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  • 2022/07/28 掲載

DMBOKとは何か? データガバナンスに必要な知識体系の中身とは

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GAFAMを例に出すまでもなく、企業におけるデータ利活用拡大の流れは今後さらに加速していくだろう。日本でも2016年から官民データ活用推進基本法が制定されるなど、官民問わず従来型のデータマネジメントの枠を超えたプロセスやシステムを整備する潮流がある。データマネジメントの複雑化に対応する際に参考にしたいのが、DMBOKのような「網羅的フレームワーク」だ。データマネジメントに関する知識を体系立ててまとめた「データマネジメント知識体系ガイド」であるDMBOKについて解説する。
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DMBOKとは何か?

DMBOKとは何か?

 DMBOKとは、Data Management Body Of Knowledge の略で、「データマネジメント知識体系ガイド」と訳されている。DMBOKにおいてデータマネジメントとは、「データとインフォメーションという資産の価値を提供し、管理し、守り、高めるために、それらのライフサイクルを通して計画、方針、スケジュール、手順などを開発、実施、監督すること」と定義されており、若干乱暴にまとめるならばDMBOKとは「データ活用の教科書」といえよう。

 DMBOKは初版が2009年に出版され、その第2版が2017年に出版されている。第2版では、ビッグデータをはじめとした技術革新や、データマネジメント分野における発展に併せて大幅な拡張が行われている。

 また、DMBOK第2版には日本語版もあり、600ページを超える大著となっている。データマネジメントという非常に広範な分野に対して、体系的な知識を得ることができる書籍となっている。

 DMBOKは、世界80カ国に支部を持つデータ専門家のための非営利団体DAMA(Data Management Association International)により作成されている。DAMAには日本支部も存在し、DMBOK解説セミナーの実施などデータマネジメントの普及活動や、データマネジメントに携わる方々に交流の場を提供している。

DMBOKが注目される背景

 DMBOKが注目されるようになった背景として、企業活動におけるデータ利活用の拡大が挙げられる。たとえば、業務部門やグループ企業を横断したデータを共有する既存業務の効率化や新規事業開発といった取り組みは、多くの企業において推進されている。

 また、SNSやオープンデータといった外部のビッグデータ活用、IoTによる収集データ増加や画像・音声といった非構造データの取扱い増加もあり、管理が必要なデータの多様化も急速に進んでいる状況にある。

 データ利活用が企業活動にとって重要であることに異論はないと思われるが、ではなぜデータマネジメントが注目されるのか?また、企業活動に必要な他資産の管理と何が異なるのか? 

 これらの点について、DMBOKで述べられているデータの特徴を踏まえながら整理しよう。

DMBOKで述べられているデータ「5つの特徴」

 DMBOKで述べられているデータの特徴を踏まえると以下の5つに整理できる。

  • データは使用してもなくならない
    同時に1カ所にしか存在できない物理的な資産に対し、データは簡単にコピーすることもできるし、盗まれてもなくなることはなく、同じデータを同じ時間に複数人が利用することもできる。このことは、データの金銭的な価値を計ることを難しくしているのと同時に、データの管理を難しくしている。
  • データの価値は状況によって異なる
    発生コストと享受できる恩恵の差を価値と定義する場合、金融資産における価値の計算は比較的容易で、取得時の価格と売却時の価格の差を見ればよい。しかし、データ資産の場合は、取得や管理に必要なコストと、データによる恩恵両方を統一的に計算する基準がないことが、管理を難しくしている。極端な場合、昨日には価値があったデータが今日は価値がなくなるという状況があり得る。
  • 品質の低いデータにはコストがかかる
    物理的資産と比較して、データは目に見えず、複製も容易であることから、品質の維持がとても難しい。品質の疑わしいデータを基にして作成されたアウトプットは、時として誤った意思決定を促し、場合によっては企業そのものへの信頼を失わせる。一度失った信頼を取り戻すには多大なコストを支払う必要がある。
  • データの管理にはメタデータが必要
    データは目に見えず、触れることもできないため、データの内容と使い方を正しく共有するためには、その資産自体に関する情報、すなわちメタデータが必要となる。
  • データは価値だけでなくリスクも生む
    データを保持すること自体にもリスクを含んでいる。たとえば、法規制という観点では、個人情報保護法やいわゆる日本版SOX法をはじめとして、データの取扱いの正確性や妥当性、機密性の確保を求められており、違反した場合は大きな罰則が科せられる。また、消費者は自らの情報がどのように扱われているかをより強く意識するようになっており、法律違反でなくとも不適切な取扱いがなされていると感じた場合、対象企業の製品購入を控えるといった行動が想定される。

 このように、データの取扱いは物理的な資産と異なる点が多数あり、扱いには高度な専門性が求められる。また、データは多数の部門間、企業間で流通するものであり、効率的な連携には共通言語が必要となる。

 DMBOKには、体系的知識を得るための教科書と、ステークホルダー間の共通言語という2つの役割が期待されていると考えられる。

DMBOKに基づくデータマネジメントとは

 この章では、DMBOKの内容に触れていく。DMBOKでは、データマネジメントの概念を11の知識領域に整理・分解し、人材・プロセス・技術を活用して目的を達成するための「アクティビティー」とその「成果物」を整理している。

 「DAMAホイール図」は、DMBOK知識領域を示している。10の知識領域を外周に配し、中心に「データガバナンス」を据えている。

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図1:DAMAホイール図
(DMBOK資料を基にEY作成)

 DMBOKでは各知識領域について、それぞれ数十ページを割いて網羅的に解説を行っている(図2)。ビジネス上の意義や本質的な概念といった抽象的な内容から、目的の達成に向けて必要となるアクティビティーやツール、その技法や使われる用語といった具体的な内容まで幅広く解説が行われている。

 その一方、具体的な製品名やその使用方法のベストプラクティスについてはガイドの性質上記載されていないため、実装していく局面では製品ベンダーなどの協力を得ながら検討を進める必要がある。

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図2:DMBOK 11の知識領域

【次ページ】DMBOKでのデータマネジメントを進めるポイントとは?
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