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世界的に市場規模の拡大が続くEC(電子商取引)。国内ではシニア層の利用も増加しているが、BtoC EC市場の年間伸び率はグローバル全体で23%となっている一方で、国内は8.9%にとどまっている。今後、さらに市場を成長させていくための次の一手は何なのか。楽天 メディア事業 オムニコマース事業部 シニアマネージャー 山口 高志氏、スマートショッピング 代表取締役 志賀 隆之氏・林 英俊氏、フラッグシップ 代表社員 神馬 光滋氏が意見を交わした。メインファシリテーターは衆議院議員の鈴木 けいすけ氏が務めた。
※本記事は、2019年10月17日開催「SPARK IGNITION #39 ~「Eコマースの未来」~(主催:イグニション・ポイント)」の講演をもとに再構成したものです。
レンタルや日用品購入など広がるEC利用の幅
テーマは「Eコマース(EC)の未来」。ファシリテーターは鈴木氏とともにイグニション・ポイント コンサルティング事業本部 シニアマネージャー 羽間 裕貴氏、タレント 黒田有彩氏が務めた。
近年の傾向として、EC市場で提供される商材の幅は広がりをみせている。特に目を見張るのが、サービスの多様化。楽天で新規事業を手がける山口氏は次のように語る。
「リフォームや家事代行、自動車教習所の申し込みといったことが今はECでできるようになってきています。また、介護用品のレンタルなど、買うだけでなく借りるというところもEC化が進んでいます」(山口氏)
また、スーパーのように複数の日用品を購入するニーズも高まっている。スマートショッピングが提供する価格比較サイトは、そうしたニーズに応える。
「消耗品などのすぐに補充しなければいけない商品に特化した価格比較サイトを展開しています。『価格.com』などは家電などの1商品を買うことを想定していますが、スーパーで買い物するようにカートに複数のものを入れ、送料を含めて価格比較ができるサービスです」(スマートショッピング 志賀氏)
水などの重いものや日用品の購入にECを利用するという黒田氏は、「消費者として送料はすごく気になるので、かゆいところに手が届くサービス」と感嘆。高齢化が進む中、利便性の高さからECを利用するシニア世代も増えており、ECにおける日常の買い物支援の需要はさらに高まっていくことが予想される。
グローバルに比べて日本市場が伸びない理由
こうした好材料はあるものの、国内のEC市場はグローバル全体に比べると緩やかな伸びにとどまっている。イグニション・ポイント 羽間氏はEC市場の現状と課題を次のように分析する。
「2018年の市場規模は約17兆9000で、前年比8.9%の伸びでした。一方、海外はかなり伸びていて、グローバル全体で2兆8400億ドルの市場規模。前年比で23%伸びています。日本もさらに伸びていく見込みですが、ECに対応できていない企業がまだ多いこと、シニア層が持つクレジットカード登録への抵抗感など、クリアすべきハードルがまだまだあります」(羽間氏)
そんな中、フラッグシップは企業のECサイト立ち上げを支援している。取り組んでいるのは、ECサイト構築サービス「Shopify」活用による売り手の業務負荷の軽減。工数がかかりがちなECサイトの構築、運用の負担が減れば、企業がECを導入するハードルが下がっていく可能性がある。
「『Shopify』ですとある程度フォーマットがあるので簡単に美しいサイトを制作することができます。また、当社は売り手の業務を楽にするというところで差別化をしています。たとえば別のシステムからダウンロードしたデータをサーバーにアップロードしてから別の作業をするといったような、これまで人がやっていた複数の工程を自動化しています」(フラッグシップ 神馬氏)
シニア世代が持つ抵抗感については鈴木氏が「シニア世代は発注の手間や個人情報登録への恐怖心克服の手間を、より重く感じてしまうんだと思います。そこを簡単にできるようなソリューションがあれば活用は広がっていくんじゃないでしょうか」と言及。テクノロジーの活用による解決がないか、ゲストパネリストに投げかけた。
こうした課題には、より意識せずに使えるテクノロジーが有効となる可能性がある。現在は事業者向けに提供されているサービスだが、スマートショッピングが提供するスマートマットもその1つと言える。
「体重計のような板状のハードウェアをインターネットに接続し、たとえばマットの上に載せた水のボトルが少なくなってきたら、それを重さで感知して自動的に発注するなど、買い物の手間をなくすサービスを提供しています。こうしたサービスが普及していけば、ECを使っていない層の利用も増えるでしょう」(林氏)
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