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AIが画像に写った物体を認識したり、会話を読み取ったりできることは、広く知られるようになった。さらに今では人間の表情から感情を読み取ることができるようになったといわれており、今後、ビデオ会議商談などに導入される可能性が高まっている。一方、感情を読み取るAIの活用は過剰な監視やプライバシー侵害につながるとの批判の声も上がっている。
進化するAI、感情分析が可能に?
これまでAI関連のニュース報道では、画像認識や音声認識に関するものが多かったが、AIの進化に伴い、今後は感情分析AIに関する報道や議論が増えてきそうだ。
米国では最近、オンライン会議システム上で機能する感情分析AIが相次いで登場し、議論の的になっている。
たとえば、シリコンバレーのスタートアップ
Uniphore は2022年3月1日、商談支援を目的とする感情分析AI
「Q for Sales」 を発表。コンピュータービジョン、トーナル分析、会話分析、自然言語処理などを利用した感情分析AIであり、 商談相手の表情などから感情を読み取り、商談成功率を高めるという。
同社は、このツールを発表した背景として、コロナ禍で多くの商談がビデオ会議でなされるようになったことを挙げている。コロナ前、B2Bの営業は61%が直接会って実施されていたが、今では66%がビデオ会議上で行われているという。
直接会っての商談では、相手のちょっとした表情やしぐさの変化などから「空気を読む」ことが可能だったが、ビデオ会議上ではそれが難しくなっている。同社は、AIによってこの「空気を読む」ことを、ビデオ会議上でも可能にしようとしている。
ただし、この感情分析AIは分析のためビデオ会議の状況を録画することが必須で、録画の許可を商談相手に求めなければならない。そうなると、相手が身構えてしまい、AIによる感情分析を難しくしてしまうリスクもある。
米新興テックメディアのProtocolは、Basis Technologiesのグレース・ブリスコー氏の意見として、録画を開始するという合図が発せられると、人々は身構えてしまうのが一般的であり、録画されることや分析されること自体を不快に思う人も多く、期待するような関係構築が難しくなる可能性を
指摘している 。
また金融サービスなどのセンシティブな分野では、商談の録画を嫌う人が多くなる可能性が指摘されている。
各社が進める感情分析AIの開発
商談向けの感情分析AIを開発しているのは、Uniphoreだけではない。
Sybill は、Uniphoreの直接的な競合と目される米スタートアップだ。ボディーランゲージから商談相手の関心度合いを測るAIを開発している。
広く利用されているZoom上で使用できるAIで、ビデオ会議中、商談相手の関心度合いの変動を分析、どの発言、どのスライドで関心度が高まったのかを示してくれる。
またZoomも自社で同様のAIを開発していることが報じられている。
このニュースの第一報を伝えたのは、前出のメディア
Protocolの記事 だ。
同記事によると、Zoomは「Zoom IQ for Sales」と呼ばれる新機能の開発を進めている。この新機能は、商談ビデオ会議の終了時に、議事録の自動作成と商談相手の感情分析をレポートにまとめてくれる。Zoomが独自に開発しており、セールスフォースのシステムにも統合できるものだという。
商談以外の場面を想定した感情分析AIの開発も進められている。授業に特化した感情分析AIを共同で開発しているのがインテルとClassroom Technologiesだ。
Protocolの4月17日の報道 によると、この2社は、Classroom Technologiesが提供するオンライン授業ツール「Class」に統合することを想定した感情分析AIの開発を進めている。Classは、Zoom上で機能するオンライン授業ツール。開発中のAIは、生徒の表情から授業に対する集中度合いや理解の有無などを分析できるという。現時点では、実証実験段階とのことだ。
【次ページ】ZoomによるAI開発への批判とは?
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