- 会員限定
- 2020/10/23 掲載
レイヤーマスターとは何か? 図と事例でわかりやすくBCG提案フレームワークを解説する
レイヤーマスターの基本コンセプト
「レイヤーマスター」というビジネスモデルは、既存のバリューチェーンを再構築して生産性を高めたり、新たな価値提供の仕組みを考えたりするためにBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が提案したフレームワーク「デコンストラクション」の中の1種です。レイヤーマスターとは、ある産業におけるバリューチェーン内の“特定の業務や機能”に関する活動に特化し、そこでの競争優位を構築する戦略です。“特定の業務や機能”のことを「レイヤー(層)」と呼びます。
レイヤーマスターが特化するレイヤーは、「製造に特化」「販売に特化」など、バリューチェーンの主業務のいずれかになることが多いです。
また、製造や販売といった「業務」ではなく、ある製品において特定の機能を担う「部品」にも、レイヤーマスターが存在します。たとえば、パソコン産業においては、CPU、メモリ、ハードディスク、OS、パソコンの本体(ハード)、アプリケーション・ソフトウェアといった、パソコンに必要な機能を果たす部品が存在しますが、これらの部品のいずれかに特化することでも競争優位を構築できます。
主なレイヤーマスターには、CPUのレイヤーに特化するインテルや、OSに特化するマイクロソフトなどが挙げられます。つまり、レイヤーマスターとは「バリューチェーン内の特定の業務」や「産業内の特定の機能(部品)」に特化することで技術や経験を蓄積し、市場内でのドミナントを形成しようとする企業のことを指します。
- バリューチェーン内の特定レイヤーでの活動に特化し、競争優位を築く方法
- バリューチェーンを分離しやすい業務や産業において成立する
- 同一レイヤー内では、技術やノウハウ、規模などで他社と差別化することが重要
事例1:Foxconn Technology Group
Foxconn Technology Group(フォックスコン)は、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を中核とする企業グループです。フォックスコンが手がけるのは、電子機器を受託生産する「EMS(Electronics ManufacturingService)」と呼ばれるビジネスです。同社は世界中のエレクトロニクス・通信機器メーカーを顧客とし、それらの企業が扱う製品の製造業務を受託しています。たとえば、AppleのiPhoneや、各種メーカーのスマートフォン、タブレット、あるいは任天堂のNintendo SwitchやソニーのPlayStationなどの製造を行っています。
製造工場の多くは中国に置かれています。フォックスコンのEMS事業は、エレクトロニクス・通信機器メーカーのバリューチェーンの「製造」レイヤーに特化したものであるといえます。
レイヤーマスターは製造業以外にも存在します。たとえば、コンサルティング業界において「デザイン」というレイヤーに特化するアメリカのIDEOや、「ウェブサイトやアプリのユーザエクスペリエンスデザイン(使いやすさ)」のレイヤーに特化するbeBitなどが該当します。
【次ページ】レイヤーマスターの他の事例、成立条件や落とし穴とは?
関連コンテンツ
PR
PR
PR