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- 2024/10/22 掲載
世界と日本の「生成AI市場」を徹底図解、急成長市場をけん引する「ある業界」とは
【世界】生成AIの市場規模
生成AIとは、機械学習によって新しいものを生み出すAI技術のことです。具体的には、テキスト、オーディオ、ビデオファイル、画像、さらにはコードなどの既存のコンテンツを使用して、マーケティングメール、ソーシャルメディア広告、法的契約、交響曲などの有機的な新しいコンテンツを作成できる、「教師なし」および「半教師あり」機械学習アルゴリズムを指します。「教師なし」学習は扱うデータにラベル(正解)付けがなく、データ自体のパターンから関係性を見つけ出す手法で、「半教師あり」学習は、ラベル付けされたデータとラベル付けされていないデータの両方を扱う手法です。
生成AIはディープラーニングを使用し、与えられたトレーニングデータセットからモデルを構築します。これらのモデルは、データ内のパターンを認識するようにトレーニングされ、その後、それらのパターンに基づいて新しいデータを生成します。
生成AIの市場の成長は、データの容易なアクセスを可能にするクラウドストレージの革新、AIとディープラーニングの進化、そしてコンテンツ作成とクリエイティブアプリケーションの増加に起因しています。
MarketsandMarkets社によると、生成AIの市場規模は2024年には209億米ドルに達し、2024年から2030年にかけて約37%のCAGR (年平均成長率)で成長し、2030年には1,367億米ドルに達する見込みです。
ベンチャーキャピタルや企業による資金調達、政府支援による多額の投資が生成AIの研究開発を加速させ、成長とイノベーションを促進しています。また、ノーコードAIプラットフォームや会話型AIなどの隣接市場が、生成AI市場に新たな収益の見通しをもたらしています。
【日本】生成AIの市場規模
日本では、強固な技術基盤、活気のあるイノベーション環境、そして製造、メディア&エンターテインメント、医療、BFSI(銀行・金融・保険)などのさまざまな業界におけるニーズの高まりにより、生成AIが急速な発展を遂げています。日本は自動化とDXに注力しており、大手テクノロジー企業やスタートアップ企業からの多額の投資もあって、生成AIの導入が進んでいます。日本の生成AI市場は、2030年までに68億米ドル規模に達すると予想されており、2024年から2030年にかけて40%という高いCAGRで成長すると見込まれています。
日本における生成AIの可能性
技術力とイノベーションで名高い日本では、生成AIの登場により、大きな変革の時を迎えようとしています。日本のAI戦略会議は、その高度な研究と技術力により、日本がAI技術に強くコミットしていることを認識しています。生成AIは、特にアート、デザイン、エンターテインメント、スポーツ、メディア業界などのクリエイティブな分野を変革するでしょう。アイデアの創出やコンテンツ制作にかかる時間とコストを削減する生成AIは、これらの分野の専門家にとって新たな機会をもたらしてくれます。
たとえば、尾田栄一郎氏が『ONE PIECE』などのプロジェクトでクリエイティブなハードルを乗り越えるために、ChatGPTなどのAIツールを使用しているように、生成AIはすでにクリエイティブな作業に取り込まれています。
さらに、NVIDIAのStyleGANを活用した世界初のAI生成マンガ作品『PHAEDO』の開発を見れば、生成AIがクリエイティブな可能性を広げ、人間のクリエイターのインプットを十分認識できていることがわかるでしょう。
また、生成AIは、科学研究や医療の分野でも重要な進歩を遂げています。三井物産とNVIDIAの提携による、生成AIを搭載したスーパーコンピューター「Tokyo-1」の開発は、この技術がいかに創薬や分子動力学シミュレーションを強化できるかを示しています。
生成AIは、研究手順の最適化、コスト削減、教育成果の向上につながる可能性を秘めており、科学、医療、教育など、さまざまな分野で有益なリソースとなることが証明されているのです。
日本が生成AIの分野で世界をリードするための道のりには、さまざまな課題があります。ディープラーニングと広範なソフトウェア開発のスキル不足は、日本が直面している課題の一つです。生成AIには、必要なインフラを開発するためのディープラーニングスキルを持つ、ソフトウェアエンジニアの強固なコミュニティが必要とされます。
しかし、経済産業省によると、日本は2030年までに78万9000人のソフトウェア開発者が不足する見通しです。この人材不足は、AIの進歩において世界規模で競争する日本の能力を脅かすことでしょう。日本の技術基盤は、特にAIスーパーコンピューティングの分野において、国際的なベンチマークに達していません。
生成AIにとって重要な大規模言語モデル(LLM)のトレーニングには、IBMのVelaやマイクロソフトのAzureホストシステムのような、世界トップクラスのAIスーパーコンピューターへのアクセスが必要です。残念ながら、日本には現在、そのような高度なマシンを所有する民間企業がありません。
日本は、生成AI能力の向上を目指し、重要な取り組みをいくつも開始しています。経済産業省は生成AIアクセラレータ・チャレンジ(GENIAC)をスタートし、日本の生成AI開発能力強化への取り組みを開始しました。この取り組みは、基礎モデルの作成に必要な計算リソースを企業が獲得できるよう支援し、利害関係者間の協力の促進を目的としています。
日本のAIインフラを開発するために、経済産業省は国内企業6社に対し、AI利用に不可欠なクラウドインフラの強化支援として7億4,000万米ドルを拠出しました。AI技術で世界的に有名なNVIDIAは、この開発の主力企業として選定され、GMOインターネットグループ、KDDI、ソフトバンクなどの大手デジタル・インフラプロバイダーと提携しています。
さらに、日本政府はLLMのトレーニングと生成AI技術の向上に重点を置いた新しいスーパーコンピューターを北海道に構築するために、4,820万米ドルを割り当てる予定です。
また、マイクロソフト は日本のクラウドインフラとAIに29億米ドルを投資することを約束しており、これによりデジタルトレーニングの取り組みが促進され、300万人以上の人々がAIのトレーニングを受ける見込みです。このデジタル能力の向上により、マイクロソフトは日本において、AIの作業を高速化するために必要な最新のGPU(画像処理装置)など、より高度なコンピューティングリソースを提供できるようになります。
こうした動きは、日本が課題克服に尽力し、グローバルなAI産業における主要プレイヤーとしての地位を確立しようとしていることを示しています。
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