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フェイクニースの拡散を助長している、ユーザーの個人情報で巨万の富を得ている、政治に介入している…。最近、ソーシャルメディアに対する風当たりが強い。社会インフラの1つとなりつつあるソーシャルメディアだが、そのリスク対策にはもろさも露呈している。今後、ソーシャルメディアはどこに向かうのか。フェイスブック、ツイッター、リンクトインの幹部が集結し、ソーシャルメディアが抱える課題やその対策、今後の展望などを語った。
ソーシャルメディア、それぞれの立場
2018年3月に米国ラスベガスで開催された米アドビシステムズの年次コンファレンス「Adobe Summit 2018」にツイッター バイスプレジデント コンテンツ&パートナーシップグローバル統括のケイ・マダディ氏、フェイスブック バイスプレジデント マーケティング パートナーシップ担当のジーン・アルストン氏、リンクトイン バイスプレジデント ブランド&コミュニケーション担当 メリッサ・セルチャー氏が一堂に会した。
マダディ氏はツイッターを「公共のスピーカー」と表現する。最近は世界中で議論を巻き起こす米大統領の発言が、ツイッターから始まることも多い。「善し悪しは別にして、ツイッターで議論の種を巻き、それに対して世界中の人が反応する。こうしたプラットフォームは他に存在しない」(同氏)。
一方、リンクトインのセルチャー氏は、「(リンクトインは)労働者に対して、可能性を提供するプラットフォーム」だと主張する。専門性を有した人材と、それを必要としている企業/組織のマッチングを行う。セルチャー氏は「(ツイッターと異なり)情報は特定ものであり、誰でも発信/閲覧できるものではない」と語る。
これに対しフェイスブックのアルストン氏は、「(フェイスブックは)コミュニティを構築できるプラットフォーム」であると語る。「世界中の人がコミュニケーションする場所を提供し、(コミュニケーションを密にすることで)人々にとって、世界をより身近にできる存在だ。我々はその“責任”を負っている」(同氏)。
プラバシーが守れないなら、フェイスブックは価値がない
アルストン氏が「責任を負っている」と語る背景には、同社の個人情報流出事件がある。コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカは、約5,000万人のフェイスブックユーザーのプロフィールを不正に収集した。そして、2016年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が有利になるよう、フェイスブックユーザーのプロフィールを利用してキャンペーンを行ったのである。
これを受け同社の最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグ氏は2018年4月10日、米議会上院の公聴会で証言。約8700万人の個人情報流出を認めるとともに、個人情報の保護や、特定国家/組織の選挙キャンペーンの不正介入について、対策強化を約束している。
アルストン氏はフェイスブックのプライバシー保護対策について「我々は(プライバシー保護を)真剣に考えている。(CEOの)マークは『ユーザーのプラバシーを守れないならば、フェイスブックの仕事に価値はない』と言い切っている」と力説する。
同社は「どの情報を開示し」「どの情報を保護するのか」といった情報は、サイト規約として公開している。また、「誰に対して自身の書き込みを表示するか」は、ユーザー自身で設定できるようになっている。アルストン氏はこうした運用ポリシーを説明したうえで、「もし、情報の誤用が発覚した場合には、速やかに(どの情報を誤用したのかを)公開/発信していく。フェイスブックは課題に真剣に取り組んでいる」と説明した。
プライバシー保護の問題は、ツイッターも対岸の火事ではない。マダディ氏は「ツイッターはパブリックプラットフォームなので、基本的にすべての情報は公開/検索共有できる。我々のクライアントやパートナーにもデータを提供しているが、これは(ユーザーがツイートした)パブリッリクのものだ。また、差別や個人攻撃につながるツイートは、チェックバランス機能でスクリーニングをしている」と説明した。
一方、リンクトインにとって、プライバシー保護は生命線である。キャリアや専門性情報を扱う同社にとって、個人情報が漏えいすれば、登録者(ユーザー)と企業の信頼を一瞬で失う。セルチャー氏は、「リンクトインは『Clarity(透明)』『Choice(選択)』『Control(制御)』の『3C』を企業理念に、会員ファーストの考えに則ってサイトを運営している。この理念は従業員全員が共有し、定期的にトレーニングを行って徹底している」と自社の取り組みを紹介した。
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