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  • 2018/06/13 掲載

ニコンが最近若者に売れているワケ、縮小のカメラ市場に活路ひらく「#」

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スマートフォンで手軽にスナップ撮影ができるようになったことで、カメラ市場は縮小を続けている。その一例として、2018年5月、カシオは不採算のデジカメ事業から撤退することを発表した。そんな時代にあって、カメラ企業はどのようなマーケティング施策を展開しているのだろうか。100年の歴史を持つ老舗、ニコン。その国内のマーケティング戦略を担う、ニコンイメージングジャパンの執行役員 マーケティング本部長 上村公人氏に話を聞いた。
(執筆:中村仁美、聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎)
photo
ニコンイメージングジャパン
執行役員
マーケティング本部長
上村 公人 氏

市場は数年で5分の1に、そんな中生まれた大ヒット商品

 スマートフォンで手軽にスナップ撮影ができるようになったことで、カメラ販売数は減少の一途をたどっている。カメラ映像機器工業会(CIPA)の調査によると、デジタルスチルカメラの出荷台数は、2010年の1.2億台をピークに右肩下がりになっている。2017年度は前年より増えたとはいえ、約2500万台と2010年と比べると約5分の1の出荷台数だ。

 デジタルカメラと一口にいっても、レンズ一体型のコンデジタイプから、レンズ交換式のノンレフレックス(ミラーレス一眼など)、フルサイズの一眼レフまでさまざまあるが、中でもスマートフォンの影響で苦戦を強いられているのが、レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラである。また一眼レフカメラも、年々、出荷台数、売上金額ともに減少しており、好調とはいえない。

画像
35mmフルサイズ一眼レフカメラ「D850」。カメラ記者クラブ主催のカメラグランプリ2018で、「あなたが選ぶベストカメラ賞」「カメラ記者クラブ賞」をダブル受賞
 そんな中で、数年来のヒット商品となった一眼レフカメラがある。それが2017年9月に発売されたニコンの35mmフルサイズ一眼レフカメラ「D850」だ。

 同カメラは本体だけで約40万円もする機種にも関わらず、「発売してから多くのお客様にお買い求めいただき、日本では当初計画の2倍近い売れ行きとなりました」とニコンイメージングジャパン 執行役員 マーケティング本部長の上村公人氏は語る。

 「フルサイズ一眼、しかも約40万円の機種というと、ユーザーは40代、50代以上の写真を趣味にしている男性をイメージするかと思いますが、売れ行きを支えているのは、これまでなかなか手にしてもらえなかった若い人たちだと感じています」と上村氏。

 カメラ人口減少の最中、なぜこの時代、この「若年層」というターゲットにニコンのカメラが刺さったのか。背景にあったのは、同社のファン戦略だった。

ツイッター・フェイスブック・インスタグラム、それぞれ役割が異なる

 ニコンは現在、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムに公式アカウントを持っている。その運営管理を行っているのが、上村氏が率いるニコンイメージングジャパンマーケティング本部だ。現時点でツイッターは約11万人、フェイスブック約24万人、インスタグラムで約4万人のフォロワー数を抱えている。

 ニコンがSNSの活用を始めたのは、2010年。「当時は企業がSNSを始めるのは、おっかなびっくりの時代だった」と上村氏は振り返る。そんな時代にニコンがSNS活用に踏み切ったのには理由がある。「当然、社内にはSNS活用に対する慎重論はありました。ですが、私たちがこれまでつかめていなかった新しいお客さまを獲得したいという強い思いがあったのです」と上村氏は語る。だからこそ、他社に先んじてまずは始めてみることになったのだという。

 ニコンがSNS戦略でターゲットとする顧客層は20代~30代男性層および女性層だが、世間がニコンのカメラに抱くイメージは、かねてよりハイクオリティを信条としてきた「プロフェッショナル」なイメージだ。

 そこで、「2010年に開始したツイッターでは初心者にも親近感を持ってもらえるよう、ニコンちゃんというキャラクターを立てて、お客さまとのやり取りを行っています」(上村氏)

 ニコンちゃんはおしゃれとカメラが大好きな25歳の女の子。カメラは「D3400」を使っており、日常の様子やそれらのカメラで撮った写真、および豆知識を発信しているという。もちろんお客さまからの問いかけがあった場合は、返信(リプライ)も行う。


 2013年から開始したフェイスブックは企業情報や新製品情報、撮影ノウハウなど比較的オフィシャルな情報を中心に発信している。

「こちらもツイッター同様、若い人や女性を取り込みたいという思いで始めました。当初は女性が好む写真や初心者にもわかりやすい写真をメインに載せていましたが、最近は昔からのカメラ愛好家のお客さまもSNSから情報を取り始めたので、企業情報と新しいお客さまが欲されている情報をバランス良く発信するようにしています」(上村氏)

 ツイッターをお客さまとのインタラクティブなコミュニケーションの場、フェイスブックをよりオフィシャルな情報の告知の場としているのである。さらに、ニコンイメージングジャパンが2017年より始めたインスタグラム「nikonjp」はお客さま同士がコミュニケーションを取れる場としての役割を担っている。


「「nikonjp」では『#light_nikon』というハッシュタグを付けて投稿された写真を紹介しています。現在の投稿数は27万件。フォロワー数はまだ4万人ですが、毎月3000人程度増えているという状況です。お客さま同士が、ニコンのカメラで撮影した作品を通じてコミュニケーションするプラットフォームとなりつつあります。単純にフォロワーの数だけみれば規模の大きいアカウントはほかにもありますが、ニコンのSNSの特徴は、フォロワーに熱心なニコンファンが多いこと。SNSは、そういった熱心な支持者を増やす場にもなるのではと期待しています」(上村氏)

【次ページ】マーケティング成果は?ニコンが次に狙う領域は?
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