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  • 2020/07/20 掲載

リファラル採用とは何か? “失敗事例”から考察する「成功法則」とは

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コロナショック以降落ち着いたように見える有効求人倍率も、人気職種は依然高い値を示しており、中小企業では採用が事業の存続や成長を左右する事態です。こうしたなか、これまでの採用手法への行き詰まり感から、新たな採用手法として注目をされているのが「リファラル採用」です。転職エージェントを通さない採用手法ですが、取り組みによっては通常の採用方法以上の効果を得ることも可能です。今回は、「リファラル採用」の本質的な効果と施策を成功に導くためのポイントをまとめます。
リープフロッグ CEO 松田純子 取材協力 監修:MyRefer 鈴木 貴史

リープフロッグ CEO 松田純子 取材協力 監修:MyRefer 鈴木 貴史

リープフロッグ CEO 松田純子
「広報の力で企業競争力をアップする」広報コンサルティング会社LEAPFROG 代表。 伴走型、人材育成型による、広報組織の立ち上げから事業戦略と連動した広報戦略設計、エグゼキューション支援まで実施。「広報の目的」=「企業成長」と捉え、新人、独り広報の会社でも最速で効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。早稲田大学卒業後、大手人材会社、求人広告エン・ジャパンでのコピーライターを経て、ITベンチャーのワークスアプリケーションズ、博報堂系デジタル広告会社スパイスボックスで10年以上にわたって広報業務に従事。一貫してコーポレート、インターナル、採用コミュニケーションのすべてに関わりビジネスゴールの達成を支える。2018年、スパイスボックス経営戦略室マネージャーに就任後、2019年に起業。プロフィールはこちら。

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リファラルプログラムとは何か
(Photo/Getty Images)
 

「リファラル採用」とは何か

 リファラルとは「紹介・推薦」の意味で、リファラル採用とは自社の従業員や退職者(アルムナイ)などに友人や知人を「紹介」してもらう採用手法です。

 新卒、中途問わず採用難が続く現在、転職エージェントや求人サイトなどを使った従来の採用手法だけでは人材を確保できない企業が増えている中で、注目されています。

 “コネ”を優先する縁故採用とは異なり、社員は自社のカルチャーに合うか、業務に必要なスキルを持っているかなどを踏まえて会社に人材を紹介します。その際、自社の従業員によるマッチングがすでに行われているため、一次面接を飛ばして選考を進める企業もあります。

 現場をよく知る社員が人材を紹介するので「マッチング精度が高く」、個人的な人脈を活用した採用のため「運用コストが低い」など、さまざまなメリットがあります。このことから現在では多くの業種や職種、アルバイトから正社員まで幅広く活用されているのです。

 米国では以前からリファラル採用が積極的に活用されていました。CareerXroadsの調査「Source of Hire 2012」では、すでに2012年時点でリファラル採用が28%と、採用者を占めるトップの割合を占めています。日本でも数年前から活用が活発化しており、Googleトレンド(下図)で見ると2016年ごろから少しずつ検索量が増えているのが分かります。

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(出典:Googleトレンド 検索ワード:「リファラル採用」)

 HR総研が実施した「キャリア採用に関する調査」(2019年)によると、リファラル採用を利用している企業はすでに41%に達しています。同調査の「成果が認められる手段・サービス」では、80%以上の企業がリファラル採用を挙げています。また、「今後、利用がより高まると思われるキャリア採用の手段・サービス」でもトップの項目であり、企業の期待値の高さがうかがえます。

リファラル採用のメリットとは

 リファラル採用を実施する上での基本的なメリットは、以下のようにまとめられます。

基本的なメリット
・潜在的求職者へのリーチ
・採用マッチ度の向上
・入社後スムーズになじみ、早期離職が減る
・採用単価の低下

 リファラル採用は、現場の業務内容や企業カルチャーをよく理解した従業員が、自社に合いそうな友人や知人に自社を紹介することからスタートします。友人、知人が求職活動中かどうかは関係ないので、仕事を探していない状態の人材にもリーチできるというメリットがあります。

 また、細かな仕事内容やチームの雰囲気まで含めて現場をよく知る従業員が、人事とは違った視点で人材を選んで紹介します。そのため、企業と人材がマッチしやすいのが特徴です。リファラル採用から採用に至った人材は、入社後も社内に馴染みやすく早期離職のリスクが低くなると言えます。

 また、あくまでも紹介による採用なので、従業員に友人との会食費や採用報酬を支給したとしても、エージェントを利用するよりははるかに採用単価が低くなることも大きなメリットです。

リファラル採用の「報酬」とは

 一般的に、エージェントを通して人を採用する場合、企業は採用した人の年収の30%程度を手数料として支払う必要があります。希少性の高い「ハイスペック人材」は年収が高く、支払う手数料も高くなります。また手数料の割合が30%よりもさらに高くなる場合もあります。そのため1人の採用単価が100万円を超えることも珍しくありません。

 その点、リファラル採用における必要経費や従業員向けの採用報酬は、企業が自社の都合に合わせて決めることができ、必ずコストが下げられます。調査によると、現在約85%の企業が報酬を設定しており、相場は1万~30万円程度です。

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「リファラル採用の実施状況に関する企業規模・業界別 統計レポート」(調査期間:2018年4月~10月)
(提供:MyRefer)

リファラル採用の副次効果とは

 リファラル採用で見逃せない効果はほかにもあります。それが「既存従業員のエンゲージメント向上」効果です。

見逃せない効果
・既存従業員のエンゲージメント向上

 リファラル採用では、従業員が自社の経営(採用)を自分ごととして捉え、会社の魅力を自分の言葉で友人、知人に発信することが必要です。この行動そのものが、従業員が自社の価値を再認識してエンゲージメントを高める効果をもたらします。

 自社を就職、転職先として友人や知人に紹介するためには、まず自身が会社の経営方針や成長性、働きやすさ、カルチャーなどを詳細に振り返り、どういった点が素晴らしいと考え、なぜ勧めたいと思うかを改めて考える必要があります。

 そして、それを言語化して多くの人に伝えるのですが、こうした行動により、自分にとって会社の大切さを再認識しエンゲージメントを高めることにつながるのです。これは、必要な人材の採用成功という目先の成果を超えた、組織や会社の成長に結びつく効果でもあります。リファラル採用サービス「MyRefer」のユーザー向け調査やヒアリングでは、実施企業にこの傾向が表れているといいます。

リファラル採用のデメリットと、“落ちた時”の対応を解説

デメリット
・短期的な採用には不向き(社内につながりのない職種の場合)
・不採用による人間関係への影響
・人材の偏り など

 リファラル採用のデメリットは、既存社員がつながりを持っていない職種で、いきなり「来月、経理を採用したい」というような短期的な対応はしにくいことです。

 また、人間関係をベースとした採用なので、紹介した従業員と友人、知人の人間関係にネガティブな影響が出ることが考えられます。

 せっかく推薦したのに不採用になった場合はもちろん、採用の場合でも「条件が聞いていた話と違う」「推薦者が自分の採用で金銭を受け取っているとは知らなかった」など、認識の相違によるトラブルもあり得ます。

 ここで重要となるのは、企業と従業員、さらに従業員と推薦者との事前のすり合わせです。企業が従業員に向けて、「リファラル採用の仕組み」のほか、「求める人材像」「採用条件」「採用後の待遇」など、選考過程に入る前から出せる情報をあらかじめ明確に伝え、お互いの認識のズレが起きないようにするのです。

 事前の対応によって、人事の手間や不要な人間関係のトラブルを最小限にすることができるはずです。

 そのほかにも、話がうまく進んで、従業員の友人の採用が増えすぎると、人材の質や属性に偏りができることも考えられます。リファラル採用の前には、こうしたデメリットを理解した上で、あらかじめ自社に合った計画を進めることが必要です。

リファラル採用の「本質」と失敗事例

 このようにさまざまなメリットが享受できるリファラル採用ですが、エンゲージメント向上の例を挙げた通り、この活動の本質的な意義は単なる「採用成功」にはありません。

 「お金を出せば(従業員が)動く」と考え、短期的な目標を立てて紹介数だけを追おうとするケースもあるようですが、インセンティブによって瞬間的には人が集まっても長く続かないなど、失敗事例が積み上がっているようです。

 本質的なリファラル採用活動とは、「組織づくりそのもの」です。

 従業員紹介による採用のためにはそもそも、従業員が“自社をお勧めしたくなる”ことが必須です。誰だって、人生に大きな影響を与える就職、転職先を生半可な気持ちで人に勧めることはできません。また、自身の立場を脅かすような優秀な人材を紹介することをためらう人もいるはずです。どうすればこうした事態を避けられるでしょうか。

 昨今では、「MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)」など、会社の目指す方向性や会社の存在意義を明文化して掲げる企業が増えています。

 これは、コモディティ化したモノやサービスがあふれる社会で、商品の販売や仲間集め(採用)に、商品ではなく会社の存在意義そのものへの共感が欠かせなくなっていることの表れです。ほかと差がなかったり、流行り廃りが激しかったりする商品やサービスへのコミットメントや共感は、あっという間に意味がなくなるのです。

 そしてこれが、リファラル採用を成功させるために重要な要素でもあります。まず「自社がどんな組織になりたいのかを明確化し、従業員がそれに共感している状態を作る」ことによって初めて、従業員は友人や知人に就職、転職先として自社を紹介し始めます。自身の成功だけを基点に行動する人は、自分より優秀な人材を会社に紹介することはありません。

 反対に、会社の存在意義(ミッション)に共感し、その実現を目指したい従業員は、ミッション達成のために自分よりも優秀な人材に声を掛けます。リファラル採用の本質的な意義は、まさに「組織づくりそのもの」なのです。

【次ページ】リファラル採用を運営する上での「成功法則」
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