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  • 2016/08/02 掲載

国交省甲斐氏が解説する改正航空法、東大中村氏が紹介するドローン国際標準化への動き

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昨今、ドローンを代表とする無人航空機が普及し、空撮、警備、農薬散布、インフラ点検などの新分野で活用が期待されている。その一方で、首相官邸への墜落や善光寺での落下のような事件も起きるようになった。国土交通省の甲斐 健太郎氏は「これを受けた緊急的な措置として、無人航空機を飛行させる空域と飛行に関する基本的なルールを決めることになった」と説明する。同氏は「無人航空機の安全ルールに関する整備と現状等について」をテーマに、改正航空法の概要と制度設計の考え方を示した。また、東京大学の中村 裕子氏は、小型無人機に関する標準化の海外動向について解説した。

改正航空法で50万円以下の罰金も

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国土交通省 航空局安全部安全企画課 無人航空機企画調整官 甲斐 健太郎氏
 これまで航空機というと、法的な対象は有人航空機しかなかった。そこで今回、無人航空機を新たに定義し、その対象に含むことになった。「飛行機や回転翼航空機などで、人が乗れないドローンやラジコン機などのうち、遠隔操作や自動操縦によって飛行できるものを対象にすることにした」(甲斐氏)という。ただし、重量が200g未満のものは、改正航空法の対象外となる。

 この改正航空法では、飛行空域と飛行方法に関する2つの規定がある。まず飛行空域については、航空機の安全に影響を及ぼす恐れのあるケースとして、空港などの周辺、地表または水面から150m以上の高さ(最低安全高度)での飛行を禁止。また人口集中地域(東京23区内など国勢調査で設定)の上空で飛ばすことも禁止だ。「もしドローンを飛ばしたい場合には、いずれも国土交通大臣の“許可”が必要になる」(甲斐氏)。

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改正航空法の概要。禁止されている飛行空域は、空港などの周辺、地表または水面から150m以上の高さのエリア、人口集中地域だ。承認なくドローンを飛ばすと罰金を科せられる

 無人航空機の飛行方法については、日中、肉眼で直接目視できる範囲で、他のモノや人と30mの距離を維持すること、祭や縁日など人が多い催しの上空や、爆発物などの危険物の輸送、モノの投下も禁止している。これらのケースでドローンを飛ばす場合は、国土交通大臣の「承認」が必要になる。たとえば農薬散布は、危険物にもバラマキ(投下)にもあたるため、承認が求められる。前出のルールに違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられるので注意したい。

「すでにルールに違反して書類送検された事例もあるため、許可・承認が必要な場合は必ず申請をしてほしい。ただし事故や災害時の国・地方公共団体による捜索・救助などのケースは特例で除外となる」(甲斐氏)

 では、今回の改正航空法後の許可・承認状況はどうなのだろう? 5月初旬で約5000件の申請を受け、3600件ほどの許可・承認を行っているという。申請内容は、広告や広報用の空撮、工事現場の撮影、農薬散布のほか、趣味での飛行が大半を占めるが、遺跡調査といった変わったものもある。5月27日の時点では月に1000件ほどのペースで申請届が来ているそうだ。

 申請をスムーズにするため、事前に電話やメールで相談を受付け、Webサイト上で申請書の記入に関する情報も充実させている。甲斐氏は「基本的に申請されたものに対して、不許可や不承認することはない。むしろ申請書の記載漏れや不備で引っかかることが多い。申請はPDF形式だと審査時にコメントがつけにくいため、オフィス形式にしたほうがスムーズに審査が進むと思う」と行政側の立場からアドバイスした。

3年以内にドローン配送も可能に?!

 では、改正航空法が施工され、次の動きはどうなるのだろうか? 政府は昨年11月に「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を立ち上げた。この官民協議会は、「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすること」を目標に、制度設計を協議するために設置されたものだ。

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「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」。早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を目指し、制度設計の方向性と技術開発のロードマップをまとめている

「協議会は、内閣官房のもと、関係府省庁、小型無人機メーカー・関連団体など、32団体7社で構成されている。夏までに制度設計の方向性と技術開発のロードマップをまとめる予定だ」(甲斐氏)

 主な検討事項は、ライセンスや事故報告などの運用ルールを決める「小型無人機の安全のための制度設計」、官民双方による「改正航空法の運用の把握と安全確保策の体系化・共有」、経済産業省が主体で進める「小型無人機を活用した事業・業務振興のための環境整備」、民間団体の活動を後押しする「小型無人機の安全確保等のための自主的取組の検証」、技術開発を推進する「“空の産業革命”の実現に向けた環境整備」の5つだ。

 同氏は、小型無人機の利活用と技術開発のロードマップの方向性について紹介した。官民協議会では、将来的な利用形態を4段階に分けて検討中だという。レベル1は目視内・操縦飛行、レベル2は目視内飛行、レベル3は離島・山間部などの無人地帯での目視外飛行、レベル4が都市部などの有人地帯での目視外飛行となっている。「いずれも重要な点は、機体の安全性をどれだけ向上できるかということ。今後は、航続時間や風雨などへの耐性、衝突回避機能などが求められるだろう」(甲斐氏)と予測する。

 また甲斐氏は、安全確保に向けた制度設計に関する論点と検討の方針にも触れ、「ライセンスや機体認証などの制度については、柔軟性をもって進め、安全性の総合判断を行っていく。ドローンと一口に言っても機体サイズに大小があるため、双方にマッチする合理的な規制が必要だ。航空機や小型無人機同士で衝突が起きない安全ルールや、飛行情報の共有化、さらに今後は国際的な調和に配慮した取り組みも重要になるだろう」とまとめた。

【次ページ】世界で進むドローンの標準化
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