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- 2019/07/19 掲載
本田圭佑氏がブロックチェーン事業に参入する理由
ブロックチェーンに着目した理由
「今日はサッカー選手として来たわけではありません」本田氏はこう切り出し、セッションをスタートさせた。
2008年、オランダのVVVフェンロに入ってから、世界中のいろんな国に行くことが増えたという。中には「車が止まったとき、まだ小さな子どもが弟や妹を背負って、物乞いをしている姿を見たんです。サッカーしかしてこなかった僕ですが、そのときに『何かしないといけない』と思いました」と、本田氏は振り返る。
それをきっかけに2012年、サッカースクールを設立。「子どもたちに夢を持ってもらう」ための活動を開始した。
しかし、本当に貧しい子どもたちは、家族の労働力となっているため、夢を持つことができない。「サッカースクールだけでは解決しない」と感じた本田氏は、2016年から役に立つテクノロジーや志の高い企業に投資をするエンジェル投資を始めた。
そんな本田氏だが、自身の資金では限界があると感じ、2018年、ウィル・スミス氏らとともに、「ドリーマーズ・ファンド」を立ち上げた。同ファンド経由でも、約30社に投資をしているという。
このような活動を通じて「挑戦したい人たちをサポートしたいと思っています」と本田氏は語る。このミッションを実現するため、本田氏が新しく挑戦するプロジェクトが「ブロックチェーン・ファンド」だ。
では、なぜブロックチェーンに着眼したのか。その理由について本田氏は以下のように説明する。
「日本円は世界的な信頼を獲得して(価値が)安定しています。しかし、自国の通貨に信用がなく、国内で外貨(主に米ドル)のほうが信頼度が高い場合もあります。たとえば、僕がよく行くカンボジアは米ドルのほうが信用されていて、街中では米ドルが流通してます。カンボジアだけではなく、アフリカ大陸にもそのような国がたくさんあります。そんな、『自国のお金や土地などの財産がいつどうなるかわからない』国の問題を解決する技術として、ブロックチェーンに注目しました。ブロックチェーンは投機的でよいイメージがないかもしれませんが、分散型であるため、誰の手にも支配されません。そういう思想に共感したのです」(本田氏)
本田氏は1年前からブロックチェーンに関する勉強をしつつ、ファンドを立ち上げるために仲間を探してきたという。その仲間が2018年11月に国際ブロックチェーンカンファレンス「Node Tokyo」を開催した大日方祐介氏である。
大日方氏は早稲田大学在学中からバックパッカーとして東南アジアを巡り、その経験が買われて独立系ベンチャーキャピタルのEast Venturesに参画。国内外のスタートアップの投資や発掘、支援に従事してきた経験を持つ人物だ。
国内ブロックチェーン業界の現状は…
現在、ブロックチェーンにはさまざまなな企業が参入している。トヨタ自動車やTEPCO、三菱UFJフィナンシャル・グループなどが実証実験を開始したりしている。メディア領域でもヤフーがブロックチェーン・仮想通貨領域におけるメディア「コインデスク・ジャパン」の運営を開始している。また、リクルートや野村證券は同分野に積極的に投資を開始している。スタートアップもこの動きに呼応している。大日方氏は「2017年の日本には、ブロックチェーンや仮想通貨に関係のスタートアップはほとんどなかったにもかかわらず、現在の市場はエコシステム的に拡大しています」と説明する。
とはいえ、一般の人々にはその盛り上がりの“熱”は伝わっておらず、イメージしにくいようだ。本田氏は、「どのくらいの盛り上がりなのか、その熱量を数字があれば示してほしい」と大日方氏を促す。
「2018年3月に開発者向けにイーサリアムのミートアップを東京大学の講堂で開催したところ、立ち見も含め、500人ぐらいが集まりました。同ミートアップにはイーサリアムの考案者のヴィタリック・ブテリン氏が登壇したこともありますが、盛況でした。だから私は、同年11月に『Node Tokyo』というブロックチェーンや仮想通貨のテクノロジーにフォーカスしたカンファレンスを開催したのです。来場者は500人で。日本マイクロソフトやNRI、メルカリなどがスポンサーを務めてくれ、かなり盛り上がりました」(大日方氏)
本田氏も「ブロックチェーンは出遅れたら取り返しのつかないぐらいすごいスピードで進化しています。いろいろな専門家に話を聞くと、皆さん、今のブロックチェーンの雰囲気はインターネットが出てきたときと似ているとおっしゃる。だから僕は『夢を追い続けられるような人を応援する』ことを、このブロックチェーンの技術を実現したいという思いで、このファンドを立ち上げることに決めました」と語る。
【次ページ】世界に視野を向け、チャレンジを
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