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  • 2019/08/09 掲載

なぜ「諜報活動を教える大学」が増えているのか? 学生人気も急上昇

連載:軍事産業の新潮流

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世界的に諜報活動研究コース(インテリジェンス・スタディズ)を設ける教育機関の数が急増している。こうしたコースは学問分野としての諜報活動の専門職化と、機密および非機密分野でのより自由な意見交換を可能にする。しかし、情報収集プロセスとして近年注目を集めるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)の実践的なスキルを育成できるとは限らない。昨今のニーズに応じて、カリキュラムがどのように組み込まれているのかを調査した。
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大学院で諜報活動やサイバーセキュリティのコースが増えている
(Photo/Getty Images)

結びつきを深める諜報機関と学究分野

 フランスの諜報機関(インテリジェンス・コミュニティ)のメンバーを教育し、諜報機関と学術研究の世界を橋渡しすることを目的として2010年に創立された「フランス・インテリジェンス・アカデミー(Académie du renseignement)」。同アカデミーが2019年、大学の論文とオリジナルの著作に対し2度目の「グランプリ」を授与する予定である。

 最初のグランプリは2019年1月9日、パリの陸軍士官学校で授与された。受賞したのは空中査察の歴史と1970年から1980年までフランスの外国諜報活動司令官だった人物の経歴に関する論文だった。3月25日にDiplowebに掲載された記事によると、このグランプリは「インテリジェンス・アカデミーがその年に授与するさまざまな賞」の前触れになるという。

 学際的なアプローチを好むことが多い大学の「諜報研究コース」が増加傾向にあることからもわかる通り、これらの賞、そしてインテリジェンス・アカデミーの創立そのものが、諜報機関と学究分野のつながりが深まっていることの証左と言える。

 とは言え、以前諜報機関にいた人材が調査や教育の役割を果たし、諜報機関と学会のつながりが深まるにつれ、学術的な諜報活動研究の焦点、アプローチ、方向性などについての疑問も出てきた。

 特に、デジタル革命により2000年代初頭には利用できなかった情報源にアクセスできるようになったものの、学術研究におけるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)はまだ平等に活用されていない。OSINTとは、一般に公開された情報(オープンソース)から機密情報(インテリジェンス)を入手する手法のことである。

 こうした学術的プログラムが、現代の諜報活動分析に必要とされれるスキルを十分に提供できるのか、疑問が残っている。

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オープンソースインテリジェンス トレーニングの様子

英バッキンガム大学では学士のコースも新設

 英国では、バッキンガム大学安全保障・諜報活動研究センター(BUCSIS)が2008年以来、修士課程で安全保障や諜報活動、外交関係、法執行などの分野でさまざまな修士課程を教えてきた。2019年、BUCSISは安全保障や諜報活動、サイバーに関する学士号(BA)についても講義要領を策定した。

 かつて英国政府の諜報活動および安全保障部門の仕事をしていたBUCSISの共同創立者ジュリアン・リチャーズ教授は、2019年4月17日のJane’sとのインタビューで、「BUCSISがコースを開発したのは、かつての大学院生からのフィードバックによるものだった」と述べている。

 英国の大学出願ポータルUCASによると、英国には諜報活動研究に関する認可を受けた学士課程は他にないという。しかし、オーストラリアと米国には似たような学士課程がある。

 リチャーズ教授が「21世紀の国際関係論」と表現するBUCSISのコースには主に2つの目的がある。第一に、従来の国際関係論や政治学から習得した多くの地政学的認識とスキルを維持すること。第二に、テクノロジーの実用知識と安全保障への影響について学ぶこと。これはコンピュータサイエンスに重きを置く多くのサイバーセキュリティ・コースとは対照的である。

 リチャーズ教授が指摘した2年過程の要素として、分析とコミュニケーションのスキル開発がある。教授の説明では、現代のOSINTアナリストに求められる能力と学問分野に必要とされるスキルには、類似する部分があったという。

 したがって、BUCSISのコースは国際関係論型の歴史的問題よりも、むしろ時事問題に関わる紛争情報を扱い、短期および長期の分析演習に力点を置く実践的要素を備えていると言える。学生は信頼性を欠く情報をどう見つけるか、また情報源の出所と動機について考える方法を教わる。

 最後に、このコースでは模擬的な政策資料や共同諜報委員会形式でのレポート、小論文、プレゼンテーションなどを含むさまざまな演習を通して、分析結果を伝えるためのベストプラクティスを教える。

 講義の単位区分には「サイバー時代におけるテクノロジーと安全保障」「紛争」「危機と戦略的意思決定」「政治心理学と情報分析」「政治リスク分析」および「コンピュータ・ネットワークの原理」がある。

 リチャーズ教授によると、BUCSISは政府機関と一定の距離を保っており、「フィニッシングスクール」の役割を果たしたり、「肩を叩いて」人材をリクルートすることはないという。これはBUCSISにとって創設以来の課題だった。教授がJane’sに語ったところでは、「多くの学生は卒業後政府機関や安全保障当局の就職を望んでおり、こうした学生は長期にわたり工作員の養成に取り組んでいる敵対国にとって興味の対象となりうる」という。

【次ページ】諜報活動研究コースの増加がもたらす未来とは
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