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- 2016/06/15 掲載
Mistletoe(ミスルトウ)孫 泰蔵 氏が指摘する、社会問題とIoTの「功罪」
「一歩間違えればディストピア」
IoTの本質にあるのは「プレディクティブ・アナリシス」
IoTによって生成されるビッグデータは、解析すれば終わりというわけではない。泰蔵氏は「IoTの本質は、ずばり『プレディクティブ・アナリシス』だ。未来を予測することによって劇的に効率を上げたり、事前に準備することで工程を短縮できる」と説き、自らが支援する企業の一部について紹介した。フィンランドのある企業では、街に設置されたゴミ箱にセンサーを付けた「スマートゴミ箱」を開発。ゴミのたまる量をトラッキングし、さらにディープラーニングやプレディクティブ・アナリシスを加え、いつごろにゴミ箱が一杯になるか、その頃合いを98%の確率で予測。ゴミ回収車のルートを最適化することで、収集車の自体も減らせるようになった。またゴミ収集所の位置を変更することで、最終的にコストが85%も激減したそうだ。
IoTの使い方を間違えるとディストピアになる
では具体的にどういう世界が訪れるのか? たとえば農業分野では「スマートファーミング」が確立され、農業が激変する。「有機農法でも、害虫を画像処理で認識し、ピンポイントで駆除するロボットも現れるだろう。安全・安心なオーガニックの作物が安定的に取れる時代がやって来る」(泰蔵氏)
さらに東京大学では、無線でエネルギーを供給する研究を進めている。この技術によりドローンも半永久的に飛べるようになる。そうなると、作物に対する水まきや肥料も常にドローンで補給できるようになるかもしれない。灌漑設備をつくらず、ピンポイントで作物を育成できる農業が登場する。
当然、自動運転によって物流もインフラも変わる。流通系では無人ロボットが動く。道路では、人と物流で専用レーンができ、都市部の渋滞も劇的に緩和されるだろう。「平日の渋滞の6割が物流系のトラックで占めている。これらが分離されれば、非常に効率的で快適なクルマの流れができる」(泰蔵氏)
また、医療の世界でも手術ロボットが普及し、地方でも最先端の医療が受けられるようになるだろう。このように人工知能やロボットが発展することで、バラ色のユートピアが訪れるかもしれない。しかし、そのような楽観的予想の一方で、映画の「マトリクス」や「マッドマックス」のようなディストピアがくると問題を提起する人もいる。
この点について泰蔵氏も「方向性を間違えればディストピア的な世界がやってくる危険がある」と指摘する。たとえば2040年には、先進国では雇用の喪失と都市化の問題がクローズアップされるだろう。「現在の80%の仕事がコンピュータやロボットで置き換わると仕事がなくなり、農村部の人々も都市部へ移動する。失業して収入を得られない人々が増加し、スラム化が進み、治安も悪くなるかもしれない。格差の拡大だけでなく、格差が固定化する階級社会になるバックシナリオも考えられる」(泰蔵氏)
では、もし格差が広がるならば、どうすればよいのか? 格差社会のみならず、日本は世界で最も深刻な高齢化社会の問題も抱えている。そのほかにも、医療や、環境汚染、食料不足、エネルギー不足、教育環境など多くの問題もクローズアップされていくだろう。
【次ページ】パナソニック、ソニー、トヨタからMistletoeに参画する人材も
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