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新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、リモートワークやクラウド移行が進むなど、あらゆる業界で変革が起きている。こうした状況の中、エンタメ業界の中からも「ウィズコロナ」を意識した取り組みがではじめているが、その評価とは。ホリプロ 代表取締役社長の堀義貴氏(話し手)と、エイスリー 代表取締役の山本直樹氏(聞き手)の2人のキーパーソンが語りあった。
コロナの影響が大きいビジネスと、小さいビジネスの差
山本直樹氏(以下、山本氏):コロナショックの影響の受け方は、企業のビジネスモデルに大きく左右される部分があるかと思います。ホリプロさんの場合は、タレントをマネジメントする、いわゆる芸能事務所的なビジネスに加えて、CMや出版物の制作など、事業を複数に分散していますが、それがコロナショックの影響を和らげたといったことはあるのでしょうか?
堀義貴氏(以下、堀氏):事業を分散していたことによる効果は多少あるかもしれませんが、当社が厳しい状況は変わりありません。当社以外のエンタメ業界の企業の話で言えば、今回のコロナショックの影響が大きく出た会社と、それほど影響のなかった会社は、はっきりとわかれたかと思います。
たとえば、収益の柱がテレビ局から受け取るタレントの出演料だったりする会社は、それほど大きい影響はなかったと思います。
一方、たとえば演歌歌手を何人も抱えているような芸能事務所は、地方公演や各地のスーパー銭湯をまわる営業などが主な収益源だったりするので、打撃を受けたかもしれません。そのほか、アニメの声優を抱えている会社さんも、アフレコできなくなったので、それなりに厳しくなったと思います。
最も厳しい状況だと思われるのが、自主興行をメインビジネスとしている企業・団体だと思います。テレビ放送などは一切やっておらず、舞台だけというケースは相当に厳しいでしょう。同じような業態でも他のタッチポイントを持っていたり、物販を行っている場合は、もちろん厳しい状況でしょうが、収入がゼロではありません。
山本氏:なるほど。これまで放映などを一切しないことでリアルイベントの価値を高めてきた企業が、今回のように人の動きが止まるようなパンデミックの影響を受けてしまったという感じでしょうか。ビジネスモデルの考え方も難しいですね。
堀氏:そうだと思います。後は、プロスポーツも大変な状況に陥っています。スタジアムにはお客さんを呼べない状況が続くことが予想される一方、選手には年俸を支払わないといけませんから。MLB(メジャーリーグ)では、選手の年俸を日割り計算するといった話が出てきており、選手とコミッショナーでもめているようです。
また、野球だったりボクシングは、カジノの賭けの対象になっていたりするので、そこの影響もありますよね。それと、スポーツが開催されないと、コンテンツが作れないDAZN(ダゾーン)なども打撃を受けているかと思われます。
ウィズコロナ時代のエンタメは儲かるのか
山本氏:エンタメ業界でもウィズコロナを意識した取り組みがはじまりましたよね。今後、ウィズコロナの世界でも定着していきそうな取り組みの事例はありますか?
堀氏:たとえば、吉本興業は劇場を再開させましたが、芸人さんはソーシャルディスタンスを保ちつつ、透明な衝立を挟むという形で漫才をしています。
でも、これだとボケに対して突っ込めないですよね。また、リモートで漫才をする事例も出てきていますが、やはり回線の影響もあってか1秒ぐらい漫才の間がずれてしまいます。そのため、どうしてもテンポの悪い漫才になってしまいます。
山本氏:ウィズコロナの世界を前提とした対応策は出てきているけど、それがコンテンツの質を落とすことにつながる部分もあるというわけですね。
堀氏:そのほか、演劇の世界では、無観客での一人芝居などを有料配信する取り組みがはじまっていますが、リアルの演劇と違ってオンライン上の観劇に6000~7000円を支払ってくれるお客さんは少ないと思います。そのため、動画配信サービスなどの相場に寄せた価格設定となってしまうのです。
「動画配信は演劇の新規顧客獲得につながる」と主張する人たちもいますが、実際に配信で演劇を観ている人は、ほとんど既存の演劇ファンなのです。安く観ることができてしまうと、それはそのまま演劇をなさっている方の報酬に跳ね返ってきてしまいます。
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