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2015年9月、国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(以下、2030アジェンダ)」の中核をなす行動目標であるSDGs。今回は、「ゴール14(海洋)」「ゴール15(生態系・森林)」を取り上げます。SDGsでは生態系の保護や回復に加えて、資源の持続可能な利用についても定めています。最近ではマイクロプラスチックによる海洋生態系への影響などにも世界的な関心が集まってます。この2つの持続可能目標を読み解きます。
ゴール14 「海洋」は人体に関わる深刻な問題
ゴール14の開発目標は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」です。
ゴール14の下に定められたターゲットには、海洋汚染の防止、二酸化炭素の吸収による海洋酸性化防止、海洋や沿岸の生態系の管理や保護、水産資源の科学的管理、過剰あるいは違法な漁業の禁止などが明記されています。
魚などの水産資源は、人間や家畜の食料や飼料、栄養源として、小さい島国などの経済的基盤を支えています。飽食や健康志向により水産資源の消費量が伸び続ける中で、水産資源の持続的な利用が世界的な課題になっています。
一方、生態系としての海を守ることも重要です。海は大気中に放出された二酸化炭素の吸収源となり、気候は海の影響を強く受けています。海水温の上昇による巨大台風の発生や魚の生息域の移動による漁獲量の変化は、私たちの暮らしにも影響を与えています。船舶事故の油や漂流ゴミによる海洋汚染、環境ホルモンなどの化学物質による人体への影響も海洋を巡る問題です。
イオンも持続可能な水産物の取扱を開始
日本は、島国として水産資源の恩恵を受けてきました。沿岸には漁業を生活基盤とする町や村が形成され、豊かな海産物は寿司など日本独自の食文化を支える存在です。
その一方で、他国籍船による水産資源の乱獲や海流や海水温の変化による漁獲量の減少など、近年は資源の持続的利用に関する課題もあります。国や都道府県では、水産資源の持続的利用のため「資源管理指針」を策定し、指針に沿って漁業者が自主的に取り組む「資源管理計画」は1930件(2017年3月)策定されています。
また、海のエコラベルと呼ばれる「MSC」や、その養殖版「ASC」の認証ラベルを付けた水産物の取り扱いも増えています。
MSCは、漁業が適切な管理のもと持続可能に行われているか認証基準を満たした水産物に与えられ、消費者も世界の海洋保全に参加できる仕組みです。
たとえばイオングループでは、2017年4月に「2020年の調達目標」を策定し、その中で2020年にスーパーなどで取り扱う水産物は、MSC・ASCの流通・加工認証の100%取得を目指すなど取り組みを広げています。こうした商品を選択することは、食卓から持続可能な社会を考える「食育」としても有効です。
気候、生命、食、文化など、多様なつながりのある海をどう守り、持続的に利用していくことができるか、世界規模での取り組みが始まっています。
日本、米国が署名しなかった「海洋プラスチック憲章」
ゴール14に関する問題に「海洋プラスチックごみ問題」があります。石油由来のプラスチックは自然分解できません。つまり、適切に処理・回収されなければ、自然界に半永久的に残ってしまうのです。
海に流れ込むプラスチックごみは、世界で年間800万~1000万トンと推計され、発生量の上位は中国(353万トン/年)、インドネシア(129万トン/年)、フィリピン(75万トン/年)などアジアの国々でした(2010年推計。同推計で日本は6万トン/年)。
海洋プラスチックごみはG7やG20でも主要議題となっており、2018年6月のG7シャルルボワ・サミットでは、EU、英国、カナダなど5カ国が自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名するなど、世界的な動きが加速しています(ただし日本、米国は署名せず)。
5ミリ以下の細かい粒子状になったマイクロプラスチックによる海洋生態系への影響も深刻です。というのも、プラスチックが石油物質を含むため、海洋に漂う汚染物質を吸着しやすい性質を持っているからです。
マイクロプラスチックが魚介類や鳥類などの体内に入り、食物連鎖の中で蓄積され、人体への影響も懸念されています(プラスチック自体は排泄され体内に残らない)。すでに、日本近海で捕獲された魚の体内からマイクロプラスチックが確認されています。
「海洋プラスチックごみ問題」の解決策:花王の場合
では、海洋汚染の一因となるプラスチック問題には、どのように取り組んでいけばよいでしょうか。ごみの問題としては、
ゴール12(持続可能な生産と消費)にも関係してきます。
最近、スターバックスやマクドナルドなどの世界的企業が、プラスチック製のストローを段階的に廃止することが話題になりました。しかし、解決策はそれだけではありません。
洗顔料やボディーソープなどに使われているマイクロビーズを製品に使用しないことがいい例です。マイクロビーズは1mm以下の非常に小さなプラスチックで、洗顔料、ボディソープ、化粧品などにとろみをつけたり、スクラブ材として使われます。
花王では、2016年末までにセルロースなど天然由来の代替材料への変更を終え、脱マイクロビーズを完了しています。それでも、
2017年度マイクロビーズの流通実態調査によれば、国内138社が加盟する化粧品原料協会内では、国内でまだ年間数百万トンの消費実績がありました。
また、今年の夏、鎌倉市由比ガ浜に打ち上げられたクジラの体内からプラスチックゴミが多数見つかったことをきっかけに、神奈川県は「
かながわプラごみゼロ」を宣言。県内のコンビニ、スーパー、レストランなどと連携し、プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止・回収などを、SDGs達成の一環として取り組みはじめています。
さらに、生分解性のプラスチックに置き換えていくことも方法の1つです。ただし、石油由来に比べて高価であることや、耐久性、使い捨てを前提としているためリサイクルやリユースに合わない、海洋では分解されにくいなど課題もあります。
海洋プラスチック問題の解決には、海に視点を向けるだけでなく、製品や生活利便を見直し、できるだけプラスチックに頼らない社会や習慣に改めていくことが必要です。
【次ページ】三井住友信託銀行は「森林信託」でゴール15「生態系・森林」に取り組む
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