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  • 2021/12/03 掲載

「DX実践手引書 ITシステム構築編」とは? DXへの“技術的支援”を担う指南書の中身

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企業における「デジタルトランスフォーメーション(DX)」重要性についての認知は高まっているものの、DXを推進できるレベルに達していない企業が多いのが現状だ。情報処理推進機構(IPA)が2021年6月に公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2020年版)」によると、DX先行企業の割合は倍増したものの、全社戦略に基づく部門横断的なDXを推進できるレベルに達していない企業が約9割であるという。そうした中、IPAは2021年11月16日、DX未着手・途上企業の担当者向けの「DX実践手引書 ITシステム構築編」を公表した。企業のDX実現を技術的側面で支援する同書に関して、今回は特に重要な位置づけを占める「データ活用」に焦点をあて、同書の内容を解説する。

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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「DX実践手引書 ITシステム構築編」とは何か?
(Photo/Getty Images)
 

「DX実践手引書 ITシステム構築編」とは何か?

 「DX実践手引書 ITシステム構築編」は、情報処理推進機構(IPA)が提供している、これからDXに取り組み始める、もしくは取り組みの途中にある担当者向けのITシステム構築の指南書だ。

 DX実現に向けたITシステムのあるべき姿と、その技術要素を紹介することで、DX推進担当者が自社のITシステムをどのように変えるべきかについての検討を支援することが目的だ。

 同書は全3章で構成。第1章は「DXを実現するための考え方」として、技術を扱う以前に必要となるDXの位置づけや目的、その考え方を改めて示している。

 次に第2章では「DXを実現するためのITシステムのあるべき姿」をテーマとして「社会最適」「データ活用」「スピード・アジリティ」の3要素を示し、それらの特徴を解説。

 さらに第3章では、DXの目的やITシステムのあるべき姿に対する具体的な技術的アプローチとして「データ活用」「マイクロサービス」「現行システムからの段階的移行の方法論」に関する考慮点や事例などをそれぞれ紹介している。

 そもそもIPAは日本企業のDX推進を目指し、DX推進指標の収集・分析業務を担っている。2021年9月には各企業が自社のITシステムを詳細に評価するための指標「プラットフォームデジタル化指標」評価表を公開し、DXにおける現状把握のための資料やツールを広く提供しており、「DX実践手引書 ITシステム構築編」もこの1つということになる。

「全社的にビジョンを共有する」ことがDXの起点に

 「DX実践手引書 ITシステム構築編」の第1章では「DXを実践する第一歩は、社内の幹部を巻き込んで、組織の将来像・ビジョンを徹底的に議論する」ことだと説いている。また、デジタル活用を踏まえて、10年、20年先のビジョンを掲げて、全社的に共有することがDXの起点となるという。

 DXの実践を支える人材「デジタル人材」についても言及。同書によると、デジタル人材とは、技術に精通している人材を指すわけではなく、事業や組織を深く理解し、そこにデジタルを組み合わせてどのような未来を描くのかを共有し、対話・議論ができる人材であると捉えている。加えて、事業推進者として経営層との対話が求められると説く。

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ヤタガラス人材のイメージ
(出典:IPA「DX実践手引書 ITシステム構築編」)
 IPAでは、同手引書を作成するにあたってDX先進事例の調査を実施。先進事例で多いのは、事業・技術・経営の3つの観点に通じ、リーダシップを発揮できる「ヤタガラス(八咫烏)人材」だという。こうした人材が中心となり、DXの方向性や開発推進、事業適用を牽引するケースが多かったのだ。

 たとえば、経営の言葉で経営者を説得し、事業の言葉で事業部門を巻き込み、技術の言葉で開発メンバーと実現可能性の議論ができる。そのような人材がいることで、スムーズにDXプロジェクトを立案・推進が可能になるという。ただ、このヤタガラス人材は圧倒的に不足しているのが現状であり、外部からの採用だけではなく、DXプロジェクトに巻き込むなどの人材育成が重要だと説明されている。

「データ活用基盤を中心とするデータ活用の流れ」も解説

 「DX実践手引書 ITシステム構築編」の第2章では「DXを実現するためのITシステムのあるべき姿」として、「社会最適」「データ活用」「スピード・アジリティ」の3要素があることを紹介。その中で、事業環境の変化に俊敏に適応するためには、ビジネス上のニーズに合致するデータ活用と分析がより一層重要だと記している。

 社内外のさまざまなデータを収集・整理・蓄積し、周辺システムに提供するプロセスにおいて、データの分析や新しいサービスへのデータの活用に柔軟にかつ俊敏に対応できることが鍵となるという。そのイメージとして、同書では「データ活用基盤を中心とするデータ活用の流れ」が図式化されている。

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データ活用基盤を中心としてデータ活用の流れ
(出典:IPA「DX実践手引書 ITシステム構築編」)

 この図から分かることは、データ活用基盤ではAPIなどの疎結合な連携を実現する方法を採用し、さまざまなデータを活用しやすい環境を構築することが重要だという点だ。これにより、データドリブンな意思決定や業務プロセスが実現できる素地ができる。

 また、データ活用における重要な点は、どのようなビジネス、用途に利用するのか、データを活用する目的を定めた上で、バックキャストによってプロセスを検討することが必要となる。

【次ページ】DXを実現するITシステムと技術要素群の全体像「スサノオ・フレームワーク」

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