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  • 2020/10/14 掲載

デジタル庁発足の課題を解説、IT行政の一元化を阻む「各省の思惑」とは?

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菅新政権の目玉政策であるデジタル庁の創設に大きな注目が集まっている。IT化の遅れは、日本経済が長期低迷に陥っている原因の1つであり、政府が率先してデジタル化を推進すれば波及効果は大きいだろう。だが、新しい役所の創設は各省の権益に関わることであり簡単ではない。デジタル庁の創設をスムーズに実現するには何が必要なのか考察する。
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菅内閣発足から一夜明け、就任の記者会見でデジタル庁などについて語る平井卓也デジタル担当相=内閣府で2020年9月17日午後4時7分、手塚耕一郎撮影
(Photo/毎日新聞社/アフロ)

IT関連政策はバラバラに行われている

 デジタル庁については、菅氏が就任後初の記者会見で創設を明言するなど、菅新政権における最大の目玉政策となっている。デジタル庁創設の業務を統括するデジタル改革大臣には、自民党きってのIT通と言われる平井卓也元IT担当大臣を充てるなど、その本気度がうかがえる。

 新しく設立されるデジタル庁がどのような役割を果たすのか現時点では分からないが、「各省に分散しているITの関連政策をとりまとめ、(IT政策を)強力に推進する」と菅氏自身が述べていることなどから、縦割りになっているIT業務の一本化を目指していると考えられる。

 ITに限った話ではないが、日本の役所はすべてが縦割り組織になっている。今回、改革の対象となったIT関連業務についても二重行政、三重行政になっているとの指摘は多い。民間も含めたIT振興策の立案は経済産業省(商務情報政策局)の所管だが、総務省にも似たような業務を行う部署(情報流通行政局)がある。経産省はIT事業、総務省は通信事業という軸足の違いはあるが、両者は限りなく一体であり、重複業務も多い。

 行政のデジタル化については、内閣官房に加え、総務省の行政管理局が関係省庁の調整役となっている。マイナンバー制度も行政デジタル化の1つだが、この施策については自治体が管理する住民基本台帳がベースになっているので、所管は総務省の自治行政局である。

 一見すると総務省の所管が多いが、総務省はよく知られているように、旧自治省、旧郵政省、旧総務庁などを統合した組織である。情報流通行政局は旧郵政省、行政管理局は旧総務庁、自治行政局は旧自治省であり、総務省という1つの組織になっているとはいえ、人事も含めて旧組織による縦割りの色彩が濃い。

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日本の役所はすべてが縦割り組織になっており、今回改革の対象となっているIT関連業務についても二重行政、三重行政になっていると指摘されている。改革は実現できるのだろうか
(Photo/Getty Images)

省の中でも縦割りになっている

 霞が関が縦割りになっているというのは、省庁間の話にとどまらない。同じ省の中でも、組織は縦割りになっており、局とその下にブラ下がる各課が1つの単位になっている。

 情報システムの調達もまったく同じで、各課がそれぞれ事業者と交渉してシステムを構築する仕組みである。民間企業で言うところの情報システム部門というのは基本的に霞が関には存在しないので、省の中でITを一括管理する組織はないと思って良い(大臣官房に近い組織があるケースも見受けられるが、民間の情シスのような権限は持っていない)。

 このため、似たようなシステムであっても各省がバラバラに調達するため、コストが高止まりしているという問題が何度も指摘されてきた。公務員は通常、2年程度で異動することが多く、せっかくシステム調達の担当になっても、そのノウハウが組織として蓄積されないという問題もある。

 今回のコロナ危機では、給付金など支援策に関連するシステムが軒並み機能しないという状況に陥ったが、調達の体制が甘いことがその原因となっている可能性は高い。

 IT政策の実施についても、そして情報システムの調達についても縦割り組織が弊害となっているのは明白であり、改善が必要であるというのは以前から共有されてきた問題意識と言って良い。実際、IT政策の一元化や調達の一本化は20年近く前から何度も議論が行われてきた。


 では、なぜこうした議論があったにもかかわらず、IT行政の一元化が進まなかったのだろうか。最大の原因はシステムというのは、各省庁の権益と密接に関係する問題だからである。

【次ページ】システムの問題は、各省の権益と紐付いている?
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