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  • 2018/01/12 掲載

先の見えない「VUCA」時代、あなたは「働くこと」をデザインできるか?

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「働くこと」へのモチベーションの変化や雇用スタイルの多様化を見据え、リモートワークや複業解禁へと踏み切る企業の具体施策を目にする機会が増えている。すでに働き方をカスタムしている実践者達は、今どんな情報や未来をとらえているのか。2017年11月17~23日の7日間、「これからの働き方をデザインする」をテーマに開催された『TOKYO WORK DESIGN WEEK2017』では、ついに本格的に突入したといわれる「VUCA」時代における働き方について、多様な視点からキャリアデザインへの提言が行われた。
執筆:Miho Iizuka
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メイン会場の渋谷ヒカリエだけでなく、逗子、関西、都内各所でもさまざまなワークショップやカンファレンスが展開されたTWDW2017。参加者は20~30代の会社員が中心、男女比もバランスの良いオーディエンスが詰めかけた

VUCA(ブーカ)とは
Volatility(変動)、Uncertainly(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語。現在の社会経済環境が、非常に予測困難な状況にあることを表す。

働き方の多様性をどうとらえるか

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2013年から開催されているTOKYO WORK DESIGN WEEKも今年で5回目を数え、展開されるコンテンツや参加者のモチベーションも多様化している

 毎年11月の「勤労感謝の日」に合わせて開催される (企画運営:& Co.,Ltd)は、20~30代を中心に、これからの新しい働き方やビジネスの未来を考えるキッカケづくり、同じ思いを持つ者同士をつなぐ「場づくり」を行うことを目的とする、国内最大級の“新しい働き方の祭典”だ。

 全国各地から累計1.3万人を動員。運営ボランティアも100人以上を集め、登壇者には実にさまざまな切り口で“働くこと”をデザインしている実践者が揃う。今年も渋谷を中心に都内会場、大阪、逗子など各所で7日間にわたって、カンファレンスを中心に多彩なプログラムが展開された。

 初日の基調講演では「働き方を考える100人会議」と題し、ゲストスピーカーを立てずに“参加者全員が主役”というスタイルが採られた。

Tokyo Work Design Week 2017 基調講演ダイジェスト映像


 「新しい働き方」に強い関心が寄せられ、いくつものトピックスが登場したここ数年の中でも、特に今年は“変化”を目の当たりにしているかもしれない。にわかに信じがたいような事件・不祥事・不正が表沙汰になり、これまでの価値観や慣例のままでは立ちいかない何かを、無意識に感じとるような1年だったのではないだろうか。

 冒頭に触れた「VUCA」とは、90年代後半、アメリカとアルカーイダの戦局の中で生まれた軍事用語が元になったものだ。組織のトップが作戦を立て現場が実行するという戦い方から、誰がトップに立つわけでもなく思想に同調する人々が同時多発的に起こすテロのように、戦い方が根本的に変化した時代、そしてそれに対応しなくてはならないことを指す。

 「個の時代」や「仕事を通じた自己実現」といった言葉で華やかに語られるキャリアデザイン論も、事業の継続性や雇用リスクに悩む企業・自治体における「働き方改革」「オープンイノべーション」への取り組みも、現実的な読み方をすれば、先行きが予測しにくい実際の雇用機会においては、そうせざるを得ない局面を迎えているということでもある。

 今回、TWDWの各プログラムにおいても「なぜそれをするのか、自分には何ができてどう稼ぎたいのか」という、持続可能な生産性に対しての現実的な問いが投げかけられていたように思う。

職業(DO)に執着せず、あり方(BE)を重視する

 AIやロボットなどのテクノロジーを活用したイノベーションが、多くの人々の仕事を代替するというトピックスも、当たり前のように飛び交うようになった。

 危機感をあおるためにテクノロジーが進化しているわけではないにせよ、既存事業や職種がいつまであるものなのか保証はない。ルーティンに沿うだけの生産性なら、イノベーション以前に代替も致し方ないだろう。こういった潮目の変化を、どうすれば好機ととらえることができるのか。

 自分は何に関心があり、どんな夢を抱き、誰とこれからの日々を過ごしたいのか、多くの実践者達が登壇したカンファレンスでは、今ある職業からどれかを選ぶのではなく、「自分に合った仕事を自分で作る」ことも提唱された。

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6日目第2部『今、話したい「Being」と「Working」の関係』に登壇した、銭谷 侑氏(デザインファーム「the Tandem」創業者、LITALICOマーケティングマネージャー)、モデレーターをつとめたモリ ジュンヤ氏(inquire Inc. CEO)、兼松 佳宏氏(勉強家/京都精華大学人文学部 特任講師)(写真左から)

兼松氏:20代の頃、「自分探し」でいろいろ仕事を変えてみてもしっくりこず、ずっと不安だった。そこで、自分はどのようなことをしたい人なのかを考え、それが「勉強家」であると据えてみたら、いろんなものが自分の仕事に思えるようになった。それまで自己肯定感がなかったのが、「勉強家」で生きていけそうな気がした。

 「勉強家」を肩書きとするにあたり、兼松氏はまず自身の中にある要素を“職業(DO)とあり方(BE)”に分けてマッピングを行った。その図を見ると、今ある職業や職種、肩書だけがすべてではないことが感覚的に見えてくる。

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図の中央にあるのが職業や肩書き(DO)、その外側には「どのようなことをする人」なのか(BE)が書かれている

銭谷氏:職業(DO)は自分の価値を最大化する定義づけで、あり方(BE)は自分の幸せを最大化する定義づけということになるのかな。

モリ氏:だから、あり方(BE)自体はそんなに変わらないのかもしれないですね。

兼松氏:要は執着しないための考え方なんです。職業(DO)に執着せず、あり方(BE)を重視する。そうすれば職業がなくなるかもしれないという危機にも焦らなくていい。かといって、あり方(BE)に執着もしない。最終的に自分の名前は残るから。

 何か1つだけが仕事でもなく、どれか1つだけが使命でなくてもいい。そのように自由な発想でキャリアをとらえると、見える景色も変わってくる。

働くことは暮らすこと、暮らすことはご飯を食べて生きること

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6日目第3部『「働き方を考える」は「食と身体を考える」こと』に登壇した、石井 智康氏(石井食品 マーケティングビジネスサポート部 取締役執行役員)、モデレーターの江口晋太朗氏(TOKYObeta Ltd.代表/編集者)氏、寺尾 卓也氏(ALL FARM 取締役執行役員・農場長)(写真左から)

 「働くことでご飯を食べる、健康な身体で働く」という根源的なテーマにも議論が進んだカンファレンスもあった。

 登壇した石井氏は、千葉県いすみ市と東京の2拠点を持ち、地域食材を用いた商品開発を手掛ける。「イシイのミートボール」で知られる石井食品は、素材のおいしさを最大限引き出すため、すべての商品製造過程において食品添加物を使わない「無添加調理」を20年以上も続けている。素材の良し悪しがダイレクトに伝わるため、そのまま食べてもおいしい食材を厳選しているのだという。

 代々木上原など都内6店舗に野菜レストラン「WE ARE THE FARM」を経営する寺尾氏は、農業や食べること、食べるシーンすべてをデザインするために、店舗と同時に使用食材を育てる農場も起業。野菜本来のおいしさを届けたい想いで「固定種」「無農薬無肥料」でのにこだわり、年間150品目以上の野菜を栽培している。

石井氏:病気になって身体が壊れたときのコストは、働き方うんぬんの前にお金や時間を吹き飛ばしてしまうもの。食や運動等に気をつけることは、普段の仕事のパフォーマンスを上げることにも繋がる。

寺尾氏:野菜という、何の声も出さない生き物を扱う仕事。育ちが悪かったとしても、野菜相手に怒鳴ってもしょうがない。でも、自分が変われば野菜も変わる。いいものをつくるには、作り手の状態がいい状態じゃないと駄目。

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「都市や生活の再編集」をテーマに、企画プロデュースやリサーチを手掛ける江口氏も、経済的・社会的な視点も含めた広義な意味で「健康」をとらえながら、より働き方や生き方について考える「社会づくり」をしていきたいと語った

 「ウェルネス経営」というキーワードと共に、社員の心と体の健康を重視する企業も増えている。肉体的な健康だけでなく精神の健康、さらには社会的な健康にも働きかけることで、単なる福利厚生の見直しにとどまらない生産性の向上をねらうものだ。

 周りから絶賛されるような仕事を成し遂げていても、体を壊してからはじめて食や健康の大切さを実感するようでは、クールでクリエイティブな働き方をしているとは言いがたい。

 働くことは暮らすこと、暮らすことはご飯を食べて生きること。「リアルな私生活の循環」をベースに働くことや稼ぎ方を考えてみるのもいい。VUCA時代に生きるということは、自分はどうしたいかを考え、同じく多様化する相手の個性や選択を受け入れることの繰り返しにもなるのだろう。

 ではなぜ、あなたはその働き方や生き方を選ぶのだろうか?

【次ページ】 「愛と尊敬」からひもとく、仕事の本質とは? 炎上するものはどこかで「愛と尊敬」が欠落している
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