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ロシアによるウクライナ侵攻から2カ月以上となるが、世界経済への影響は日に日に拡大している。欧米とロシアとの対立が特に激しくなる一方で、すでにロシア国内にあるアップルやマクドナルド、スターバックスやIKEAなど、世界的企業は相次いで営業を停止した。欧米の航空会社も本国とロシアを結ぶ国際線フライトを停止し、ロシア上空の飛行を回避するなど対応している。今後、日本企業、日本経済への影響を含め、この問題はどうなっていくのだろうか。
モスクワの外国企業で20万人失業か
欧米とロシアとの対立が激しくなる中で、世界経済への影響が拡大し、すでにロシア国内にある世界的企業は相次いで営業を停止している。モスクワ市長は4月18日、ウクライナ侵攻で欧米を中心にロシアへの経済制裁が強化される中、モスクワ市内の外国企業で働く20万人余りが失業する恐れがあるとの見解を示した。
当然ながら日本企業の間でも懸念する声が広がっている。たとえば、帝国データバンクが4月に発表した企業調査結果(全国2万4561社対象で有効回答が1万1765社)によると、ウクライナ情勢について、「すでにマイナスの影響がある」と回答した企業が全体の21.9%を占めた。以下、「今後マイナスの影響がある」が28.3%、「影響はない」が28.1%、「分からない」が20.7%、「プラスの影響がある」が0.9%と全体の約半数で懸念する声が聞かれた。
また、ロシアに進出する企業に絞れば、ジェトロ(日本貿易振興機構)が3月末に発表した企業統計(ロシアに進出する企業211社のうち回答した97社が対象)によると、半年後から1年後の見通しとして、「撤退」と回答したのが6%に上った。以下、「縮小」が38%、「分からない」が29%、「現状維持」が25%、「拡大」が2%と半数近くの企業が脱ロシアの動きを示した。
2月にもジェトロは同じ調査を実施したが、その時「縮小」と回答した企業が17%だったことから、脱ロシアの動きが日本企業の間で急速に広がっている。
当然ながら、企業によってロシア依存度は異なるので、意見が割れるのは十分に想像がつく。わずかながらも「プラスの影響がある」や「拡大」と回答した企業の中には、ロシア産製品の輸出入が規制されることでむしろ同国の競争力は落ち込み、結果として利益につながると考える企業もあるかもしれない。
しかし、多くの企業が懸念するように、たとえば水産業界ではウニやカニ、サーモンなどロシア産に深く依存する企業も多い。飲食業界では、ロシアが世界最大の小麦輸出国であるため小麦価格の高騰によって、パンやケーキ、麺類など一部で値上げを余儀なくされる企業も見られる。
この紛争が長期化すればするほど、値上げや提供停止、原材料調達国のシフトなど、企業を悩ますケースが増加することは想像に難くない。
「ロシア10%超」「ウクライナ45%超」のマイナス成長
ロシアとウクライナの戦争が続く中、両国の2022年のGDP予想は大きくマイナスに傾く見方が強くなっている。ロシア経済は今年10%以上のマイナス成長になり、1994年以降の約30年間で最悪の下落幅になるとみられ、ウクライナは今年のGDPが前年比45.1%の大幅なマイナス成長になると予想されている。
だが、企業の危機管理という視点から言えば、影響は上記のような数字だけではない。海外に進出する企業にとって、企業利益と同等、もしくはそれ以上に重視しなければならないことに、派遣した駐在員(帯同家族を含む)の安全・保護がある。
今回のウクライナ紛争は単に価格高騰だけでなく、治安の面でのリスクも内在している。たとえば、国際政治や安全保障の分野ではすでに2つのことが懸念されている。
【次ページ】世界の駐在員の安全を脅かす「2つのリスク」
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