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  • 2020/06/12 掲載

ガートナー流ITコスト削減法、ロードマップ作成やIT資産把握のフレームワーク紹介

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新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックで企業の業績に陰りが出る中、IT部門へのコスト削減要求は高まる一方だ。だが、コスト削減はいくつもの課題が絡む厄介な取り組みでもある。既存システムを数多く抱える中、その方策を見極めるだけでも一苦労。しかも、システムは事業基盤だけに、不適切な開発停止により、パンデミック後の事業経営に大きな打撃を与える可能性もある。この点を踏まえ、ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門 シニア ディレクター,アナリストの片山博之氏が、ITコスト削減のプロセスや、削減対象となる開発プロジェクトと既存システムの見極め方について、各種のフレームワークを用いつつ解説する。
※本記事は2020年5月に配信されたガートナー Webinar「ITコスト・カットと価値の高いIT投資案件を残すベストプラクティス」の講演内容をもとに再構成したものです。

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コロナ禍でITの役割は増す一方、コスト削減圧力もかかっている
(Photo/Getty Images)


ITコスト削減の第一歩はロードマップの作成

 世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスの感染爆発が、世界経済に暗い影を落としている。日本でも業績の下方修正が相次ぎ、逆風下の舵取りに向けた経営計画の見直しもすでに本格化。その一環としてITコストの削減要求は急速に高まっており、今後、IT部門が対応に迫られることは確実な状況だ。

 ただし、それは一筋縄ではいかない取り組みでもある。たとえば、コスト削減のアプローチは合理化を目指す「コストカット」と、全体的な効率化/生産性向上を目指す「コスト最適化」に大別されるが、両者とも実施手段がいくつも存在し、かつ、既存システムを数多く抱えることもあって、どれに、どの手法を適用すべきかの判断は簡単にはつきにくい。

 また、新規開発の停止や中断を、むやみに推進できないことも指摘できる。今は厳しくとも、環境は必ず好転し、その際の主要なシステム開発の遅れは、競争力の低下に直結する。そこで、停止対象の適切な見極めが求められるが、いくつものプロジェクトが同時並行で進む中にあって、それはたやすくはない。

 課題が山積する中、どうコスト削減を進めればよいのか。この点について、「まずはコストカットとコスト最適化のロードマップの作成から着手すべきです」と語るのは、ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門 シニア ディレクター,アナリストの片山博之氏だ。

「両者は狙いの違いから、進め方も異なります。その点を踏まえ、両者の『目的と目標』を最初に設定したうえで、『現状』『コスト削減機会』『計画作成と現場との対話』『成果と未達成施策』の順に内容を検討し、必要な情報や取り組みを明確化することで、今後の活動の全体像を把握するのです」(片山氏)

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図1:赤がコストカット、青がコスト最適化、灰色が両者に共通する項目。目的と目標から、これらを埋めていく


「投資の停止」「ムダの排除」をそれぞれ意識

 ロードマップの作成で最も重要なのは、コストカット、コスト最適化ともに、目的と目標の設定である点で共通する。ただし、その後の進め方は、両者で次のような違いがあるという。

 まず、コストカットでは、そもそもの狙いである投資の停止を念頭に内容を埋めていく。そのために、現状の可視化において、製品やベンダー別に支出を仕分けし、その金額を基に、プロジェクトの延期/中止、TCO削減の方策を検討する。

 対するコスト最適化では、無駄なIT予算をより有効な投資に回すことを意識し、資産別や目的別、サービス別など、効果の観点で多角的に現状を捉える。そのうえで、システムのムダや重複を排除する方向で取り組みを明確化していくのである。

 こうして出来上がったロードマップを基に、具体的な削減法を検討することになるが、「その際には他社の事例や各種のベンチマークが大いに参考になります」(片山氏)。

「ITコストの削減策は、運用や調達の変更、機能削除、システム移行/統合、ソーシングなど数多く存在し、中にはクラウドなど、長期的にはより大きな負担が伴うものもあります。自社でのそれらの個別検討は時間的に到底困難です。ゆえに、他社の知見や客観的な指標を用いることが現実的な策となるのです」(片山氏)

 ガートナーでは、企業ですでに有効性が認められた約500のコスト削減策を取りまとめたレポートや、世界3000社のIT予算のベンチマークデータを提供しているという。

【次ページ】ビジネス施策までひもづけてITの価値を正しく把握
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