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トヨタ自動車とNTTグループが、インターネットに常時接続された「コネクティッドカー」向けICT基盤の開発に取り組んでいる。次世代移動サービス「MaaS(Mobility as a Service)」の中核技術を開発に協業プロジェクトに挑む、トヨタ自動車のプロジェクト責任者がNTTデータのイベントの基調講演で明らかにした。その話から協業プロジェクトの舞台裏に迫ってみたい。
コネクティッドカー向けICT基盤を共同で開発
「コネクティッドカーは数年後に数百万台が市場に出てくる見通しだが、そこから発生する膨大なデータを収集し蓄積、活用する技術は未確立のままだ。その課題解決に向け、NTTグループと力を合わせて取り組んでいる」──。トヨタ自動車コネクティッド先行開発部InfoTech室長の前田篤彦氏は、NTTデータが先頃都内で開いた「NTTデータ テクノロジーカンファレンス 2019」の基調講演でこう切り出した。
両社の協業プロジェクトでは現在、トヨタの車の技術とNTTグループの分散処理などの技術を融合させて実現性を検証するとともに、実車を活用した次世代の大規模コネクティッドカー基盤の実証実験中という。前田氏はこの協業プロジェクトの責任者を務めている人物である。
同氏は協業プロジェクトの具体的な話に入る前に、自動車業界を取り巻く環境の変化について説明した。同業界は今、「100年に一度の大変革期を迎えている」と言われている。大変革期の先には、次世代移動サービス「MaaS」(マース)の世界が広がっているとされる。図1に示した内容が、トヨタにおけるMaaSの概念である。「MaaSは移動のあり方を変える原動力になり得る」というのが同氏の見方だ。
トヨタ「モビリティカンパニー化」の実際
こうした大変革期に向け、トヨタは2018年1月に「カーカンパニーからモビリティカンパニーに変わる」ことを宣言。つまり、車の製造、販売から移動サービスを提供する会社に変身することを明言した。
前田氏はもう1つ、「CASE(ケース)」というキーワードを挙げた。「コネクティッド化」「自動運転化」「シェア/サービス化」「電動化」を意味する英語の頭文字を並べた言葉で、MaaSを構成する重要な要素を表している。
同氏は、「車産業をはじめとして社会を変えていくのは、シェア/サービス化。それを支える技術として、コネクティッド化、自動運転化、電動化の進展があるというのがCASEの考え方だ。CASEにおいては、競争する範囲やルールがこれまでとは異なるものになる。一方で、協業する仲間もこれまでにない組み合わせになる」との見解を示した。トヨタにとっては、今回のNTTグループとの協業がまさしくそれに当てはまる形だ。
では、協業プロジェクトの具体的な話に入ろう。トヨタでは今、MaaSに向けてさまざまなサービスを実現する「モビリティサービスプラットフォーム」の構築を進めている。図2がその概要である。
このプラットフォームを通じて、あらゆる企業とサービスを相互に連携し、新たなモビリティ社会の創造に寄与するというのが、同社の考えだ。こうした動きは自動車メーカーというよりはITプラットフォーマーやIT企業の取り組みそのものだ。
前田氏によると、このプラットフォームの実現に不可欠なのが、個々の車をコネクティッドカーにしてグローバル通信プラットフォームにつながるようにすることだ。トヨタは日米を皮切りに新型車から通信機能を標準で搭載する計画で、ゆくゆくは年間400万台のコネクティッドカーを世に送り出していく構えだ。
【次ページ】協業プロジェクトの目標と課題は
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