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- 2018/11/12 掲載
企業ネットワークに限界到来、「SD-WAN」が本命となる
複雑化した企業ネットワークはもう限界
しかし、「従来の延長上のネットワーク改善は、もはや限界にきています」と甲元氏は強調する。背景にあるのが、これまでの取り組みの結果としての全社ネットワークの複雑化だ。
全社ネットワークの複雑化は、大企業のネットワーク構成を概観すれば容易に理解できる。多くの場合、国内主要拠点や海外拠点では、品質と信頼性を踏まえて広帯域の専用線が利用され、小規模拠点間とはコストの観点からベストエフォート型の地域IP網で結ばれる。
そのうえで、インターネット接続のために、セキュリティ確保を目的とするデータセンターが用意され、そこからIP-VPNなどの専用線によってクラウドなどに接続するとともに、無線ネットワークによるリモートアクセス環境も整備される。
目指すべきは「クラウド・ネットワーキング」
こうした構成は、費用対効果の点では納得のいくものである。しかし、WAN、LAN、無線、クラウドなど、いくつものサービスの混在によるネットワークの複雑さと管理の煩雑さが増した結果、容易にはネットワークに手を加えられない状況を招くことになった。「デジタル・トランスフォーメーションの必要性が強く叫ばれながら、こうした環境での柔軟な対応が可能かといえば、残念ながら“否”でしょう。しかも、クライアント/サーバ型を前提とした従来からのネットワークはクラウドとの整合性にも欠け、そのこともビジネス変革の足かせとなっています」(甲元氏)
この状況を脱するために、「今後の企業ネットワークのあるべき姿をビジネス視点で見極め、その具現化に取り組むことが急務」と甲元氏は強調する。
そこに織り込むべき要件は、「変化への迅速かつ柔軟な適応」「低リスクでの迅速な試行」「外部との迅速かつ柔軟な連携」「自律的行動への柔軟な対応」などだ。そして、それらの実現に向けたネットワークの方向性として甲元氏が紹介したのが、クラウド指向のネットワークである「クラウド・ネットワーキング」である。
「クラウド・ネットワーキングでは、オンデマンドでのセルフサービス化やリソースプール化、インフラのソフトウェア化、従量課金といったクラウドのメリットをネットワークでも目指します。ひいては、他社に先駆けた迅速なビジネス展開や、世界中の接続拠点や制御拠点を生かした高い可用性、構築・保守・運用におけるコストと作業の極小化が実現され、デジタライゼーションへの対応も容易になるわけです」(甲元氏)
とはいえ、その実現の道のりは決して平たんではない。ネットワークはベースとする技術や通信可能な距離によりLANやWANのほか、BAN(Body Area Network)やPAN(Personal Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、GAN(Global Area Network)などいくつも存在する。
だが、クラウド・ネットワーキングの機能要件と各サービスを突き合わせると、すべての要件を満たすサービスは1つとして存在しない。しかも、それぞれ適した用途が異なるため、ネットワークを選択できないケースも往々にして発生する。
これらを踏まえ、甲元氏が提示したクラウド・ネットワーキングの実現手法が、「企業ネットワークをプラットフォームととらえ、全体を包括するアーキテクチャを策定したうえでのネットワーク構築」だ。
その実現に向けたコンセプトが、各ネットワークサービスを柔軟に組み込め、それらの統合管理も可能なコア・ネットワークの構築であり、その本命と甲元氏が位置付けるのが「SD(Software Defined)-WAN」である。
【次ページ】なぜ「SD-WAN」は次世代のコア・ネットワークの本命なのか?
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