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  • 2016/10/13 掲載

IoTビジネスがたった1枚でわかるチャート、5つの階層に分ければ整理できる

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これまでIoT(モノのインターネット)の分野は話題ばかりが先行し、具体的な姿が見えていなかった。しかし、各社が具体的な製品やサービスを投入する段階に入ってきたことで、徐々にその輪郭がはっきりしてきた。最終的に産業界の姿がどうなるのかはまだ分からないが、どのセクターにどの程度の影響が及ぶのか、そろそろ議論を始めてもよい時期だろう。そこで、本稿では「IoTビジネス」を5つの階層構造に分けて分析してみたい。
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「IoTビジネス」はとにかくわかりづらい

先行するドイツ勢と米国勢が融合

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 製造業の分野では、あらゆる機器にセンサーや制御装置など搭載し、これらをネット上で統合することで高度なサービスを提供しようという新しい試みが進んでいる。すべてのモノがネットにつながることから、こうした一連の仕組みをモノのインターネット(IoT)と呼んでいる。

 IoTが普及すると、これまでモノを作るだけだった製造業が巨大なサービス産業に変貌する可能性が見えてくる。各社が対応を急いでいるのは、IoTの普及によって従来の業界秩序が激変する可能性があるからだ。

 これまでIoTの分野をリードしてきたのは主にドイツ勢と米国勢である。ドイツでは2013年4月、製造業大手のシーメンス、ボッシュ、IT大手のSAPなどが参画して「プラットフォーム・インダストリー4.0」を設立。技術仕様の標準化に乗り出していた。一方、米国ではGE(ゼネラル・エレクトリック)、IBMなどが中心となって2014年3月「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」を設立。こちらも技術標準を目指して活動を行っている。

 米国ではこれと平行して2015年11月、シスコシステムズ、マイクロソフトなどが「オープンフォグ・コンソーシアム」を結成し、データの分散処理を柔軟に行うための仕様策定に乗り出している。

 ドイツのインダストリー4.0は工場など製造現場における技術仕様という色彩が強く、米国のIICは、機器に搭載するデバイスの標準化に力点が置かれている。両団体は独自に標準化作業を行っていたが、2016年の3月には相互の連携について合意。ドイツと米国というIoTの2大勢力が事実上の統合に向けて動き出した。

 今後はドイツと米国で仕様のすり合わせが進み、最終的な国際標準仕様が確立する可能性が高い。また、オープンフォグ・コンソーシアムは、他の2団体の成果を補完する内容なので、最終的にはこちらの仕様も国際標準に組み込まれてくるだろう。

 日本勢はIoTへの取り組みが遅れていたが、IoTの共同研究を行っている産官学の協議会「IoT推進コンソーシアム」は、米国の共同研究組織と相互協力する方針を固め、10月3日に米国側と正式に覚書を交わした。国際的な流れがほぼ固まった状況にあることを考えると、米国勢に合流するというのは現実的な選択だろう。

具体例が見え始めている

 では、具体的にIoTが普及すると、産業界はどのような影響を受けるのだろうか、またどのセクターが伸び、どのセクターが衰退することになるのだろうか。IoTの全体像はまだ見えていない状態だが、具体例を目にする機会は着実に増えてきている。

 GEはIoTを実現するためのシステム基盤である「Predix」に10億ドルを投じており、顧客に納入したジェットエンジンや蒸気タービンなどにはすでに多数のセンターが搭載されている。GEは1日あたり5000万件のデータを処理しており、顧客に対して省エネや運転効率の最適化を提言している。

 たとえば、アジアのLCC(格安航空会社)であるエアアジアのケースでは、ジェットエンジンの運用改善によって、2014年には1,000万ドルの削減に成功。2017年には3,000万ドルの削減を見込んでいるという。

 日本では2016年9月に、東京電力の火力発電事業会社である東京電力フュエル&パワーが、富津火力発電所にGEのIoTシステムを導入すると発表している。設備に取り付けたセンサーが収集したデータをシステムで分析し、発電効率を向上させるという。また、神戸製鋼所が運営する栃木県真岡市の発電プラントではシーメンスの製品が採用されているが、こちらもIoTを活用した長期的な運用サービスの提供が大前提となっている。

 同じく9月には、日本マイクロソフトと家電大手のアクアが、コインランドリーへのIoT活用に関して提携すると発表した。アクアはコインランドリー向けの業務用洗濯機を製造しており、国内の1252店舗において約1万6千台が稼働している。洗濯機に搭載したセンサーから取得する稼働情報をマイクロソフトが管理するクラウドに送信し、利用状況をより詳細に監視する。機械学習を用いて故障予測の精度を向上させたり、システムを開放して多業種との連携などを目指すという。

IoTビジネスを形作る5つの階層構造

 これら事例はあくまでIoT活用のひとつの側面でしかないが、IoTが具体的にどのような形で社会に入り込んでくるのかを示す典型的な事例といってよいだろう。この話を産業界全体に拡張した場合、一連の動きについてどう解釈すればよいのだろうか。これについては、階層構造(レイヤー)で考えるのがもっとも適切だろう。

 IoTのビジネスは主に5つのレイヤーに分けて考えることができる。それぞれのレイヤーがどのような役割を持ち、どこの付加価値が最大になるのかについて分析することができれば、おおよその業界秩序は見えてくる。レイヤーを5つに分けたのは筆者の判断だが、最終的にどのようなレイヤー構造として捉えるのが最適なのかについてはさらに議論が必要だろう。今後、識者の方々が、多くのアイデアを提唱されることを期待したい。

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IoTビジネスが一目でわかる5つの階層構造

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