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- 2020/10/09 掲載
マス・カスタマイゼーションとは何か? アディダスら事例でわかるモノづくりの新常識
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マス・カスタマイゼーションの基本コンセプト
マス・カスタマイゼーションとは、生産や販売のボリュームを活かしつつ(大量生産)、個々の顧客のニーズに合わせた製品・サービスを販売すること(カスタム化)です。たとえば、コンピューター販売大手のデル(デル・テクノロジーズ)は、PCの部品ごと(CPUやハードディスクなど)にいくつかのパターンを用意し、直販モデルによる受注生産(BTO:Build to Order)の仕組みを用いることで、顧客のニーズに合わせたカスタムオーダーの製品を販売しています。
また、ドイツのBMWは、乗用車「MINI」の内外装部品をユーザー自身がWebサイト上でデザインを変更できる、「MINI Yours Customized」のサービスを提供しています。カスタマイズされた部品は、BMWの工場で3Dプリンタやレーザー加工機を用いて製造されます。
企業のマーケティングにおいては長らく「マス・マーケティング」が用いられていますが、近年は個々の顧客のニーズを満たそうとする「ワン・トゥ・ワンマーケティング」が意識されています。マス・カスタマイゼーションは、こういった企業の個別対応を効率的に行おうとするものであるといえます。
大量生産のメリットとカスタム化のメリット
マス・カスタマイゼーションは、大量生産(マス・プロダクション)のメリットと、カスタム化のメリットを一定程度両立できるビジネスモデルです。上記のデルやBMWの事例からもわかる通り、マス・カスタマイゼーションでは組み合わせを行う部品の「パターン」をいくつも用意することで、パターン単位での生産ボリュームを確保します。
結果として、まず、大量仕入れ・大量生産によって製品原価や生産コストを下げることができます。また組み立てにかかる時間を短くすることで、出荷までのリードタイムを縮めることができます。これは、マス・プロダクション(大量生産)のメリットといえるでしょう。
同時に、マス・カスタマイゼーションでは、顧客のニーズに応じた仕様変更が可能となったり、多様な部品を抱える場合に比べて在庫の発生リスクを下げたりすることができます。顧客が手にする製品には、画一品ではない付加価値もあるでしょう。これらは、カスタム化のメリットといえるものです。
事例1:フクル
フクルは、繊維産業の集積地である群馬県桐生市に拠点を構える衣類製造販売企業です。同社では、自動化された生産システムを用いることで、価格を抑えたオーダーメイドのワンピースと女性向けスーツを提供しています。フクルでは、顧客が生地やサイズを見本の中から選んで発注すると、以降はCADを用いて自動で設計図を作成したり、製造に用いる生地やボタンなどのパーツも自動で用意されたりする仕組みを構築しています。
また、生地は桐生市の機屋にある残反を活用したり、縫製に関しては同社の創業者の家族が経営する縫製工場やその他の中小工場、職人と組んだりすることによって製造コストを抑えています。
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