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  • 2020/05/02 掲載

なぜ建設現場は緊急事態宣言では止まらなかったのか、工事中止の影響は?

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新型コロナウイルスによって、ビジネスの現場は混乱に陥っている。それによる影響は、例に漏れず建設現場にも及んでいる。内勤者・外勤者問わず感染者が出ているうえ、亡くなったゼネコン社員もおり、工事中断の動きが各社広がりつつある。しかし、働き方を変えようという動きは、他の業界に比べて全体的に鈍いのが現実だ。なぜ建設現場は緊急事態宣言でも止まらなかったのか、建設業界特有の構造などから、これから何が起きてくるのかを解説する。
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建設現場の感染対策対応の動きが鈍い理由は、業界特有の構造が挙げられる
(Photo/Getty Images)

緊急事態宣言では止まらなかった建設現場

 4月7日に発令された緊急事態宣言に伴い、外に出る人の数はかなり減り、企業ではテレワークなど在宅勤務が急速に広まっている。それは建設業も同じで、ゼネコン各社は内勤者を中心に在宅勤務を推進している。

 ところが、緊急事態宣言後も建設現場は稼働中のところが多かった。国交省は「受注者から一時中止などの申し出があれば、できるだけ応じる」姿勢を見せてはいる。だが、国交省から一時中止などを受注者に呼び掛けてはいない。あくまでも「受注者からの申し出があれば」の姿勢なのだ。

 それは、国交省が公開している通達にも現れている。通達(4月16日時点)には「受注者から工事等の一時中止や工期又は履行期間の延長(以下「一時中止等」という。)の希望がある場合には……」と記載があり、この記述こそが国交省の姿勢を裏付けているといえる。

 なぜ、国交省の姿勢は「受注者任せ」なのか。それは「責任を負いたくないから」だろう。発注者や施主から一時中止を申し出るとすると、工程が遅れることによる責任は発注者や施主にいく。マンション工事であれば入居者への説明も必要になるだろう。その責任から逃れたい。だから、あくまで「受注者任せ」なのだ。

 それが影響しているのか、緊急事態宣言が発出された後も、現場を一時中止にする流れはあまりにも弱かった。一時中止にする方針をいち早く表明したのは西松建設と東急建設である。会社の方針としてトップが表明し、ホームページにも記載されている。いずれも社員が新型コロナウイルスに感染したことが背景にあると思われる。ただ、一時中止されるのは、もちろん「発注者との協議を行い了承が得られれば」の話である。

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緊急事態宣言の対象地域
 その他のゼネコン各社は一時中止することに後ろ向きの姿勢であったが、事態は一変する。

 4月13日、清水建設の社員3名が感染し、うち1名が亡くなったことを公表した。その後、清水建設は方針を撤回して、緊急事態宣言の地域にある現場を一時中止とする方向で発注者と協議に入ったことを表明している。これにより、ゼネコン各社の動きが注目された。

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清水建設の件で動いた各社の対応

 4月30日時点での各社の対応を以下にまとめた。緊急事態宣言の範囲が全国に拡大された4月16日を区切りに、それ以前を「対応1」、拡大以降を「対応2」とした。

建設現場に関する各社の方針
  企業名 感染者発表 対応1
(4月16日以前)
対応2
(4月17日以降)
大手ゼネコン 大林組 ・原則として工事は継続(4月8日発表)
・工事の一時中止を発注者と協議(4月15日発表)
発注者と協議する対象地域を国内全域に拡大(4月17日発表)
鹿島建設 - 全国の現場について、発注者や協力会社との協議が整ったら5月6日まで閉所(4月17日発表)
清水建設 緊急事態宣言の対象地域(7都府県)の現場を、原則緊急事態宣言終了まで閉所(4月13日発表) 「特定警戒都道府県」の作業所を原則閉所。他地域についても個別の状況に応じて対応(4月17日発表)
大成建設 - -
竹中工務店 - 感染予防措置を講じたうえで、工事は継続。なお、4月29日から5月10まで原則工事休止(4月27日発表)
準大手ゼネコン 長谷工コーポレーション 現場の3密回避の取り組み強化(4月8日発表) -
戸田建設 緊急事態宣言の対象地域の現場を原則閉所(4月15日発表) 対象地域を全国に拡大(4月17日発表)
安藤ハザマ 発注者と協議のうえ対応判断(4月9日発表) 4月24日から5月6日まで全国の作業所を原則閉所(4月20日発表)
前田建設工業 3密対策の徹底(4月8日発表) 4月25日から5月10日まで、発注者との協議が完了した作業所から順次閉所(4月17日発表)
東急建設 緊急事態宣言の対象地域の現場で原則工事中断(4月9日発表) -
西松建設 緊急事態宣言の対象地域の現場を発注者と協議のうえ、工事中止・現場閉所(4月8日発表) 発注者と協議のうえ、順次工事中止・現場閉所。4月25日から4月6日まで原則現場全休(4月20日発表)
(出典:各社HP)

 清水建設の一件と、緊急事態宣言の対象地域の拡大により、各社工事を中断するケースが増えてきているのが分かる。だが、なぜ最初の7都府県を対象とした緊急事態宣言でこの決断をすることができなかったのか、疑問に思う人もいるだろう。その要因の1つとして、前述した国交省の姿勢が挙げられるが、さらに建設業界特有の構造があるといえる。

【次ページ】建設業界特有の構造、ゼネコン側に意思決定の権限はない
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