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  • 2019/05/08 掲載

もうメディアに踊らされるのはやめよう、外資から見た「日本企業の強さ」

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副業はどんどん推奨するべきだ、日本企業は外資企業を見習うべきだ――。こんな論調が昨今日本をにぎわせているが、それは思考停止して受け入れていいものだろうか。at Will Work「働き方を考えるカンファレンス2019」で開かれたパネルディスカッションにて、リンクトイン・ジャパン 日本代表 村上 臣氏、アバナード デジタル最高顧問 松永エリック・匡史氏、AnyProjects Co-Founder 石川俊祐氏が議論を交わした。モデレーターはビジネス+IT編集長の松尾 慎司が務めた。
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セッションのグラフィックレコーディング。内容の詳細(一部抜粋)は下記


これからの副業に必要なのは“フェアネス”

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ビジネス+IT編集長
松尾慎司
ビジネス+IT 編集長 松尾慎司(以下、松尾):今回、事前に登壇者の皆さんにおたずねした中で、最も意見が分かれたのが「副業」の是非でした。会場の皆さんに手を上げてもらったところ、副業賛成派がほとんどですね。反対派の松永さん、いかがですか?

アバナード デジタル最高顧問 松永エリック・匡史氏(以下、松永氏):僕は複数の日本企業のコンサルティングを手がけていますが、日本をよく知る外国人から言われた言葉で印象に残っているのが「日本はフェアじゃない」という一言でした。成果主義がそれほど浸透していない日本で、副業を制度として導入する“あおり”を受けるのはハイパフォーマーだと言うのです。

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アバナード
デジタル最高顧問
松永エリック・匡史氏
 つまり、ローパフォーマーは時間があるから副業ができる。しかし、本業の給料はハイパフォーマーとそれほど変わらない。これではハイパフォーマーが嫌気がさして辞めてしまうリスクがあるというのです。

 私は、副業自体がだめだと言っているのではありません。やるなら「フェアネス」の観点が重要で、副業にもランクをつけるべきです。ハイパフォーマーであるほど副業をやってもきちんと評価されて、昇進などにつながるというなら副業賛成派に転じます。

松尾:副業賛成派の村上さんは、いかがですか。

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リンクトイン・ジャパン
日本代表
村上臣氏
リンクトイン・ジャパン 日本代表 村上臣氏(以下、村上氏):今までも申請すれば副業OKの会社はあったでしょう。ですが今は「優秀な人が来そうだから副業容認する」のように目的と手段が変わってきているように見受けられます。

 今後、日本の労働人口が減少するのは明白ですから、一人が一つの分野だけで才能を発揮するよりも、複数の分野で才能を生かしたほうがいい。それで現状以上のアウトプットを出せるなら、全体の総和として効率的です。

 松永さんの言われる「フェアネス」というのはよい視点です。誰もが納得できる形で副業制度を運用する必要があると思います。

松尾:会社側としては、優秀な人であればあるほど、その人の持っている時間は全部自社で使ってほしいと考えるんじゃないでしょうか。

村上氏:「時間でアウトプットを縛る」という発想は、高度成長期の工場ラインの労働換算に基づくものです。工場ラインでは決められた労働時間内で効率を上げていけば、生産性が向上しました。

 しかし、今は時間と成果があまり比例しなくなっています。テクノロジーの進化もあって、今は世界的に時間的にたくさん働ける人よりも、インパクト(成果)を出せる人が価値があるとみなされています。

従業員にとっての“幸せ”とは何か

松尾:石川さんの会社、AnyProjectsでは働き方について面白い取り組みをされていますね。

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AnyProjects
Co-Founder
石川俊祐氏
AnyProjects Co-Founder 石川俊祐氏(以下、石川氏):うちは今メンバーが5人いますが、時間の7割を会社の仕事に当てて残りの3割は好きに自由なことをやっていいことにしています。その「好きで自由にやっている仕事」も、カレンダー上ですべて共有して、必要があれば協働しています。全部トランスペアレント(透明)にしているのです。

 副業の観点では、私はそもそも「是」「非」の二極で議論されていることに違和感があります。この前提には「大企業が社員を所有している」という発想があるように感じるのです。

 日本の企業はこれまで、自社の社員がどう働けば幸せなのかを考えたり議論したりしたことがあまりなかったように思います。業界によって事情は違うと思うので、「うちにはどういう働き方があっているのか」をこれからじっくり考えたほうがいいでしょう。

松尾:石川さんの会社は給料体系も斬新ですね。

石川氏:そう、給料も全員フラットです。誰が上司か、何をやったか、その人の1時間の成果がどうだったかはどうでもいい。僕らの関心はただ、美しいもの、価値あるものを生み出したいということ。だから、「誰がどれだけがんばったか」というような考え方は一掃したいのです。チャレンジではありますが、今のところは非常に楽しく助け合い、うまくいっていると思います。

松永氏:昔はすべての視点が企業側にありました。その視点が従業員に移ってきています。今、企業が真剣に考えなければいけないのは、従業員の幸せのあり方です。昔は昇進・昇給などに価値を求めていましたが、いい仕事をたくさんできれば幸福で、それが実現するなら、出世や帰宅時間は二の次に考えている人もいると思います。そこを見極めて、自社の従業員の幸福が何なのか考えて制度を作らなければいけません。制度が変わると、日本企業は変わります。

村上氏:その通りですね。時間で給料を払うのなら、AI(人工知能)に真っ先に給料を払わなくてはいけない(笑)。今まで、日本の企業は金融資本主義の下、株価や時価総額で評価されてきました。しかし、これからは、働きがいのある企業が評価される状況になってきていると思います。

日本企業のよさを一言で言うと

松尾:松永さんは、最初は日本の企業に就職されてその後外資系企業に移られました。これはなぜですか。

松永氏:たぶん期待されている回答は、日本の企業がだめだったからということだと思うんですが、違います(笑)。僕が外資に呼ばれたのは、日本企業の実態をよく知っていたからです。

 僕は、「日本企業は非常に強い」と思っています。

【次ページ】なぜ日本企業は強いのか
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