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- 2016/01/15 掲載
富士フイルム、なぜ銀塩の「チェキ」がデジカメよりも儲かるのか
10%にまで縮小した市場で勝つマーケティング
今どき「フィルム写真」のカメラが富士フイルムの好業績に貢献?
会社見通しの230億円を50億円上回り、中期経営計画の2017年3月期の目標250億円も30億円上回って前倒しで達成。今期、この業績観測通りに着地すれば、富士フイルムにとって文字通り「うれしい誤算」になることだろう。
イメージングソリューション事業には、創業以来の写真フィルム(銀塩フィルム)とそのカメラ、印画紙、デジタルカメラ、スマホ用のカメラモジュールなどの製品が含まれる。かつては主力事業で、2001年3月期は売上高全体の54%を占め、写真フィルムは全体の19%を売り上げていた。それが2015年3月期は売上高全体の15%まで縮小し、写真フィルムの売上シェアは全体の1%まで下がっている。
この事業の近年のメイン製品はデジカメだったが、画素数などの性能競争、価格競争の激化に加えてスマホ付属のカメラ機能にもおされて利益が出なくなった。事業全体の営業損益は2012年3月期は81億円の赤字、2013年3月期は8億円の赤字で、創業以来のレガシー事業でありながら、ついこの間まで業績的には「お荷物」のような存在だった。
それが2016年3月期見通し(業績観測)は280億円の黒字で、これは会社全体の営業利益見通し1900億円の実に14.7%を占め、売上シェア15%にほぼ見合う「稼げる事業」に変身している。
とりわけ2015年7~9月期(第2四半期)は進境著しく、売上高営業利益率は8.9%に達し、医薬品などヘルスケア、記録メディア、高機能材料などが含まれるインフォメーションソリューション事業の8.2%、富士ゼロックスの複写機が含まれるドキュメントソリューション事業の7.9%をしのぎ、名実ともに利益率が最高の「稼ぎ頭」の事業に躍り出た。
そんな「お荷物から稼ぎ頭へ」という大躍進の主役になったのが、レガシー中のレガシー、フィルム式のカメラ「チェキ」(正式名称instax)だった。
【次ページ】「チェキ」にはオンリーワン技術も、ナンバーワン技術も入っていない
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