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- 2021/08/24 掲載
社員が勉強しないのは人事のせい?「ルーティン人材」8割の国内企業が変わるには
2020年後半から、深刻な「デジタル人材」不足が起こる
「今後AIやロボットなどのデジタル技術は普及が進むはず。テクノロジーが普及すれば、事務や生産・輸送・建設分野の業務は自動化され、人材が供給過多になるはずです。一方で、人材供給の不均衡が起こり、技術革新をリードする『デジタル技術の専門職』では十分な需要を満たせなくなる、と予測しています」(武田氏)
この変化を加速させているのは、コロナ禍で起きた「デジタル変革の前倒し」だ。欧米諸国に比べて日本はデジタル化に遅れていたが、新型コロナの感染拡大が起こり、テレワーク等に対応するため急速にデジタル化が進められている。システム開発やデータ活用を担うデジタル専門職のニーズは今後も増え続けていくだろう。
しかしながら、人材は一朝一夕で育つものではなく、ビジネスに必要なスキルを習得するためにはそれなりの期間とコストがかかる。現在も優秀なデジタル技術者は各社で取り合いが起きている。
今後、企業はデジタル人材をどのように確保すれば良いのだろうか。対応策として武田氏は「人材ポートフォリオのシフトチェンジ」を提言した。
今後求められる「開発できなくとも、デジタル技術を扱える人材」
「この表は2015年度の国内人材のポートフォリオです。縦軸は『ルーティン業務が多いか否か』、横軸は『マニュアル的なタスクが多い』『分析的なタスクが多い』に分けて、職種と就業者数を分類しました。
表を見ると、国内労働者の8割は製造員や事務員など『ルーティンワークが多い仕事』に従事しています。今後は技術職や営業職など『ノンルーティン的な仕事』へのシフトチェンジが必要だと考えています。
今後、AIやロボット技術が普及すれば、ルーティンワークの自動化が始まり、労働者は接客やコミュニケーションなど、人にしか担えない仕事に従事できるようになります。
職場には従業員をサポートするAIやロボットがごく当たり前に存在するようになるでしょう。プログラムを開発できなくとも、スマホやアプリを扱うように、先進的なデジタル技術を使う技能が求められるようになります」(武田氏)
現在進行形で、ビジネスの現場にはAIが急速に普及している。昨今はプログラミング言語を使わず直感的にシステムが組める「ビジュアルプログラミング」が登場し、小中高の教育機関ではプログラミング教育が始まった。今後はエクセルやワードを扱うように、AIやプログラミングを扱うスキルが求められるはずだ。
ノンルーティン的な仕事に対応できる人材を増やし、国内人材ポートフォリオをシフトチェンジするためにはどのような施策が必要なのか。武田氏は「生涯学習」がカギになると話す。
ノンルーティン的な仕事の就業者が多い、米国・イギリス
なぜ「生涯学習」が必要なのか? 実は、先ほど紹介した「人材ポートフォリオのグラフ」には、米国やイギリスを対象にした調査がある。日本と比較すると、米国やイギリスではノンルーティン的な仕事に従事する人が多いことが分かった。「米国やイギリスでは生涯学習が普及していて、大学に入学して学び直す社会人が一定数います。彼らは技術や文化の変化をキャッチアップして、ノンルーティン的な仕事へキャリアチェンジしていく。社会人になっても学び直す文化は、日本も見習うべきだと思います」(武田氏)
現代は「人生100年時代」と呼ばれ、生涯の就労期間が長くなった。ライフステージに応じて、仕事を見直す人材も増えていくだろう。
昨今では、オンラインで大学の講義が受けられるようになり、通信教育の門戸を開く大学も増えてきた。海外ではVRでオンライン留学を受け付けている大学もあるという。今後、日本に生涯学習の文化が普及すれば、人材ポートフォリオにも変化が生じるだろう。
しかしながら、「生涯学習」はなかなか実現しづらい。日本では学び直しをする場合、多くの人が退職を選んでいる。再就職の保証はないので、これをデメリットと捉え、学び直しを諦めてしまう人もいる。仕事をしながら学校に通う手もあるが、ハードルは高い。
人材の学び直しを推進するために企業は何を心がければ良いのだろうか。この答えとして、武田氏は「FLAPサイクル」を紹介した。
【次ページ】企業が主導して「FLAPサイクル」を回す
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