年で最高値を記録したことが判明した。この割合、2009年は30%にとどまるものだったが、2015年に38%、2018年に45%、2019年に54%、そして2021年に69%、2022年には75%と上昇が止まらない状況となっている。
どの分野の人材を見つけることが困難かという質問に対して、トップ5には1位「IT&データ」、2位「営業・マーケティング」、3位「オペレーション・物流」、4位「製造・プロダクション」、5位「顧客対応・フロントオフィス」がランクイン。深刻化が著しいといわれる「テック人材不足」が示された格好だ。
一方、Udacityの調査では、テック人材不足によってどのような問題が起こっているのかが明らかになっている。米国、英国、フランス、ドイツの4カ国の企業を対象としたこの調査では、46%が適切なテックスキルを持つ人材が不足していることが原因となりプロジェクトに遅れが生じたと回答。また、主要プロジェクトの遂行が困難であるとの回答割合も42%に上る状況となっている。
アプレンティスシップ(徒弟制度)とは何か
悪化の一途をたどるテック人材不足問題に対し、今米国ではテック企業を中心に「アプレンティスシップ(徒弟制度)」を通じたテック人材育成の動きが活発化している。徒弟制度とは主に職人の育成を目的とするもので、日本だけでなく、米国や欧州でも古くから似たような制度が存在する。細かい部分では異なるところが多いが、業務に従事させながら職人の初期レベルの技能を育成するという点で共通するものだ。
このアプレンティスシップをテクノロジー分野の人材育成にも応用し、人材不足問題を乗り切ろうという企業がこのところ急速に増加している。
たとえば、民泊大手エアビーアンドビーは2022年4月、科学・テクノロジー教育団体Kapor Centerとの提携により「Connect Software Engineering Apprenticeship」プログラムを開始。
6カ月間のプログラムで、参加者はフルタイムで給与を得ながら働き、同社のエントリーレベルのソフトウェアエンジニアリング職に必要なスキルを習得していく。独学レベルの基礎的なコーディングスキルが必須となるが、前職におけるテクノロジー関連の経験やコンピューター・サイエンス学位は必要ない。プログラム修了後の評価次第で、参加者はエアビーの正式なエントリーレベル・ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを開始することが可能という。
マイクロソフト傘下のリンクトインでも独自に「REACH」というテック人材アプレンティスシップ・プログラムを実施している。
REACHは、職によって1~5年を要するプログラム。正社員として働きながら、職務時間の20%を技能習得に充て、テックスキルを獲得していく。現時点では、米国限定のプログラムとなっている。
REACHでは、アプレンティスレベルが上がると、それに応じて習得技能の難度が上がる仕組みだ。たとえば、初期レベルでは、テックサービスアナリスト、テックトレーナー、テックライターといった職が用意されている。ここからアプレンティスレベルがもう1段階上がると、職もデータサイエンティスト、バックエンドエンジニア、AIエンジニアなどにレベルアップする。
このほか、グーグル、IBM、マイクロソフト、アクセンチュア、ピンタレストなど名だたるテック企業が「アプレンティス」の名を冠したプログラムを導入し、テック人材の育成に乗り出している。
【次ページ】米国政府も全面支援?
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