0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
「 新経済サミット(NEST)2018」のキーノート・セッションに、セールスフォース・ドットコム会長兼CEOであるマーク・ベニオフ氏、X JAPANのYOSHIKI氏、京都大学iPS細胞研究所所長で同大学教授の山中 伸弥氏が登場した。モデレータを務めたのは楽天の代表取締役会長兼社長で新経済連盟 代表理事 三木谷 浩史氏。各分野でイノベーションをけん引する4人は、日本におけるイノベーションの課題と展望を熱く議論した。
瞑想がイノベーションの秘訣
まずはセールスフォース・ドットコムの会長兼CEOベニオフ氏と、楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷氏の対話から始まった。両者の出会いは20年前にさかのぼり、すでにそのときから二人ともアントレプレナーだった。共通点は共にベンチャーキャピタルから資金調達して会社を立ち上げたこと。ベニオフ氏は創業の経緯について「最初は(周囲から)まったく理解してもらえなかった」と吐露した。
「当時はeBayが急成長していたころで、Webベースのシンプルなシステムがユーザーに好評を博していました。エンタープライズサービスもこんな風にシンプルに提供できないのか、と思ったのがきっかけです。しかし、クラウドベースソフトウェアという発想があまりに急進的だったのか、ベンチャーキャピタルに話してもなかなか分かってもらえないうえに、競合企業が投資すべきではないと言っていたようです」(ベニオフ氏)
それが今や、セールスフォース・ドットコムは世界で3万3000名の社員を雇用し、年間売上高105億ドルを稼ぎ出す大企業に成長した。「ビジネス史上、これだけ速く伸びた企業は他にない」とベニオフ氏は胸を張る。その中でも最も売上を伸ばしているのが日本市場で、日本郵政やSOMPOホールディングスなど多くの企業が同社サービスを活用している。ベニオフ氏自身、日本が好きで毎回来日するとまず京都へ向かうという。
「石庭で有名な龍安寺へ瞑想しにいきます。初心に帰るためです。初心というのはイノベーションを起こすために重要な概念です。日本の考え方の中にイノベーションのための方法があるんですよ。瞑想では、『新しいアイデアに対して心を開いているか』と常に自問自答するようにしています」(ベニオフ氏)
日本の経営者は自国経済の強さを信じるべし
ここで三木谷氏は、日本経済についてベニオフ氏がどう見ているか尋ねた。新興国の台頭で、日本の製造業は岐路に立たされている。IT企業はさらに難しい立場だ。三木谷氏も欧米のメディアから「日本経済は大丈夫なのか?」とよく質問を受けるという。
「日本経済は強いです。私は日本人以上にそういう信念を持ってやってきました。匠の技を数多く有しており、実際、37社の日本企業に投資をしています。日本の経営トップが『自分たちはダメだ』と控えめに発言するのは文化の一つなのかもしれませんが、こういう意識が問題の一つかもしれません」(ベニオフ氏)
三木谷氏もベニオフ氏の発言に呼応するように以下のように指摘する。
「経営トップは正しく質問することが大事です。『なぜ失敗しているのか』と尋ねれば失敗の原因しか出てきませんが、『なぜ成功しているのか』と尋ねれば、成功の秘訣を探ることができます。自分の気持ちを奮い立たせる方法を確立することが重要です」(三木谷氏)
三木谷氏は楽天の由来は「楽観主義にある」と説明する。モバイルテクノロジーが日進月歩で進化し、モバイル革命の入口に立つ中、「(楽観しつつ)挑戦あるのみの精神」で日々ビジネスを率いているいう。
そうした姿勢は「社会貢献活動」にも反映されている。両社とも積極的に社会貢献活動を行っていることで知られる。
「会社をスタートさせたとき、3つのことを実現させようと決意していました。1つめは新しいテクノロジーの採用、2つめは新しいビジネスモデルの採用、そして3つめが社会貢献活動です。収益の1%を社会貢献活動に還元するとともに、当社の社員は1カ月に4時間、学校や施設に出向くなどボランティア活動を行っています。また、当社は約3万のNPO団体に、無償でセールスフォース(製品)を提供しています」(ベニオフ氏)
一方、楽天もさまざまな社会貢献活動を行っている。なかでも三木谷氏が注力しているのは海洋浄化だ。2050年には海には魚よりプラスチックの方が多くなるという調査結果が出るほど、現在その汚染は深刻な状況だ。海温の上昇も気候や生態系に大きな影響を与えるリスクがある。企業や科学者の英知を集めてこの問題の解決にあたることが重要と三木谷氏は考えており、植林活動など具体的なアクションを起こすとともに、G7や世界経済フォーラムでも訴えていくという。
【次ページ】YOSHIKI氏に加えて山中伸弥氏がサプライズ登壇、4人が語った「一つだけ願いが叶うなら」の答え