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  • 2016/03/09 掲載

KLab真田社長とドリコム内藤社長、「三途の川を渡りかけた」失敗談と学びを語る

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「失敗は成功のもと」という言葉がある。今輝かしい成功を収めているように見える経営者も、数々の失敗を重ね、それを糧としてきたはずだ。「Like a rolling stone~転がり続けろ」をテーマに、KLab 代表取締役社長CEO 真田 哲弥氏とドリコム 代表取締役社長 内藤 裕紀氏が、自身の失敗談と学びについて披露した。
(取材/構成:編集部 中島 正頼、執筆:井上 猛雄)

スタートアップ直後に苦労するベンチャーの資本政策

 失敗は「Learning Experienceであり、学びである」という観点から、新経済連盟が主催する「失敗力カンファレンス」。今回で2回目を迎える本カンファレンスの第一セッションでは、KLab 代表取締役社長CEO 真田 哲弥氏とドリコム 代表取締役社長 内藤 裕紀氏がパネラーとして登場した。

 モデレーターは、前回のカンファレンスで自身の失敗を語ったクラウドワークスの代表取締役社長兼CEO 吉田 浩一郎氏が務めた。まず吉田氏は、パネラーの両者に「自分にとって最大の失敗は何か?」と問うた。

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KLab 代表取締役社長CEO
真田 哲弥氏

 KLabの真田 哲弥氏の最大の失敗は「資本政策」だという。これまで細かい失敗をしてきたが、それらは後になってリカバリーショットを打てたものばかりだった。しかし、1つだけリカバリーできないものがあった。それが資本政策だ。もともと同社は、モバイルコンテンツを開発するサイバードの研究・開発部門としてスタートした。それが2000年にケイ・ラボラトリーとして子会社として発足し、現在のKLabに社名が変更されて、USENの連結子会社になったという経緯がある。

「スタート時点で、サイバードの100%子会社であったため、自身の持ち株がほとんどなかった。その後、個人資産で株を買い増したが、すでに黒字化していたため、なかなか自己資本率を上げることができなかった。一生懸命に努力して会社を上場させたのに、自己資本が増えないという大きな失敗をした」(真田氏)

 一方、ドリコムの内藤 裕紀氏は、2つの最大の失敗について触れた。1つ目は上場の翌年の赤字だ。法人向けビジネスから個人向けビジネスを立ち上げるために企業買収を試みたが、赤字のために評価が下がり、株式市場から資金調達が難しくなった。

「そのため銀行からお金を借りたが、2期連続で赤字になると担保の会社を取られてしまうという危機に陥った。半年間で資金を返済するか、黒字化しなければいけないという状況になって大変だった」(内藤氏)

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ドリコム 代表取締役社長
内藤 裕紀氏

失敗の中で一番恐いのは、「失敗を認識しない」という失敗

 では、このような失敗から両者はどのように立ち上がったのだろうか? 真田氏は気持ちが切り替わったきっかけを次のように語った。

「持ち株比率が20%以下であり、自分の会社とは言えなかったので、なかなかモチベーションが起きなかった。当時は会社を捨ててゼロからスタートするという選択肢もあったが、やはり仲間と苦楽を伴にして成長していきたい、株主の恩に報いなければいけないという気持ちもあり、会社を支えていこうと考えた」(真田氏)

 さらに、どうしようもない資本政策の失敗時期と同時に、ビジネスモデルの失敗もあったという。

「ケイ・ラボラトリーの設立時から、すぐにスマートフォンの時代がやって来ると踏んでいたが、ようやく2007年になってから普及が始まった。時期を読み違えたため、BtoBの受託開発で食つないだが、成長率は120%ぐらいが限界。そこそこの状態でダラダラしてしまった」(真田氏)

 世の中には、年率110%ぐらいで小さく成長し、それなりに利益を出ている企業も多いだろう。そういった企業は、計画からは大きく下振れしていないため、現状を失敗とは認識していないことがほとんどだ。しかし真田氏は「失敗の中で一番恐いのが、失敗を認識しない失敗だと思う。このままの成長ではダメだ。気づいたときに年を取って後悔しているだろうと思った」という。

 どんどん他企業から追い抜かれていくという焦りと危機感を感じていた矢先に、ソーシャルゲームの兆しが生まれ、そこで真田氏は大きな勝負に出たのだ。それがBtoBからBtoCへのビジネスモデルの転換になったそうだ。

「しかし社内の中で、BtoBとBtoCのビジネスが混在し、自己矛盾も起きてしまった。そこで最終的に虎の子であったBtoBビジネス事業を売却し、BtoCに集中することとにした。その舵を切れたことが、大きな成長のドライブになった」(真田氏)

 これを聞いた吉田氏も自身の話を披露した。吉田氏がCEOを務めるクラウドワークスも、110%ぐらいの安定的な小さな伸びの時期を経験した。しかし非連続な大きい成長が見えず、どうしたらよいか悩んでいた。そこでサイバーエージェントの代表取締役社長 藤田 晋氏に相談し、大きな投資をして勝負をかけ、現在のような成長につながったという。

 企業家は小さな成功に甘んじず、時には機を見計らって大きな賭けに出ることも必要になるのだろう。

【次ページ】 “三途の川”を渡る直前で引き返すための「リスクの許容範囲」を学ぶ
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