- 2017/11/06 掲載
ブロックチェーンの活用事例6選、これでビジネスはどう変わるのか
ブロックチェーン導入に積極的だったビル・ゲイツ氏
ブロックチェーンとは元々ビットコインのシステムとして構築されたものだった。しかし、中央管理ではなく分散型のデータベース、という考え方が「処理の速さ」「データ書き換え不可など、「ハッキングに強い」「低コスト」というメリットにつながり、一般ビジネスへの導入が促進されて来た。ブロックチェーン導入に積極的だったのは、元マイクロソフトCEO、ビル・ゲイツ氏だ。2015年の段階で「レベル・ワン・プロジェクト」と銘打ったブロックチェーン導入を実施。今年10月にはゲイツ氏が立ち上げた財団であるビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は新たに「Mojaloop」というオープンソース形式のブロックチェーンを使ったペイメント・プラットホームを構築した。
銀行などへのアクセスがない、世界におよそ20億人と言われる人々が「安全にお金を保存し、また支払いを行う」ことが目的だという。
Mojaloopは新興企業であるリップルの技術を使い、またモバイルアプリケーションとして携帯電話会社エリクソン、ファーウェイ、テレピン、マヒンダ・コンビバなどが開発したオープンソースのAPIが使用されている。
世界の経済格差を縮める
金融機関にとってもこれまで到達できなかった顧客層にこのアプリにより到達し、ビジネスを広げるチャンスでもある、と訴える。目的は銀行口座、クレジットカードなどを使えない人々の経済活動を支援し、世界の経済格差を縮めよう、というところにある。
ゲイツ財団が提供するのは「決済、支払い」というクリプトカレンシーを使った実際的な経済活動で、ブロックチェーンの最も基本的な使い方だ。
この使用目的としては、ニューヨークに本拠を置き、世界中に家具付きの長期滞在型アパート(マンスリーマンションのような形式)を展開する「stayawhile」が、世界初の「クリプトカレンシーによる家賃の支払い」を提供する不動産会社になる、と発表した。
同社はERC-20というイーサリアム(ブロックチェーンの一種)を使ったトークンを10月30日からクラウドセールスで販売し、これを使って世界中のStayawhileに滞在できるシステムを構築する。たとえば国際的なビジネスマンなどが利用する場合、滞在国との為替などを勘案せずに気軽に滞在が可能となり、国際的に人を動かす企業などに積極的に売り込む方針だ。
AR/VRや政治でもブロックチェーンを活用する企業が登場
しかし、ブロックチェーンの利用はそれだけではない。多数のコンピュータを使って演算能力を高める、という考え方は、今後の発展が予想されるAR/VRの分野でも活躍が期待される。AR/VR用の3Dコンテンツを作成するには多大なデータ処理が必要となる。これをブロックチェーン技術を使って行おう、というのがカリフォルニア州サンタ・クララにある「Cappasity」社だ。
同社はこの目的のため10月25日からARトークンのクラウドセールス(ICO:新規仮想通貨公開)を開始。このトークンを使い、世界中で作成されたAR/VRコンテンツをダウンロードすることができるという。
Cappasityでは4週間のトークン販売で3000万ドルの投資を集めることを目指しているが、この技術が確立されればAR/VRコンテンツの開発に拍車がかかる、と業界からも注目されている。
政治向けブロックチェーンはどんな課題を解決できるのか
変わったところでは、政治の世界で利用されているブロックチェーンもある。「Sovereign」と呼ばれるアプリはブロックチェーンを使い、人々が直接政治に物申す、「直接的民主主義」を目指して作られた。このアプリを製作したのはアルゼンチン出身のサンティアゴ・シリ氏で、同氏は「インターネットにハッキングはつきものだが、ハッキングできないシステムとしてのブロックチェーンに注目した。またインターネットを直接政治につなげることで、人々の意思をダイレクトに反映する政治が可能になるのではないか、と考えた」と語る。
Sovereignは政治だけではなく、たとえば企業内の会議、国際会議などの場でも新しい形の投票の手段として採用される可能性があり、これまでの選挙が抱えていた問題(投票率の低さ、組織票の強み)などを解消できる手段として成長が見込まれる。
ブロックチェーン起業を支援する企業も
こうしたブロックチェーンの成長を見越し、ブロックチェーンによる起業を支援する企業も登場した。元MySpaceのCEOであるマイク・ジョーンズ氏の「Science」社だ。シリコンビーチ、と呼ばれるカリフォルニア州サンタモニカにあるScience社はおよそ1億ドルに相当する独自のクリプトカレンシーを販売し、ブロックチェーンを使った起業支援に利用する、という。
投資者は起業が成功した場合にクリプトカレンシーの形で配当を受け取るが、このカレンシーはビットコインなどとも交換可能だ。
10月29日現在でScienceのックリプトカレンシーはすでに1100万ドルの販売を達成しており、注目度が見て取れる。
Scienceはすでに「SpringRole」と名付けられた企業を立ち上げており、こちらはブロックチェーンによってユーザー・プロファイルの偽IDなどの詐欺を防ぐことを目的としている。
たとえば企業の人事が人を雇おうと考えた時、応募者の身元調査などが必要になるが、これをブロックチェーンによって行う、という使い方ができる。大学などを巻き込むことで学歴詐称などが行いにくくなる。
ビジネスモデルとしては、ある人間が企業に無事採用された場合、身元確認を行った周辺(大学、以前の企業、銀行その他)がクリプトカレンシーによる報酬を受け取る、という形だ。
現在、米国では合成IDと呼ばれる、複数の人間と架空の情報を織り交ぜた存在しない人間を作り、クレジットカードやローン詐欺を行う、というのが問題化しているが、ブロックチェーンの導入によりこうした合成IDが行いにくくなる、と期待されている。
さまざまな分野でこれからも導入が進みそうなブロックチェーン。クリプトカレンシーはこれまで投資目的、というのが主な購入理由だったが、今後は実際の通貨として利用できる場面が増えるかもしれない。為替の不要な通貨として国際ビジネスのあり方を大きく変える可能性もある。
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