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  • 2019/03/27 掲載

高まる「AI兵器」開発競争、そのミサイルの引き金はヒトが引くべきか?

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米国で今、AIを使用して「自動的に敵を感知、攻撃する」兵器の開発が進められている。国防総省では以前からAI技術者の雇用に積極的だったが、ついに完全自律型の兵器に適用される時代が来ようとしている。世界では26の国がこうした自動兵器の運用を禁じているが、米国が一歩踏み出すことで世界の軍事バランスが大きく変化する可能性もある。
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ボーイング社が開発した無人ジェット戦闘機

AIを活用した自動戦車「ATLAS」

 現在、米陸軍はATLAS (Advanced Targeting and Lethality Automated System)と名付けたAIを使用した自動戦車の開発に取り組むと発表している。実現すれば、この戦車は自動的に標的を発見、追跡、戦闘態勢に入ることができる。ただし現在の法律に従い、最終的に火器を発射するのは人の手によるものであることが義務付けられている。

 現時点ではまだ陸軍側が兵器サプライヤー、研究所など向けに、こうしたAI兵器のアイデアを募集している段階だ。

 陸軍ではAIとマシンラーニングを組み合わせることで「現在のマニュアル方式の武器よりも3倍早く索敵行動が可能になる」としている。

 またワシントンDCのシンクタンク、「テクノロジー・アンド・ナショナル・セキュリティ・プログラム」の研究者、ポール・シャール氏はこうした武器の使用により「目標への攻撃がより正確になり、市民が巻き込まれるなどの事故を防ぐ確率が上がる。また行動が迅速になることで戦場での兵士の死傷も減少する」としている。

ATLASに反発する動きも活発化

 兵器の自動化は、ミサイル防衛などではすでに行われているが、戦車のような地上武器に導入されるのはこれが初めてとなる。

 これに対して、もちろん米国内で反発する動きもある。UCバークレイ教授でAI専門家であるステュアート・ラッセル氏は「戦車のような陸上武器にAIが導入されることに深い懸念を抱いている」と語っている。

 現時点では最終的な火器発射は人の手で、という法律があるものの、こうした武器の開発が進めば「AIのほうがより正確に発射のタイミングをとれる」などの理由で最終的に自動的に敵を攻撃する武器へと発展しかねないためだ。

 また、ATLASが引き金となり、世界中でAI武器の導入合戦が始まる可能性も高い。

 米国の「Stop Killer Robots」というNGOでも「武力の行使には人によるコントロールが必要」という立場から、ATLASへの反対キャンペーンを行っている。

米国が軍事産業を無視できない事情

 国連でもAIによる自動武器の導入には深い懸念があり、現在26カ国がこうした武器の導入を禁止しているが、米国、韓国、イスラエル、オーストラリアはこうした国連規制に反対の立場をとっている。

 特に米国の場合、ボーイング、ロッキードマーチン、BAEシステムズ、レイセオンなどの防衛産業メジャー企業が無人武器開発に大きな投資を行っている現状がある。

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 たとえば今年2月、ボーイング社は無人飛行のジェット戦闘機を開発中であることを明らかにした。この戦闘機は「Boeing Airpower Teaming System」と呼ばれ、2020年にも販売を開始する予定だという。

 この戦闘機はオーストラリア国内で製造される予定で、ボーイング・インターナショナル社社長、マーク・アレン氏は「米国外で開発されたという意味でボーイング社にとっても歴史的な航空機となる。また国外でデザインされた、という点で、顧客となる国の要望に合わせたカスタマイズが可能になる」と、米国だけではなく世界市場を見据えていることを明らかにした。

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米国軍の無人システムに対する投資額の推移
(出典:Unmanned Systems & Robotics in the FY2019 Defense Budget)

 ただし、この戦闘機は爆撃を目的としたものとは限らないとボーイング社では説明する。チーミングシステム、という名の通り、この無人機は通常の戦闘機とペアで地上の監視、索敵などの役割を果たすことが期待されている。

 たとえばE-7ウェッジテイル、P-8ポセイドンなどの爆撃機と組んで支援行動を行ったり、地上の諜報活動やその情報の集積などに用いることができる。非常にフレキシブルな内容で、顧客である国の要望に応じてさまざまな機能を持たせることができるという。

 さらに無人であることからパイロットの耐久性を考える必要がなく、これまで以上の速度で飛行でき、危険な任務でパイロットの人的損害を防げるほか、コストを削減できたり、高速飛行による効率的な地上監視活動ができるなどのさまざまなメリットをボーイング社では挙げている。

【次ページ】音速を超えるハイパーソニック兵器が登場
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